伊藤君子JAZZコンサート@北広島市芸術文化ホール活動室2016

10年以上前にオークションに伊藤君子さんのCDが出品されていて、出品者が激賞していたのが
印象的だったのですが、特に求めることもなかったので伊藤君子さん自体は記憶の深層に埋もれた
ままでした。今回「前回の札幌公演から18年ぶり」とあるのを目にして当時のことがよみがえり、
希少な機会と思い、出かけてきました。
ご自分を「大年増」とおっしゃていたのですが、7月にライブを聴いた小田和正さんくらいのようです。
あの年代の現役バリバリで活躍される皆さんは、円熟していて聴き応えがありますね。
それに初めて聴いた「津軽弁ジャズ」ですが、訳詞が成功しているせいか、実にノリも良く、
通常聴く英語の詞と大して違和感は感じませんでした。
むしろ、詞にこめられた感情がぐっと迫ってくる感じがしました。
方言のネイティブスピーカーはまるで外国語のように感じますから、この方言に置換する試みは
成功していると思いました。実に楽しかった。
伊藤君子さんのHPを覗いたら、北海道ツアーは4カ所だけのようです。
9/16 札幌市
9/17 北広島市
9/18 旭川市
9/19 帯広市
お近くの方はぜひ。

<9.22追記>
定刻になりメンバー入場。
Vocal:伊藤君子
Piano:宮本貴奈
Bass:柳 真也
Drums:館山健二

MC「ようこそ、おいでくださいました。皆様に御礼申し上げます。伊藤君子です。
(メンバー紹介)そして、小豆島が生んだ大年増、伊藤君子でございます。」

1 ジャスト・イン・タイム
2 オータム・イン・ニューヨーク

MC「さて、いきなり津軽弁の時間です。津軽弁でジャズを歌うのは伊奈かっぺいさんの影響です。
第一弾を発売したのは2000年のことです。2015年に第2弾を発売し、「津軽弁の日」に宮本さん
との美女二人で行き、歌わせていただきました。」(以下、★印は津軽弁ジャズです。)

3★恋に恋して

MC「どうして津軽弁?と思ったんですが、初めて歌った時は恐かったですよ。
だって(津軽弁の)ネイティブスピーカーだらけですもん(笑)。でも、うけた。
それで、第2弾を出すことになったんです。」

4★ブルームーン
5★カム・レイン・オア・カム・シャイン
6 セプテンバー・イン・レイン
7 イパネマの少年? ~この夜唯一曲名紹介が省かれたので不明ですが、ボサノバでした。
8 サムウェア(「ウエストサイド物語」から)

<休憩>
宮本さんだけが登場。
MC「ピアノソロでちょこっと。ジャズピアニストですが、バークリーの映像音楽科と作曲科を
出て作曲もしているんですね。NHKの「日本の話芸」テーマを作曲しました。
TVのオープニングは20秒なんですが、今日は90秒バージョンで。」

9 NHK「日本の話芸」オープニングテーマ

MC「もう一曲。直感で日本の曲を。タイトルはあえて言いませんが、皆さんご存じです。」

10 この道

伊藤さんはじめ他のメンバー登場。

MC「私の足を心配してイスが届きましたが、立っても座っても変わらないと思います(笑)」

11 You've got a friend ~エルトン・ジョンでしたっけ?

MC「アンコール前の曲という感じ(笑)次はこの間亡くなったトゥール・シールマンスの
作った素敵な曲です。失恋している人に、大丈夫だよと。
励まされると思って聴いて下さるかな。」

12 ブルーゼット

MC「今日はお星様は見えるんでしょうか?昨日札幌歩いていたら雨が降ってきて。
よくあるんですか?どこで見た星空が思い出ですか?私は小豆島で高校までいたんですが、
あの頃は天の川まで見えました。大気がきれいだったんですね。」

13 ソー・メニー・スターズ

MC「次は有名な曲。世界中で録音されているんですが、名古屋弁で言うとピッタリ。
フリャイ・ミー・トゥー・ザ・ムーン(笑)タイトルは名古屋弁だけで、歌うは津軽弁です。」

