デフレの正体@角川oneテーマ21

本書に触れる前に、著者が本書で度々引用している「国立社会保障・人口問題研究所」
のHPに示されている図やグラフを観ていくことにしたい。

まず、日本社会を蝕む少子高齢化が進むと、2030年頃には全国の市町村で
人口がどの程度減っていくのだろうか。
平成15年段階での推計が下図である。
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紺色になるほど人口の減り方が激しいのだが、
まるで列島全体に夜の帳が降りたかのように暗い。
しかも、意外な感じがするが、首都圏はじめ大都市圏もほぼ例外ではないのだ。

では、我が国の人口は将来に向けてどう推移していくのだろうか。
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人口は2004年頃をピークに2050年には約2700万人減って、1億人程度に減少する。
内訳を見ると、いわゆる「働き手」の生産年齢人口は13%減少するのに対して、
65歳以上の老年人口は16%増大する。
死に近い人口は増えれど、生を謳歌していく人口は減っていく訳だ。

当然、老人が増えると増大するのが社会保障給付費。
さて、実際どうなっているのだろうか。
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医療や福祉も上昇していることは明らかなのだが、
それにしても年金の上がりっぷりは見事の一言だ。
経済成長はさっぱり右肩上がりにはならないのに、こちらは赤丸急上昇。

「オイラの頃、ほんとにもらえるんだろうか‥」

引用はこのくらいにするが、広く基礎的データとして活用されている数字が
示す恐ろしい現実には、改めて愕然とする思いがする。

さて、話は変わって今年の元旦の夜に、TVのある番組を途中から観たら、
大きな人口の波が日本社会を襲っている、という指摘をしている人が
いて興味を引いた。
それが本書の著者の藻谷浩介氏である。
それで、昨年発売されていたらしい本書を遅まきながら読んでみた。

氏の講演をベースにしたものなので、やや繰り返し的部分はあるが、
それでも快刀乱麻を断つごとく現代日本社会の問題を抉り出していく。
その問題とは「人口の波」なのだ、と。
生産年齢人口の減少と高齢人口の激増が同時に進行していることが
国内の内需不振の原因なのだ、と喝破している。
つまり、最も消費が活発化する層が減って、ほとんど消費せずに
ため込むだけの層が増大することで、世間にお金がまわらないという
現象を生じさせている。
そのため景気が一向に上向かず、地方都市ではシャッター街が増え、
「戦後最長の好景気」だなんて言われても、さっぱり実感できなかった
ことに合点がいく思いがした。

特に、団塊の世代が最大の波であったことは間違いなかった訳で、
生産年齢世代であった頃は消費も膨らみ、社会のインフラ整備にも
強い影響を与える存在だった訳ですが、とうとう60歳を超え始めて
消費も停滞していくことに。
下の世代はどんどん人口は減っていくので消費が量的に拡大しない。
しかも、賃金は上がらない訳だから、益々不景気になる悪循環。
ところが、肝心の景気刺激策や経済政策が、この世代が現役だった頃の
過去の踏襲にすぎず、この新たな事態に適合できないため
効果が上げられないでいる。
このままじゃ、年金がとても不安。
政治、しっかりしろ! なんて気合いかけたくなってくる。

「やれ、やれ。なんとか良い手はないのかい!?」

そこで著者は「ではどうすればいいのか」という章を起こして、
考えられる手(=対策)を提示しています。
なるほど、と思うものもありますが、流れとしてはそうかもしれないが、
全面的に賛同しかねるというものもありました。
いずれにせよ、これは実際に手にとって確認していただくことが
良いと思います。
賛否はあれど、現代日本を覆う閉塞感、停滞感、不安感に関心がある方なら、
一読して得るところは多々ある好著であると思います。

ところで、先日菅首相が八重洲で何冊も本を買われた際に、
この本も含まれていたそうですが、もう読まれたのでしょうか?
えっ、何ですって。
国会も始まったので、その本は疎い、ですって。
お言葉ですが、「疎い」ってのはどのような意味でお使いになったんでしょうか。
えっ、なになに、
その本を買ったという情報はあるが、読んだという情報はない。
なんかわかりづらい説明ですね。
小生、そういう国会答弁のような説明には、とんと疎いんですよ。
お後がよろしいようで。
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<追記>
国立社会保障・人口問題研究所のHPから引用した図が探しにくいと思います。
トップ>研究所の概要>研究所の紹介>将来推計、社会保障給付費
で、見つかります。
一般人が見ることはあまり想定していないのかもしれないのですが、
改善の余地あり、と思われますね。
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by capricciosam | 2011-01-29 22:01 | 読書 | Comments(0)


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