信長の棺@文春文庫

日本の歴史上、戦国時代は大変革期のひとつ。
最初に天下統一に最も近づいた武士は織田信長。
その信長は「本能寺の変」で悲劇的な死を遂げる。

<ネタバレ的内容が含まれますので、ご注意ください>

しかし、その死骸は発見も確認もされていないという。
もちろん本能寺とともに焼失した可能性も高いだろうが、
にしても、信長の遺骸はどこに消えたのか。
明智方は時間をかけて捜索したというのに…
本書では信長は自刃せずに、周到に用意された脱出を
試みるものの、裏切りにより結局は非業の死を遂げ、
遺骸は後の探索を逃れてきちんと葬られた、とする。
さて、裏切ったのは誰か。
葬ったのは誰か。

そもそも、何故、明智光秀は織田信長を討とうとしたのか。
様々な動機が言われているものの、
光秀本人が明確に語ったものは伝わっていない。
小生はこれまでドラマ化されたもので紹介されている
「信長に侮辱を受けたから」だろうと単純に信じていたが、
この本では謀略説を採用していて、光秀は「そそのかされた」
「はめられた」という立場で描いていく。
しかも、それは本能寺の変の直前の愛宕神社籠もりにおいて
だった、と解き明かしていく。
さて、そそのかしたのは誰か。

著者は様々な伏線を配置して、この謎を解き明かしていくが、
その過程で、新たなスケール感を持った信長像、秀吉の出自、
「桶狭間の戦い」、「秀吉の中国大返し」にも
別の光があてられていき、実に新鮮。
ただ、冒頭の謎の木箱の中身と想定していた使い方は、
やや説得力にかけ、肩すかし気味。
しかし、限られた資料を大胆な推理で補って魅力的なストーリーを
為した著者の賭は成功したのではないか、と思う。

本書は著者75歳での初の小説。
主人公とした「信長公記」の作者太田牛一はほぼ著者と同年代。
この主人公の設定がイイ。
ただ、色恋の場面はもう少し筆致を押さえても良かったのでは。
老人のあこがれ的「妄想」が透けて見える感じ。
まあ、フィクションならではの「遊び」と捉えればそれもよし、か…
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by capricciosam | 2009-01-12 22:34 | 読書 | Comments(0)


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