14★フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン

MC「かっぺいさんの訳が……(聞き取れず)。聴いて下さい。」

15★オーバー・ザ・レインボー

MC「次なる曲はとてもおもしろいアレンジで、(CDでは)上妻宏光さんの津軽三味線
なんですが、今夜はまっさん(柳真也)が津軽三味線風にアレンジして。」

16★ラストダンスは私に

伊藤さんが給水する間、宮本貴奈さんがMCを努め、途中から伊藤さんも加わる。
MC「新潟のフェスから羽田へ直行しハワイへ。ハワイで3泊し北海道へ来たんです。
でも、演奏の時しかほとんど記憶がないんです。
そうなんですよ、会場とホテルと食事ぐらい。」

MC「小さい頃家にあったのは広沢虎造。6つの時、美空ひばりに夢中になったんです。
それで歌手になりたくて東京へ行きたかったので武蔵野美術大学短大を受験したら、
合格しちゃったんです。ずっと端折りますが。今歌手です(笑)」

17 愛燦燦
18 オールド・デヴィル・ムーン

初めて来てくれた伊藤さん、宮本さんに北広島市、千歳市の両ジャズ倶楽部から花束贈呈。
アンコールの手拍子に応えて

19 フォロー・ミー~アランフェス協奏曲第2楽章から

<おまけ>
歌われた津軽弁ジャズ(記事中の★印)の聞き取った歌詞の一部分をランダムに並べました。
文字にしてみると、津軽弁が親密で感情が迫ってくると感じたのは間違いなかったようです。

「好きだ 好きだ みなみなわのものだして~」
「わーば好きだはんで だまってそうしてろ~」
「あんだの好きな人と踊ってくればいいがし~」
「あの虹っこば越えて飛んでいぐんだ~」
「好きだ 好きだ 好きだ 恋はどこさ行ってしまったんだべ~」
c0007388_23363344.jpg






[PR]
# by capricciosam | 2016-09-17 23:36 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

音楽の昭和@北海道立三岸好太郎美術館2016

「音楽の昭和~三岸好太郎を巡る音の風景」と題する講演は特別展「三岸交響楽」
(9/3~10/19)に関連して特別展初日に開催された。講演の行われた三岸好太郎美術館は
北海道知事公館のある一画の北側に位置する。

三岸節子氏をはじめ遺族4名から220点の三岸好太郎作品が北海道に寄贈されたのを機に、
1967年、北海道で初めての美術館となる〈北海道立美術館(三岸好太郎記念室)〉として、
当館は札幌市中央区北1条西5丁目に開館しました。その後、北海道立近代美術館の開館に
ともない、1977年に北海道立三岸好太郎美術館と改称して再発足し、さらに1983年、
三岸好太郎のアトリエのイメージを設計の一部にとりいれた新館を現在地に建設して移転、
新たな開館をしたものです。」
(三岸好太郎美術館HPより引用、以下三岸好太郎は「三岸」と略する。)                              

美術館はこじんまりとしており、その1階展示スペースの一番大きなところにイスを並べて
本講演が行われた。もちろん、三岸の代表作<オーケストラ>も展示されている。
開演前には座席が追加される盛況だった。

定刻になり登場した片山杜秀氏(以下、「片山氏」と略する。)は、やや顎を上げて
斜め上に視線を飛ばすお馴染みのスタイルでやや早口気味に、三岸の<オーケストラ>が
描かれた当時の日本の音楽状況等を語りだした。
以下は、その概要のごく一部をテキスト化したものです。

展覧会初日にお招きいただき光栄です。
<オーケストラ>は三岸の代表作。彼が日比谷公会堂の新交響楽団演奏会に通っていた頃の
印象をもとに描かれたものです。
では、その新交響楽団は1930年頃はどんな音を出していただろう。

