かなり前のことですが、札幌で「オランダ絵画の黄金時代」という
展覧会が開かれました。 ハーグのマウリッツハイス王立美術館所蔵作品が展示され、 所蔵する3点のフェルメールの作品のうち 「真珠の耳飾りの女」(当時は「青いターバンの少女」と言ってました) 「ディアナとニンフたち」 の2点を観ることができました。 前者の強烈な印象は忘れがたいものです。 それで、フェルメールの作品を観るのは今回で2回目となりますが、 世界中でも30数点しかなく、各地に所蔵されている作品のうち、 例え重複が一点あるとは言え、まとまって7点もみられる機会は そうそうあるものではありません。 「生涯においてこのチャンスを逃すと後悔しないか?」 展示してある順番は制作年順になっていて、次のとおり。 ①「マルタとマリアの家のキリスト」fromエジンバラ、英国 ②「ディアナとニンフたち」fromハーグ、オランダ ③「小路」fromアムステルダム、オランダ ④「ワイングラスを持つ娘」fromブラウンシュバイク、ドイツ ⑤「リュートを調弦する女」fromニューヨーク、米国 ⑥「手紙を書く婦人と召使い」fromダブリン、アイルランド ⑦「ヴァージナルの前に座る若い女」個人蔵 展示は大きく①~③、④~⑦に分けられています。 ①や②はフェルメールの代表的作風からは、にわかにフェルメールとは 考えられない作品。②は修復の結果、右上の青空は見事に消され、 絵全体が夜の情景に変わっていました。 (札幌で観た時は青空があったはずなのだが、残念ながら記憶にない…) でも、この方が自然な感じはします。 ③は想像以上に小さな絵でしたが、書き込まれている内容は密。 恐らくフェルメール自身は格段の意識もなく日常の景色を描いた のでしょうが、技術的な成熟段階にある「うまさ」を感じさせます。 フェルメールは窓のある室内で様々なパターンの作品を残していますが、 ④⑤⑥もそれらに属するのでしょう。 同様な構図での作品に登場する女性はおしなべて慎ましやかなのに比べ、 ④の女性の歯を見せた笑顔がなんとも上品さに欠け、一種の邪悪さや 俗っぽさを漂わせる不思議な作品。 ⑤は調弦する女性が何かに気をとられたかのごとく窓外に視線をやる姿の 一瞬の切り取り方のうまいこと。 ⑤は④の4~5年後に制作されたようですが、光と影の扱い方は より深化しているようで、その点では⑤の5年後に制作された ⑥がひとつの到達と円熟を示していたように感じました。 さて、⑦は③以上に小さな作品で、かつ真贋論争がある作品。 私の第一印象も「贋作っぽいなぁ…」 まあ、100%贋作とは言わないまでも、後年誰かの手が入った作品 じゃないのか、という印象が残りました。 <蛇足> もの凄い混みようで、入場前の行列は覚悟。 どうせ待つなら、と私は開場前に数十分並びました。 入場後は展示作品を順番に観ることなく、他の作品はスルーして、 フェルメールを順番に観ていきました。 おかげで、どの作品も誰にも邪魔されることなく かぶりつきで鑑賞できました(^^) ただ、フェルメールを一巡して、もう一巡と思ったら もうあちこちに人だかりができて、ややしんどい思いで 二巡目を終えました。三巡目はもうほとんど無理。 朝一が無理なら、ケータイでの待ち時間チェックは必須でしょう。 <さらなる蛇足> 2006年末に写真の本を偶然買い求めていました。 積ん読だったのですが、観に行くと決めてから予習を兼ねて読みました。 フェルメール作品の概要を掴むにはうってつけでした。 鑑賞するために世界を旅する、なんて素敵なことでしょう。 ああ~、あやかりたい、あやかりたい…
by capricciosam
| 2008-11-29 22:15
| 展覧会
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