今夜のコンサートは、ジュリアーノ・カルミニョーラ(以下、「カルミニョーラ」と言う。)
が登場する前後で雰囲気が一変してしまった。
「才気煥発」 彼の演奏を耳にして、真っ先にこの言葉が浮かんできた。 1曲目T.アルビノーニ「弦楽と通奏低音のための四声の協奏曲ニ長調」 2曲目B.ガルッピ「弦楽と通奏低音のための四声の協奏曲ト短調」 3曲目G.タルティーニ「弦楽と通奏低音のための四声のソナタ第3番」 ここまでは、ベニス・バロック・オーケストラによる演奏。 これまでKitaraで耳にした古楽のオケとしては十分過ぎる程の実力は感じながらも、 インスパイアされる程でもなく、ただ、ただ、バロック時代の音楽が心地よく流れていく。 仕事の疲れが睡魔として襲ってくる‥ 「ああ、良い湯加減だ‥」 しかし、カルミニョーラが登場してからは、ぬるま湯が熱湯に一変。 4曲目ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲変ロ長調「狩り」 そっけない程の入りではあったが、身体全体を使って大きく足を踏みならすは、 動きまわるはで、見事な統率ぶりを示す。 しかも聞こえてくる調べの一風変わった、それでいて魅力たっぷりな響きに、 俄然背もたれから上体を起こして、前のめりにして聴入ることに。 ところで、弾き終えたカルミニョーラさん、客のいないPブロックに向き直った と思ったら、大きな音を立てて鼻をかむんだな。 かみ終えたら、肩をすくめながら、くるっと客席にむきなおった。 「しかたないでしょう」 そんな雰囲気で。 これには、思わず会場から失笑が。 ステージで、でかい音をたてて鼻をかんだ御仁を目撃したのは初めてでした。 「おおっ、人を食ってるねぇ~、このチョイ悪親父。期待しちゃおう」 5曲目ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲変ロ長調「海の嵐」 今夜のプログラムには改訂者が記されていないが、 改訂の痕跡たっぷりに音楽を形作る、その様のあっぱれなこと。 ここで、完全に聴く側としてのスイッチが入った。 さて、休憩後の「四季」や如何に。 6曲目ヴィヴァルディ「四季」 「春」から快調に飛ばしている感じはしたのですが、 まだまだ控えめ運転。それが、次の「夏」が凄かった。 「夏」は、どちらかと言うと小生の中では、淡々と過ぎていく「移ろい」 のひとつに過ぎない位置づけでした、ハイ。 それが、超快速で弾き進む演奏は次第にヒートアップし、 まさしく夏の焼けつく太陽であり、とどろく雷鳴が鳴り響く「夏」に一変。 正直、こんな手に汗握る「夏」は聴いたことがない。 今夜の白眉。 続く「秋」、大好きな「冬」も同様な調子が続き、 小生も背もたれから身を起こしっぱなしで、 ステージから飛び出す音に集中していました。 「凄い」 アンサンブルの乱れもほとんどなく、テンポを落とさずに大団円。 途端に会場のあちこちからブラボーが飛び、何人もの方がスタンディング。 (そうだろうなぁ、わかるよ) アンコールは、なんと4曲も。 全てヴィヴァルディ。 ①ヴァイオリン協奏曲ハ長調第1楽章アレグロ ②ヴァイオリン協奏曲ニ長調第2楽章ラルゴ ③ヴァイオリン協奏曲ハ長調第3楽章アレグロ ④「四季」より夏プレスト 最後の④で本編の熱狂が再現。 再びブラボーが。 ありゃ、ホント凄かった。 オーソドックスな「四季」しか聴いたことがない人には、 あまりにも型がくずれていて楽しめなかったかもしれないが、 小生には実に刺激的。 ホント、古楽は言葉のイメージとは裏腹に、実にアバンギャルドだな。 以前、ナイジェル・ケネディで聴いた「四季」もおもしろかったが、 今夜の「四季」は間違いなく数段刺激的(笑)。 Kitaraは日本ツアーの2日目。 26日名古屋、28日三鷹、30日&1日東京と続くようですが、 ぜひ、「ちょい悪男」風のカルミニョーラの演奏を楽しんでください。
by capricciosam
| 2010-11-24 23:37
| 音楽
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