★第二次世界大戦の学徒出陣の際に演奏されて有名なルルーの「分列行進曲」を聴く

ところで、三岸は近衛秀麿指揮の新交響楽団を誰と聴いていたのかというと、
「魔性の女」吉田隆子と連れだって日比谷公会堂へ出かけていた。

★彼女と聞いたであろう新交響楽団によるマーラー交響曲第4番を聴く
 片山氏曰く、当時のマーラーの知名度はR.シュトラウスと比べてずっと低かった。

三岸は札幌時代含めてクラシック音楽の素養はあったようだ。
彼は天才なので、理屈(を知って描く)よりもすぐに描ける人、感覚的な人だ。
感覚的な人は理屈の立つ人にコンプレックスを持つ(笑)私もそうなんですが(笑)
吉田隆子は理屈の立つ人、理屈先行型であり、カリスマ型。
年下のモダンな女性が文化教養にあこがれる若者である三岸を音楽に導いたと言える。
彼女は社会的にはまだこれからの人だったが、三岸が彼女とのどろどろした関係を清算し、
妻の節子に連れ戻された時に描かれたのが<オーケストラ>だった。
単純な線で描かれ抽象化されているので、一見吉田隆子との関係を想起させるものは
ないが、絵の背後には隣に座っていた人が投影されていると考えられる。
三岸にとって自覚的に作風が晩年様式になったことはない。まるで墓碑銘を書くように
極限的なスタイルに転換していく。作風が飛躍したのだ。
この時代は色々な人が錯綜しているが、三岸が亡くなった昭和10年以降本格的な音楽作品
を書ける人が桁違いに増える。

片山氏の話は結構横道にそれるが、その膨大な知識故か退屈することはなかった。
上記以外にも、三岸はカンディンスキーの影響を受けたとの話から、
①カンディンスキーとシェーンベルクの妻の不倫の結果誕生した無調音楽
②そもそも近衛秀麿、新交響楽団とは何か?
③山田耕筰のいい加減さ
④満州に避難してきたロシア人演奏家との日露交歓管弦楽演奏会の話
⑤SPレコードのヴァイオリンの生々しさ~シゲティのファリャ「はかなき人生」を聴く
等興味深い話や体験が多く、60分では短かった。まだまだ聴きたかったなー。

また、展示された資料も珍しいものが多かったが、伊福部昭の「交響譚詩」自筆譜や
「土俗的三連画」出版譜、早坂文雄「古代の舞曲」などは初めて目にしたが、
伊福部昭ファンや早坂文雄ファンには堪らないでしょうね。

c0007388_22551931.jpg




[PR]
# by capricciosam | 2016-09-03 22:55 | 講演会 | Trackback | Comments(0)

PMF GALAコンサート@Kitara2016

【プログラム】
第1部
1 ファンファーレ
2 プッチーニ: 歌劇「ラ・ボエーム」からムゼッタのワルツ「私が街を歩けば」
3 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番ホ短調 作品27-4から第1楽章
4 PMFヴォーカル・アカデミーによるオペラ・アリア集
 1)ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」から「オレは町の何でも屋」
 2)ドニゼッティ:歌劇「ラ・ファヴォリータ」から「私のフェルナンド」
 3)ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」から「フォンテンブロー!…私は彼女を見て、その微笑みに」
 4)ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」から「あたりは静けさに包まれ」
5 ヒナステラ:フルートとオーボエのための二重奏曲 作品13
6 シューベルト:八重奏曲ヘ長調 D.803から第6楽章
7 PMF讃歌~ジュピター

第2部
8 メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 作品90「イタリア」
9 ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
10ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調 作品65

連日30℃近い暑さが続くものの、朝夕の涼しさと湿気の少ない風が救い。
GALAも今年で5年目。オシャレして参加する方も年々増えてきたようですが、
盛夏のひとときを楽しむのは相変わらず女性が一枚上手ですね。
また、ピクニックコンサートならぴったりのTシャツスタイルも依然目につくので、
組織委員会の意図する「GALAではオシャレしてひとときを楽しんで」という
スタイルの定着にはまだ時間がかかるのでしょうか。
第一部はおなじみ天羽明恵さんの司会進行で。
1のファンファーレに続く2では赤のドレスへ素早く着替えて(驚!)華やぎを演出。
3では追加出演が決まった注目のレオニダス・カヴァコスが登場し、実力の片鱗を披露。
せめて第4番全曲を聴きたかったなー。

