太鼓たたいて笛ふいて@東京_紀伊國屋サザンシアター2008

「こまつ座」は座付き作者の井上ひさしさんの
いろいろな作品を上演されていることは知っていたが、
如何せん内容も知らなけりゃ、一度も観たことがなかった。

それで、今度上演されるのが再々演の定評ある舞台だという、
ただそれだけの情報のみ、予習なしで、
「きっと楽しいだろうなぁ~」と勝手に想像して出かけた。
その気持ちは、入場した会場ロビーでも裏切られることはなかった。
主役は大竹しのぶさん。
写真のようにTVで観るタレントたちからご覧のような花、花、花。
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開演に向けて勝手に期待は高まるばかり…

しかし、芝居が始まると滑稽で笑える場面も随所に用意されていたのだが、
決して脳天気に笑っていたという訳ではなかった。
むしろ芝居の進行とともに必死に筋を追って、
真剣に舞台を観ている自分がいた。
昨今のエンタメ化の風潮に知らず知らず浸かっている凡夫には
ちょいと手強い芝居で、自分の日頃の感性のマヒぶりを
試されているかのようだった。

本作品では「放浪記」で有名な作家林芙美子さんの、
戦中の熱烈な戦争賛美が、何度か戦線に従軍するうちに
反戦意識に目覚め、戦後は反戦文学に転じるという、
その両極端に振れた姿が描かれている。
(この事実は有名なのかもしれないが、私は知らない。)
芝居の中で、戦中戦後を飄々として生き抜く三木は
「時代背景」の代弁者として現れる。
そして、彼の言う「戦(いくさ)は儲かるという物語」との言葉は
いまだにそれを全否定できないのが現実ではなかろうか。
しかし、作者は劇中の芙美子に
「それを信じたことは愚かだった」として告白させ、
「あなたたちがどんなつらい、苦しい思いをしたか。書かなくてはね」
と芙美子の決意を語らせる。
これは、もちろん作者自身の決意でもあることは言うまでもない。

ちょうど、言論の自由を都合よく解釈した勇ましい幹部公務員が
文民統制の根幹を揺るがしたばかりだけに、私にはなんとも
絶妙のタイミングであった。
かなり強いメッセージが読み取れる作品ではあったが、
「戯作者」を標榜する井上さんらしく「ニヤッ」とする場面は
随所に用意されているし、音楽劇のスタイルゆえ単調さからも
救われ、おまけに役者の皆さんは達者な方ばかりとあって、
「メッセージ性とエンタメ性のバランスのとれた芝居」
という印象が残った。
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by capricciosam | 2008-12-02 21:10 | 舞台 on stage | Comments(0)


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