北の土偶@北海道開拓記念館2012

1975年道南の旧南茅部町の自家野菜畑で、それは発見された。
確か、主婦の方がいもを掘ろうとしたはずだ。
2007年に北海道初の国宝となった「中空土偶」である。
国宝指定当時、道内では大いに話題になったのでご記憶の方も多いと思う。
偶然とはいえ、ほぼ無傷らしいから実に幸運だったと言わねばならない。
現在の愛称は「カックウ」という。
南茅部の「茅(カヤ)」と「中空(クウ)」からとったものらしい。

当時、「機会があればみたいものだな」とは思っていたものの、遠方だけに
わざわざ出かける気力もなかったが、今回他の2点の国宝土偶とともに展示される、
しかも期間中本物展示は期間限定(期間後は複製)とのことだったので、
どうせ見るなら本物を見ておきたいと思い、出かけた次第だ。

ところで、「土偶」ってどんなもの!?なのでしょう。

「世界各地の先史時代を中心に広くみられる人間をかたどった土製品。
乳房や臀部を誇張した女性像が大部分で,男性を表すのはまれである。
動物をかたどったものは動物土偶と呼ばれ,素材に石を使ったものは岩偶という。
日本における動物土偶は,縄文時代後期から晩期にかけて,おもに東日本でみられ,
猪が最も多く発見される。他に犬,猿,熊,ムササビ,亀,ゲンゴロウなどがあり,
いずれも食糧などとして生活に密着した動物が選ばれた。」
(以上、コトバンクより引用)

確かに、それほど広くないスペースに展示されている
大小様々の約130点の外観上の形はこの定義にあてはまるようだ。
しかし、その多様さには、改めて驚いた次第だ。
例えば、他の2点の国宝土偶のうち、長野県で発見された「縄文ビーナス」は、
腕の解釈がなんとも不思議なのだが、そのフォルム含めた紋様もないシンプルさが
逆に想像力を刺激して惹き付ける。
一方、先ほどの「カックウ」や青森県で発見された「合掌土偶」には一定の紋様が施され、
いかにも土偶らしさが感じられる。
「カックウ」のちょいと小首を傾げた立ち姿には愛らしさ、さえ感じる。
しかし、合掌土偶の体育座りして、その腕を膝の上にのせて組み、必死に願うがごとき様には
なにやら一心不乱的なものを感じていたが、展示の解説を読んでさらに驚いた。
当時の出産は「座産」といって座って出産したようで、安産を願う妊婦との解釈ができるらしい。
子孫を生むという、当時の母子の生存をかけた必死さが凝縮されているんだな、
と捉えなおして、改めて見つめ直してしまった。
産院での出産が当たり前と捉えている現代に生きる小生には驚き以外の何ものでもないし、
悠久の時を経て、当時とは比較にならない安全な環境で出産できる子孫がいかに恵まれているか、
ということに思い至ったのはごく自然なことと思う。
まぁ、出産環境と言っても、単に産むだけでなく、そこに至る諸条件もあるから、
一概には言えないのかもしれないが、少子化が進み、人口減少に悩まされる現代日本社会を
見たら当時の人はどう思うのかな、とも考えてしまった。

縄文時代後期、晩期とは、Wikipediaによれば、
「後期(紀元前約4,500 - 3,300年前)、晩期(紀元前約3,300 - 2,800年前)」
とある。想像を絶する程の旧い、旧い時代であることは間違いない。
当時の彼らの営みがあったればこその現代に生きる我々なのだから、
遠き祖先に思いを馳せて、謙虚に足もとを見つめ直す意味でも
とても興味深い展覧会だった。
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<追記>
この企画展は昨年4月に予定されていたらしいが、東日本大震災の影響で
展示物の輸送が困難になり、一年延長されたとのこと。
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by capricciosam | 2012-03-20 07:02 | 展覧会 | Comments(0)


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