続いて昨年より設けられているヴォーカル・アカデミーによるオペラ・アリア集。
ピアノ伴奏で4名が一曲ずつ披露してくれたが、1)4)が印象深かった。
ただ、PMFオーケストラとの共演機会は今夏もないようなのですが、
昨年も記したとおり少々物足りない。

第一部残りの2曲はPMFアメリカの教授陣による演奏。
5はデュトワ時代の数々の名盤で活躍したティモシー・ハッチンズのフルートを
生で聞けたのは何より。6は時間の関係上第6楽章だけとなったようですが、
急造アンサンブルとは思えぬうまさ。

7ではGALA恒例の「PMF賛歌」をゲルギエフ指揮で。
ゲルギエフ指揮で素人が歌えるなんてそうそうあるもんじゃありませんから
当然起立して歌いました。今年はステージ準備の間に天羽さんが客席に向けて
「さぁ、皆さん立ちましょう。大きく背伸びしましょう。」
と呼びかけたため起立する人が多かったですね。昨年はこの声がけがなかったため
座ったままの人も多く、客席との一体感に欠ける状態だったのですが、これは改善されました。

ここまでで17時にあと数分。15分休憩の予定だったのですが、ステージ準備に時間が
かかったようで結局25分遅れに。今年の公式HPでは第2部開始時間は「17時~(予定)」と
なっていましたが、公式プログラムは「17時~」と断定的に記されていてちょっとチグハグ。
昨年までの約1時間遅れの遅延状況からみればかなり改善されたとは思うのですが、
これなら公式には「17時30分~」として余裕をもたせても良かったのではないかと思います。
GALAの定着とともに客も慣れて第二部だけ聴きたいという人もでてくるでしょうから、
より的確な時刻にしてあげたほうがよいのではないでしょうか。

また、今年は第1部の曲間で頻繁に途中入場が繰り返され、少し興を削いだ。
天羽さんのMC時間が長い(つまりステージ準備に時間がかかる)場合は許容されるとは思う
のだが、例えばMC時間の短い5と6の間での誘導には演奏への集中を妨げるので疑問を感じた。
途中入場もMC時間が長い場合にまとめてする等のメリハリをつけてはどうだろう。

第2部からは通常の演奏会スタイルだが、ゲルギエフと独墺モノはさてどんなものか、
と思っていたのだが、あにはからんや。8、9ともにオーソドックスな演奏スタイルの展開で
至極まっとう。さすが、ゲルギエフです。また、プロA、プロBと聴いてきて
今夏のPMFオーケストラの仕上がり具合は順調と感じていたが、
ホント常設オケ並のアンサンブルの良さに仕上がっていると感じました。
また、カヴァコスのヴァイオリンは力み返ったところが微塵も感じられないのに、
実に堂々たる歌いっぷりで正統派の美音そのもの。巨匠の趣。これは収穫だった。

終曲のショスタコでは各パートの首席を教授陣が占め、この曲の陰影を色濃く描写する力演。
ただ、曲が終わってもゲルギエフは頭を垂れたままなかなか腕を下ろさないのだ。
ゲルギエフ指揮の演奏会には何度も足を運んでいるが、こんなのは初めてだった。
息詰まる緊張が大ホールを満たす。一体何秒経過したのだろう。
とうとうフライング拍手が起きてしまい、ようやくゲルギエフも腕を下ろした。
当初、祝祭的な場でゲルギエフが何故こんな重々しい曲を選んだのか不思議だったが、
この姿を見て思い浮かんだ言葉は「祈り」だった。
この曲にまつわるエピソード(この辺りはWikipediaを参照してください)や混迷を深める現代、
そして何よりもショスタコーヴィチへのゲルギエフの思いがあの姿に繋がっていたのではないか。
この仮定が当たっているとしたら、PMFオーケストラの最終公演となる東京公演(8/9)は
ショスタコーヴィチの命日と重なるだけに、ゲルギエフが腕を下ろすまでの沈黙を共有できたら
最高ではないかと思う。

TVカメラが複数台設置されていた。
HPでも正式な発表はないが、昨年同様ネット配信する予定なのだろうか。
チケット完売公演だけに、カメラ設置でできた空間以外はほぼ満席。
c0007388_23540035.jpg




