まず、当日の演奏曲です。
1 ドヴォルジャーク スケルツォ・カプリチオーソ 2 ドヴォルジャーク 交響詩「野鳩」 3 ドヴォルジャーク 交響曲第9番「新世界より」 エリシュカさんが札響定期に登場してから、多くの人が鶴首して待っていたのが、 本定期の「新世界より」であることは間違いないでしょう。 やはり、これまでの定期で取り上げた他のドヴォルジャークの曲で示した力量からも チェコ・ドヴォルジャーク協会会長としての実力が証明されてきたのですから 期待しても当然というものです。 その辺は、エリシュカさんも、よ~くご承知のようで、配布されたプログラムに 「札幌交響楽団の皆様と再会し、リハーサルを開始することを心待ちにしておりました。 そしてその時がまいりました。きっと素晴らしい再開となるでしょう。 なんといっても今回のプログラムは皆様お待ちかねの「新世界交響曲」ですから!」 と、言葉を寄せられていました。 さて、その「新世界より」ですが、聴き終えてみると、これまでに聴いた実演や 所有CDのどれにも似ていない、独自の解釈に貫かれていたように感じました。 その最大の要因は全楽章を通じた遅めのテンポです。 特に、第2楽章は大体12分程度だろうと思うのですが、約15分という遅さ。 しかし、停滞したとか、弛緩したというのとは無縁で、実に丁寧にかつしみじみとした 深い情緒に満たされていて、largo(ゆったりとした)とは、こういうのを指すんだな、 と改めて合点したような気分です。 これは、「新世界より」だけではなく、1曲目、2曲目から兆しはありました。 予習したCDの時間より、明らかに各々数分時間がかかっていますが、 これは3曲目同様の遅めのテンポの影響なのでしょう。 これは、老いて深まった故の解釈なのか、一般的な80歳代の老人の感じる時間の流れ なのか、あるいは両方なのか、それとも本来こういう譜読みをすべきなのか、は不明ですが、 結果的には名演であることは間違いありません。 「新世界」の最終楽章を終え、数秒の沈黙とともにエリシュカさんが腕を下ろすと、 途端に会場のあちこちから多くのブラボーと鳴りやまぬ拍手が。 深い感動とともに、名演の誕生に出会えた、という気分がまだ続いています。 いずれ発売されるCDで、この感動を再現してくれることを祈るばかりです。 また、かっちとしたアンサンブルで札響のどのパートもよく応えていたと思います。 特に、第1楽章と第4楽章の弦楽器には一体となった凄味と言っても過言でない、 迫力がありました。 また、1曲目の首席のソロはじめ、トランペットの響きには魅了されました。 <蛇足> 昼公演。空席も目立たずどのブロックもよく入っていました。 今回もライブ録音されていることが演奏開始前にアナウンスされていましたが、 あろうことか1曲目にフライングブラボーが飛び出したのには愕然としました。 幸い2曲目と肝心の3曲目には飛び出さなかったため、余韻を楽しむことができましたが、 あれは一体なんだったんでしょう。 <蛇足2> エキストラの中に、なんとベルリン・ドイツ響のコントラバス奏者の 高橋徹さんがいたのにはびっくり。思わず目をこすりました(笑) 昨年11月の佐渡さんとDSOの熱演を思い出しました。
by capricciosam
| 2012-04-28 19:24
| 音楽
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