北海道現代具象展@北海道立近代美術館2012

昨年放送された「日曜美術館」で野田弘志さんが特集されているのを見た。
超写実主義という分野で活躍されていること、そして
この分野において多くの作家が多様な作品を生み出していることを知った。
どの作品も油絵ながら、写真で写しとったかのような鮮明さ、細密さで描かれている。
まるで、対象そのものの見に見えぬ本質までをも描き出そうとしたかのような
作者の意気込みや迫力を感じるのだ。
中でも、野田さんはこの分野において現代日本を代表する一人なのだという。

番組では、北海道のアトリエにおける創作活動が披露される。
起床してから、食事以外はアトリエに籠もって創作活動に打ち込んでいる姿は
とても70歳過ぎとは思えない。
その中で野田さんはインタビューに答えている。
「人間の生から死に至る存在そのものを描きたいんだ」と。
やはり、この執念が作品に滲むということなのだろう。

作品では、様々なモデルを対象に描いている。
風景、刈り取られた小麦束、動物の頭骨、裸婦、赤ちゃんetc
作品は、まずモデルを写真に撮って、写真を元に仕上げていくようだ。
番組では、雪のある中を一人の妙齢の婦人がわざわざ東京からやってきて、
ドレス姿でモデルとなる様子が紹介される。
その写真撮影や作品として仕上げていく過程を放送するが、
番組では作品の完成形までは放送されなかったのが、心残りだった。

ちょっと前置きが長くなったが、今回訪れた第5回北海道現代具象展で、
実はこの時の作品が「崇高なるもの Op.1」として展示されている。
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野田さんの作品は2点だけだが、会場に足を踏み入れるまで知らなかっただけに、
対面した時には心底驚いた。

「あの時の作品だ!」

番組では野田さんが拘っていた手も含めて、まじまじと接近して見ることができたが、
決して細部まで綿密に描かれ、塗られている訳ではないことに驚いた。
番組で細部に拘って綿密に描写していたと思われた野田さんの姿から
勝手に想像していただけのようだ。
しかし、どうみても油彩そのものなのに、ちょっと離れて見ると、
見事に活き活きとモデルが立ち現れてくる不思議さ。
技巧的にはなにも目新しいものではないのかもしれないが、
完成された作品を前にすると、鑑賞者は言葉を失い、その迫力に圧倒される。

もう一点の裸婦を描いた作品「聖なるもの THE-Ⅲ」は、性器が見えるくらい
膝を深く曲げて横たわった姿態が明るく浮かび上がる中、逆に顔は影の中にある。
しかし、目は見開かれ、鑑賞者から逸れた目線は一体何を見つめているのか。
鑑賞者の想像を刺激して止まない。
わずか2点だが、他の作品群の中にあっても目に飛び込んでくる一揃いだった。

具象とは、
「はっきりした姿・形を備えていること」
(以上、コトバンクより引用)
という意味らしい。
抽象画のように単純化された点、線、面等で構成されていない画なので
鑑賞に無理な想像力を求めませんが、鑑賞者の想像が刺激されることがない訳ではありません。
また、作品とは本来そういうものなのでしょう。
野田弘志さん以外では、道内に縁のある作家や招待作家含めて多くの作家が
2点程度ずつ出品しており、多種多彩で、なかなか見応えのある展覧会でした。
今回が最終回とは残念なことですが、ぜひ形を変えてでも復活されないものか、と思います。

実は、佐々木譲さんが今回の展覧会に野田弘志さんが出品されていることを
つぶやかれていたことから、初めて足を運んだ次第です。
佐々木さんはすでに初日にご覧になったようで、いくつかのつぶやきを残されています。
中でも、本展覧会のHPに取り上げられている笠井誠一さんの作品を巡る発言には賛成ですね。
小生も探してしまった口ですから、なおさらです。
それにしてもアーチスト・トークは聴きたかったな。
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by capricciosam | 2012-03-22 22:40 | 展覧会 | Comments(0)


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