[PR]
# by capricciosam | 2016-08-06 23:53 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

PMFオーケストラ・プログラムB@Kitara2016

【プログラム】
1 メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」作品27
2 ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番 作品72b
3 ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(原曲版)
4 ブラームス:交響曲第4番ホ短調 作品98

PMFの各プログラムは2日間に渡って演奏会が開かれる。
プログラムBはコンダクティング・アカデミー生が2日目に指揮するため曲数が多い。
1日目は全曲をアクセルロッドが指揮するので、ある意味お手本的役割を果たして
いることになる。その1日目を聴いた。

プログラムAから約一週間。指揮者のアクセルロッドは代わらないものの、
教授陣はPMFヨーロッパからPMFアメリカに代わって、さらにオーケストラの充実が
図られたかが試されることになるのがプログラムB。
当日曲順が変更されて2曲目に演奏された2はこのオーケストラの充実ぶりが
よく現れており、特に、弦楽器の合奏は聴いていて芯のある響きが感じられ、
視覚的にも一体感がよくわかった。
また、3は土俗的な荒々しさはあるものの曲自体としての流れが良くないため、
一体的な曲として聴かせるのは容易ではないと思うのだが、PMF生だけでも健闘していた。
休憩前だけでも今夏のオーケストラとしての成熟が順調であることを示していると思う。

ただ、PMFアメリカが加わった4は少々ハラハラした。
第1楽章からアンサンブルが乱れ、なかなか修正されないのだ。
特に金管楽器の突出ぶりが耳についたが、首席奏者は皆教授陣なので頭の中には「?」。
しかし、これも楽章を追うごとに解消されていき、フィナーレは見事に決めていた。
ベテラン・プレーヤーらしく落ち着きを取り戻すとやはり見事なものだ。
また、4の実演は近年では、ジンマン&チューリヒ・トーンハレエリシュカ&札響
聴いて各々感銘をおぼえていたのだが、アクセルロッド流の解釈はどちらとも違うものだった。
楽章間で十分な時間をとり、指揮ぶりも丁寧ではあったものの、やや早めのテンポで
メリハリをつけるため、表現が劇的でかつ推進力が増すので、曲の有する人生の晩年的
枯れた味わいを想像する人にはやや感興が乏しかったのではないかと思う。
演奏自体は良いと思うだけに、これは好みの分かれるところなのだろう。

最後にアンコールを一曲

5 ブラームス ハンガリー舞曲第5番

演奏が停止したときのフライングにはホールから笑いが起こったものの、これはご愛敬。
約9割の客入りか。


c0007388_11505209.jpg

[PR]
# by capricciosam | 2016-07-30 23:58 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

PMFオーケストラ・プログラムA@Kitara2016

【プログラム】
1 ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
2 ドビュッシー:交響詩「海」
3 マーラー:交響曲第4番 ト長調

PMFオーケストラが演奏する場合休憩前はPMF生が主体で、
休憩後に教授陣全員が加わるというスタイルが近年定着している。
ただし、休憩前においても若干教授陣が入る訳で、今回のプログラムAでは
ティパニーのライナー・ゼーガスさんは3曲とも加わっていたのですが、
1ではホルンのサラ・ウィリスさんが、そして2ではトランペットの
タマーシュ・ヴェレンツェイさん、トロンボーンのシュテファン・シュルツさんが
各々参加していました。休憩前は教授陣の参加が打楽器と金管楽器だけになっています。
ところで、プログラムAに関して指揮者のジョン・アクセルロッドは

「プログラムAは「天国と地上」と呼びましょう。なぜなら前半は海と、この自然界の
もっとも豊穣な力と人間との関係を表現した音楽をとりあげているからです。
ワーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲とドビュッシーの「海」は、音の密度、色彩、
動きの傑作です。休憩後、マーラーの交響曲第4番は、私たちを楽園へ、限りなく無垢な、
天上の王国へといざなってくれます。」
(以上、会場配布パンフレットより引用)

