探偵はBARにいる@映画2011

札幌のススキノで何でも屋というかプイベート・アイを生業とする<俺>を主人公とする
探偵シリーズは札幌在住の作家・東直己さんの代表作。
その一作目「探偵はバーにいる」は文庫化されてすぐに読んでいました。
c0007388_0484675.jpg

つきあってる彼女が失踪したのでなんとかしてくれ、と大學の後輩から泣きつかれて
<俺>が渋々たちあがってみたものの、市内を駆けめぐって謎を解いていくうちに
持ち前の正義感から深みにはまっていくというのが、ざっくりしたあらすじ。
著者の語り口は軽妙で、小生にとっては市内の土地勘のある場所が
次々に眼前に現れるものだから、親近感からあれよあれよと読み進んだものでした。
当時のキャッチコピーは「新感覚ハードボイルド」。
なるほど、暴力と殺人というハードボイルドには欠かせない要素もきちんとありながらも
場違いな「軽妙」とでもいうべき言葉がふさわしいような語り口で、酔いどれながらも
すさんだところがない、むしろ時折、畑仕事に汗を流す(もっとも栽培しているのは大麻だから
なんとも人を食っている)ように一見ポジティブに生きているように感じられる
新たなヒーロー像を読者に提示してみせた著者の語り口のうまさに感心したものでした。

しかし、今秋映画化されたのは題名こそ発音したら一作目と同じながらも、
「バー」を「BAR」に変えて、内容は二作目の「バーにかかってきた電話」。
c0007388_0495884.jpg

えっ、文庫本のカバーが新しいじゃないか?って。
実は、一作目以降シリーズ化されていたものの、「いつでも読める」と油断して
2作目以降は読まずじまいでした(東さん、ゴメンナサイ)。
それで、公開される前に慌てて読んだところです、ハイ。
一作目に比べ著者の語り口はさらに磨きがかかり、ストーリー含め
全体がこなれた感じになっており、謎の解明とともに衝撃度も増している。
映画化に2作目を選んだのは選択としては良かったのではないかと思う。

<以下、ネタバレが部分的にありますので、ご注意ください。>

映画化に当たって、ストーリーの大筋は原作に沿っているものの、
上映時間という制限の中で説明しやすいように、組み立てはくふうし、
導入部や演出を変えつつ、全体にテンポアップしており、バイオレンス度も増している。
その分、原作の雰囲気との乖離感があったと感じたのは否めないが、
<俺>を演じる大泉洋の時おりみせるお笑いキャラと、高田役の松田龍平とのかけあいが
原作の「軽妙」さにひきもどさせてくれる。
また、まじめに演じても普段TVで観る大泉洋のキャラが立ってきて、
少々お尻のあたりがもじもじしてしまう落ち着きの悪さはやむを得ないところか。
それから、演出での工夫に注文をつけるとすれば、観客の想像力に託して「絵」として
見せすぎないほうが深みを与えたのではないかと思えたシーンもいくつかあった点だ。
例えば、田口とその妻まで殺すシーンやヒロインの自殺シーンだ。
特に、後者は拳銃を頭に向けるカットでとどめ、次のカットは発射音で小生には充分。
そのほうがヒロインの悲しみが深まると同時に観客の想像力も働き、
気持ちも引き寄せられて、余韻が生まれたように思う。
また、拳銃一丁で何発撃てるんだ、というくらい南、岩淵父子にぶちこんでいたけれど、
岩淵父の扱い方も無理矢理カタルシスを得させようとしているようで安易で押しつけがましい。
むしろ原作の扱い方のほうが唸ったところだ。
また、死んだはずの<コンドウキョウコ>へのミスリード役が原作にはあったのに、
本作では配置しつつ否定したことで、原作を知らない人でも<コンドウキョウコ>が
誰なのかを簡単に推理できる可能性が高かったのは制作側の意図なのか。

しかし、総体的に見れば、札幌の今をふんだんに折り込んだロケもさることながら、
オリジナリティを見失う事なく、一定の水準が十分確保されていたことは喜ばしい限りだ。
あわよくばシリーズ化を狙っているとのことだが、
次作では、なお一層のブラッシュアップを期待したい。
c0007388_051492.jpg

<蛇足>
ホント、ススキノはじめロケはふんだんに敢行したようです。
赤ひげ薬局前、ラーメン横丁、地下歩行空間、中央署前や大通りビッセの各交差点etc。
思わず笑っちゃったのが、ススキノ交番裏のビル屋上。挑戦的(笑)
また、霧島敏夫の殺害現場は原作では南7西4の路上だから、まさしくススキノという設定。
でもロケ現場は、ススキノから離れた札幌駅前にある、
現在解体中の旧札幌西武の本館とロフト館の間にあった道路というか通路。
ロフト館(当時は新館と言ったんじゃないかな)ができたばかりの頃、出入り口近くに
犬の彫刻があって、子供を側に立たせて写真を撮ったことを思い出しました。
懐かしいなぁ~
それから、原作者の東さんも<ケラーオオハタ>のあるシーンで特別出演していました。
その演技する姿は普段の東さんらしいんだろうか、と想像したら思わずニヤリ。
[PR]
by capricciosam | 2011-09-15 21:32 | 映画 | Comments(0)


<< 東京都交響楽団札幌特別公演@K... あれから半年 >>