夷酋列像@北海道立函館美術館2012

函館行きの別の目的はこの特別展示を観るため。

作者蠣崎波響が松前藩家老として重責を果たしつつ、画才を発揮して「夷酋列像」を
残したものの、その一連の作品が、国内ではわずか2点しか現存していない、
程度の知識しかなく、その2点すら実際には見たことがなかった。
ところが、その「夷酋列像」の多くが1980年代にフランスのブザンソン市で発見され、
約20年ぶりに松前町と函館市で里帰り展示されることになった。
この報道に接し、恐らく二度と見ること能わず、との思いが募り、閉幕まであと3日という
ぎりぎりの日に、とうとう念願かなって観ることができた。
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「夷酋列像」の他にも波響の作品が3点展示されていたが、江戸や京都で正式に
学んだと言うだけあって、日本画の基本を押さえた作品に改めて波響の腕の確かさを感じた。

さて、肝心の「夷酋列像」であるが、函館市中央図書館蔵の「御味方蝦夷之図」の2点
「イトコイ」「ションコ」を先に観て、対面に展示されている「夷酋列像」11枚を観て
いったが、特に、この2枚は何度も見比べて観ることになった。
と、いうのは「夷酋列像」は12枚一組で、少なくとも2組制作され、函館とブザンソンの
絵はそれぞれ異なる組であるとのこと。
そこで気になるのがなんらかの違いがあるのか、という点だが、画面左寄りに槍を持った
立像で描かれた「イトコイ」だが、寸分違わぬ出来に驚くとともに、その精緻な筆使いには
驚嘆した。と言うのは、どの絵も驚くほど小さなサイズに収まっている。せいぜいA3程度
だろうか。その中で、あの「イトコイ」の威厳をディテールまで表現できたのは、奇蹟に近い
のではないか。しかも、何日かけたのかわからないが、少なくとも24枚書き上げた
というのだから、驚くべき筆力という他はない。

ところで、2組の違いだが、何度往復して見比べても線や紋様ではよくわからないのだが、
色の具合はやや異なっているようだということに気がついた。
特に、白髪老人の「ションコ」の顔色は、ブザンソンの方がやや浅黒く、函館のは白い。
これの是非を論じるつもりはなく、何故か違いがあることにほっとする思いであった。
(カラーコピー技術のない時代に手書きでうり二つというだけでも驚異。)
その他、里帰りした作品では、圧倒的存在感の「ツキノエ」、唯一の女性「チキリアシカイ」
そして不思議な体育座りの「マウタロケ」が印象に残った。

ただ、作品を美術的観点から愛でることとは別に、これらの作品が描かれた背景には
アイヌの人たちの「クナシリ・メナシの蜂起」(1789年)という歴史的背景があったことが、
一層この作品の印象を強くし、重くしていることを忘れてはなるまい。
少なくとも北海道に住む和人の末裔ならばなおさら、と思う。
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by capricciosam | 2012-09-13 06:30 | 展覧会 | Comments(0)


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