と語っています。
なるほど「さまよえるオランダ人」は幽霊船の話ですから海に関係があります。
確かに「豊穣な力と人間との関係を表現」する上で表現のダイナミクスさが
欠かせないだけにこれらの曲では打楽器と金管楽器は要になったのでしょう。
事実、1は最初の演奏会の1曲目にしては上々で、ワーグナーらしい深々とした響きは
聞き応えがありました。また、2は表現のメリハリがやや乏しく、その分色彩感ももう少し
あればと感じたのですが、なかなかの演奏で、「今年のレベルは期待できそうだ」との思いが。

3では弦楽器、木管楽器の首席は教授陣が占め、教授陣が全員参加して演奏した。
1や2と比べて表現の陰影が深まり、曲の躍動感が増し、「常設オケ?」と勘違いしそう
なくらいの満足すべきレベルだった。教授陣の力たるや流石としか言いようがないのだが、
指揮者のジョン・アクセルロッドさんも多分に寄与していることは間違いない。
後半は教授陣もPMFアメリカに切り替わるが、さらにオケの力が伸びんことを期待したい。
3のソロはバーンスタインのようににボーイソプラノもありと考えると
「無垢な天上」らしさを表現する声がふさわしいのだろうが、その点では今回のソリストの
声質は適している。これで声量があればなお良しかな。

3の第2楽章ではコンマスのライナー・キュッヒルさんが用意していたヴァイオリンに持ち替えた。

「長2度高く調弦したヴァイオリン・ソロが、とりとめのない、一面おどけた旋律を演奏する。」
(以上、Wikipediaより引用)

この場面だったんですが、持ち替えていたとはCDではわかりません。実演ならでは。

客入りは8割程度か。
客電が点り、大ホールが明るくなっても拍手は止みませんでした。
前半を支えた教授陣の最後の演奏会でもあっただけに各パートの教授とアカデミー生が
別れを惜しんで抱擁したり、握手する姿が微笑ましかったのですが、中でも隣り合った
フルートのアンドレアス・ブラウさんとオーボエのジョナサン・ケリーさんが
力を込めて握手している姿が印象的でした。
c0007388_23040602.jpg




[PR]
# by capricciosam | 2016-07-24 23:06 | 音楽 | Trackback(1) | Comments(0)

志の輔らくご昼の部@富良野演劇工場2016

今日はPMFとファイターズを一休みして、昨年同様富良野まで足を運びました。
師匠が枕で話していましたが、今回の富良野の落語会は通算16回、連続12年になるそうです。
師匠もほめていましたが、こんなに続くのも運営されているNPO法人の皆さんの努力の賜でしょう。

最初に登場したのは7番弟子の立川志の麿。
ほとんど枕なしで与太郎話の「金明竹」へ。(まあ、時間的制約あるだろうからね)
傘や猫を無難に笑わせ、難所の上方者の口上へ。都合4回繰り返すことになるが、
3回目は滑舌もよろしく早口気味にスーッとやってのけたから会場からは盛大な拍手。
古池やのさげは無難に。

続いて鮮やかな橙色の着物の志の輔師匠登場。
「さわやかな夏、こんな暗闇へようこそおいでくださいました。」(笑)
ホント会場は黒を基調としているから照明がなければ真っ黒だね。
「高座は普通見上げるものだが、ここでは皆さんから見下ろされている。」(笑)
階段状の底がステージだから、そうなっちゃうね(笑)。でも見やすい距離なんだよね。
師匠は東南アジア各地で落語会を開いている話から、落語では同じところで一斉に笑い、
一斉に静まりかえる様を現地の人が「新しい宗教なのか?」とは笑わせます。
楽屋に色々な物が届けられる話では4月に梨が届けられてビックリした話や
夏に事務所にみかんが届けられても驚かなくなった話から「千両みかん」へ。
(師匠の着物の色と枕のみかんのところでピンときたら通ですね。小生はさっぱりです、ハイ。)
若旦那の恋患いと思いきや、実はみかんが食べたいという、しかも夏に。
安請け合いした番頭が四苦八苦するという粗筋はそのままですが、細部は自在。
困った番頭が店先で「はじめが《み》で、終わりが《ん》のものだよ。あるかい?」とやると
「水戸黄門」(笑)「みりん」(笑)と答えが返ってくると、「ハイ、次の問題ガンバロウ」(笑)
おまけに「ある訳ないだろう、うちは床屋だよ」と笑いの波状攻撃。まいったねー。
そして、みかん問屋の蔵を調べたあげくの値付けの問答は師匠の話芸の力の見せ所でした。
この話は人情話のひとつなんでしょうが、下げの味わいは単なる人情話とも言えない
人間のおろかさを突く不思議な味わいの作品ですね。


