プレトークでは下野竜也さんが登場し、「演奏会の構成」という
素人には聞けそうで聞けない興味深い話をしてくれました。 定期演奏会の場合、先にソリストとソリストが演奏する曲が決まっていることが ほとんどらしいのですが、今回はブラームスのヴァイオリン協奏曲を編曲した ピアノ協奏曲ということがわかり、じゃぁテーマは「編曲」にしようとなったそうです。 次に考えるのが「調性」。同じ調性の曲ばかりでは印象がぼけてしまうそうです。 と、ここでピアノで音を出しながら、「初めの曲が変ホ長調なので、次は‥」 と音を拾って、繋げながら解説してくれました。 で、ご本人曰く「変化球」だらけの演奏会となったそうです。 演奏曲目は順に 1 ブラームス ピアノ協奏曲第3番(ラツィック編) 2 ブルックナー アダージョ(弦楽五重奏曲より、スクロヴァチェフスキ編) 3 ヒンデミット 交響曲「画家マティス」 なるほど、ちょっとなじみのない、というか薄いというような曲だらけ。 1はソリストのデヤン・ラツィック自身の編曲なのだが、下野さん曰く、 オーケストラ部分は一音たりとも手を加えていないそうで、あくまでも ソリスト部分をピアノに置き換えたとのことなのですが、印象としては努力賞かな。 確かに、第二楽章は原曲かと間違うほどピアノでも違和感なく聴けたが、 やはり、第一楽章のソロの入りとか、アタッカで入る第三楽章の入り等の ソロの印象的な部分の「凄味」が感じられない。 これは楽器の違いのなせる技で、ソリストの技量ではないのだろうが、 総体的には、単にピアノで置き換えただけのような感じで平凡で退屈な印象に終わった。 2は「アダージョ」とは言っても、目線を下げたうつむき気味な、沈潜していく印象はなく、 ブルックナーらしく天上への目線を感じさせる、絶え間ない音のうねりが印象的。 原曲が未聴なので、原曲本来の持ち味なのか、編曲の妙なのかはわからないが、 演奏された3曲の中では一番短かったものの、とても印象的だった。 一階席からでかい声でブラボーが飛んでいた気持ちも分からぬ訳ではないが、 ちょっとフライング気味なのは如何なものか。 下野さんも手を降ろしきってはいなかったし、むしろ沈黙を味わいたかっただけに残念。 3は今回演奏された中では定番なのだろうが、それでも頻繁に耳にする曲ではない。 3楽章に構成されていて、総体的にはザラっとした、硬質な印象が感じられるのは、 この曲が誕生した背景(ナチスの台頭と苦悩する作者)があるからなのだろう。 下野さんの的確なリードで、札響は見事に曲を再現していたと思う。 ただ、もう少し踏み込んだ、というか共感のようなものがあればなお良し、と感じた。 昼公演。変化球が影響したのか、各ブロックに空席が先月より目立った。6~7割か。 でも、先月の高関さん同様、今後も下野さんには来演してもらいたいものだ。
by capricciosam
| 2012-03-03 23:10
| 音楽
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