初秋@ハヤカワ・ミステリ文庫

かなり旧聞に属しますが、ロバート・B・パーカーさんの訃報が報じられました。
ご存じ私立探偵スペンサーもので有名な方です。
最初に断っておきますが、小生はシリーズ第7作として刊行された
「初秋」しか読んでいません。しかも、20年以上前に。
しかし、当時の私にはこの一冊でインパクトは十分でしたね。
それで、訃報をきっかけに本棚の奥にある本書を久しぶりに手に取ってみました。

離婚したがっている両親の、お互いへの「いやがらせの道具」的扱いにされている
無気力な子供ポールの成長に、スペンサーがかかわっていくという物語で、
ハードボイルドものとしては異色の作品です。

両親に生きるということに関して何一つまともな示唆を与えられなかったポールが
たまたま関わったスペンサーから、両親からの自立を説かれる。

「自立心だ。自分自身を頼りにする気持ちだ。
自分以外の物事に必要以上に影響されないことだ。
おまえはまだそれだけの歳になっていない。
おまえのような子供に自主独立を説くのは早すぎる。
しかし、おまえにはそれ以外に救いはないのだ。
両親は頼りにならない。両親がなにかやるとすれば、
おまえを傷つけることくらいのものだ。
おまえは両親に頼ることはできない。
おまえが今のようになったのは彼らのせいだ。
両親が人間的に向上することはありえない。
おまえが自分を向上させるしかないのだ。」
ポールの両肩が震えはじめた。
「それ以外に途はないんだよ」
泣いていた。
(p.156より引用)

このシーンはポールの頑なな心をついに溶かす場面なのですが、
再読していてもジーンときてしまいました。
幼くしてかくも過酷な運命に立ち向かっていかざるを得ないなんて。
その上、現実に親にネグレクトされている子供たちがいるだろうことを
想像すると胸ふさがれる思いになるのです。

「男とは」、「人生とは」なんて決まり文句で収まるだけじゃない
味わい深い一編に仕上がっていることが感じられる佳品です。
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by capricciosam | 2010-02-06 21:18 | 読書 | Comments(0)


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