15分の休憩の後3番目は三遊亭全楽師匠。
「おまえは誰なんだ?」と、立川流の落語会に混じる「不純物」扱いで笑いをとった後、
自分は5代目円楽の弟子と自己紹介して、6代目の不倫釈明会見には指南役がいたはずだと
「あくび指南」へ。粗筋は変えずに、導入の部分はじめ細部は自在にアレンジして笑わせます。
いっしょに来たカミサンはツボに入ったのか、笑いっぱなしでした。

とりは志の輔師匠。
夏には全国各地の落語会で幽霊話が取り上げられているという話から、故丹波哲郎さんや
町内とは一体どこまでなんだ?という体験話や町内でのお化け屋敷での人間関係の中で
「恐がる」ことを覚えていったのに、最近はどんどん恐がることがなくなっているという話に。
師匠じゃないですが、「こういう芸能は同じものが頭に浮かぶから成り立つ」という指摘は
確かに当たり前だけれど大事なことです。
これらを枕に「へっつい幽霊」に。
ところが、話をはじめてすぐに話を止めて、会場を見て一言。
「お客さんの半分は《へっついって何だ?》と思っていらっしゃる顔をしている。」
とへっついの説明に。これはいち早く会場の気配をつかんだのでしょうが、適切でしたね。
後の話の理解が進みます。粗筋はそのままに登場人物の描写ややりとりが実に上手いし、
アドリブも当意即妙。「おまえは誰だ?」「へい、《みかん》の番頭さんです」(大笑)
下げたところで、そのままご挨拶に。
富良野の良さを再び話され、「ひょっとしたら来年も」と口にしたところで
会場からは盛大な拍手が。そりゃ、そうですよ。師匠、期待してます!
最後に「お気をつけてお帰りください。」と言って高座を降りられました。

c0007388_23463793.jpg



[PR]
# by capricciosam | 2016-07-23 23:46 | 舞台 | Trackback | Comments(0)

PMFベルリン演奏会@Kitara2016

【プログラム】
1モーツァルト(シェーファー編):歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」によるハルモニームジークから※
 序曲/僕のドラベッラは/愛の息吹は/お手をどうぞ/恋は小さな泥棒/祝福あれ、二組の花婿と
2 テレマン(ギュンター編):協奏曲 ヘ短調 TWV 51:f1 [トランペット、トロンボーン、ピアノ]
3 ベートーヴェン(レヒトマン編):五重奏曲 変ホ長調 作品4※
4ヒルドガード(マルバッド編):コンチェルト・ボレアリス [バス・トロンボーン、ピアノ]
5リスト(ドクシツェル編):コンソーレション 第3番 [トランペット、ピアノ]
6ドビュッシー(リンケルマン編):「子どもの領分」から
 グラドゥス・アド・パルナッスム博士/小さな羊飼い/ゴリウォーグのケークウォーク
7 ピアソラ(シェーファー編):「タンゴの歴史」から
  ナイトクラブ 1960/ボルデル 1900
※木管五重奏版

PMFベルリンは今夏もベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の管楽器奏者が主体。
曲により演奏者が異なるので先に演奏者を記します。
①フルート:アンドレアス・ブラウ(前首席)昨年に引き続き
②オーボエ:ジョナサン・ケリー(首席)初参加
 今年2月のベルリン・バロック・ゾリステン演奏会にソロとして登場
③クラリネット:アレクサンダー・バーダー~昨年に引き続き
④ファゴット:フォルカー・デスマン:ベルリン音楽大学教授、初参加
⑤ホルン:サラ・ウィリス~昨年に引き続き
⑥トランペット:タマーシュ・ヴェレンツェイ(首席)昨年に引き続き
⑦トロンボーン:シュテファン・シュルツ~2006年以来

※木管五重奏~①②③④⑤

お初の曲も多く予習できたのは少数(しかも原曲のみ)なため、昨年同様耳を傾けているうちに
楽しく時は過ぎた、しかもあっという間にという感じで、実に楽しいひとときでした。
今回も昨年同様木管と金管に別れて演奏していました。
木管五重奏はソロも素敵なのですが、音が溶け合うとまた絶妙。
特に1は全曲聴いたことはなかったのですが、各楽器の掛け合いが実に堂に入っている。
まるでオペラを観た気分になってしまいました。早くも盛大な拍手。
金管で印象深いのは⑥のタマーシュさん。3年連続聴いてうまさに圧倒されます。
2のバロックのきらびやかさ、6の技巧は見事の一言です。

アンコールの前にサラさんが紙を読み上げて日本語で会場に挨拶。
なかなかお上手でした。笑顔の素敵な彼女はPMFベルリンのMCにピッタリ。
今年もSarah Musicのロケをやったのかな。
ということで※に昨年同様PMFアカデミー生の打楽器奏者2名が加わります。
(今回は打楽器奏者のライナー・ゼーガスさんは登場しませんでした。)

8 アブレウ:ティコティコ

楽しくお開き。アンコール曲は定番化するのかな?
ほぼ満席。前売券完売だったが、当日券が20枚ほど販売されたようです。

c0007388_23282220.jpg





[PR]
# by capricciosam | 2016-07-22 23:28 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

PMFウィーン弦楽四重奏演奏会@Kitara2016

【プログラム】

1 ハイドン:弦楽四重奏曲 ヘ長調 作品77-2「雲がゆくまで待とう」
2 シューベルト:弦楽四重奏曲 第9番 ト短調 D. 173
3 シューベルト:弦楽四重奏曲 第12番 ハ短調「四重奏断章」D. 703
4 ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 作品110

PMF創設以来ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は指導陣の主要な柱だった。
コンマスのライナー・キュッヒルさんは参加9回(4年連続)となったが、
来月には定年を迎えるはずだから、現役としては今回が最後の参加となるのかな。

プログラムは古典、ロマン、現代で構成。中でも、お目当ては4だった。
ショスタコーヴィチの作品を取り上げるのは2013年演奏会以来3年ぶり。
彼の作品にはアイロニカルな視点を有する思索的な作品も多く、
この作品も一般的には「ファシズムと戦争の犠牲者のため」に献呈されたという
誕生の背景から入りがちだが、そんなことを抜きにしても聴く者の心をとらえる力に
満ちている。それは、作曲者自身の苦悩する心の一端を作品としてストレートに
反映させていることに成功しているからではないか、と思っている。

5楽章から構成され、続けて演奏される。
重苦しい第1楽章が第2楽章では一転して激しい感情が奔流となって噴出する。
キュッヒルさんの顔がみるみる紅潮していく。
苦しみ、不安、怒り等の決して心地よい感情が連想されることはないのだが、
劇的に変化する様にぐいぐい引き込まれ、最後は第1楽章の重苦しさに満ちて閉じられる。
一瞬の静寂の後の盛大な拍手。秀演。
実演で聴くのは初めてだったが、こんな高いレベルで聴くことができたのは幸運だった。

アンコールは2曲。コントラバスのミヒャエル・ブラーデラーさんも加わります。

5 佐渡おけさ
6 チャイコフスキー 弦楽セレナーデ第2楽章

シューベルトの中では3が印象深い。
「断章」と名付けられたとおりひとつの楽章しかない未完の作だが、
激しい情熱と叙情を感じさせる独立した作品としての魅力がある。
やや早めのテンポでキュッヒルさんがぐいぐい牽引することでより劇的な印象が残った。

前売券完売の人気公演だったが、30枚ほど当日販売も行われたようだ。
(ホール到着時には当日券売り場は閉まっていたのでその点は不明)
それでも若干の空席があり、満席とはならず。

c0007388_19475642.jpg

[PR]
# by capricciosam | 2016-07-18 19:50 | 音楽 | Trackback | Comments(0)