ジーザス・クライスト=スーパースター@千歳市民文化センター2014

会場に一歩足を踏み入れると客席側に傾斜した荒野がステージいっぱいに設置されている。
この意表をつく大胆なセットは観る側の想像を刺激して止まない。
こんなシンプルで不思議なセットではたいしたことはないな、と高を括ったら大間違い。
序曲の暗く、重いロックのビートに乗って群衆が蠢く様に始まり、次々に展開される
キリストの磔刑までの最後の7日間の物語に観る側は圧倒されて魅入ることになる。
凝縮された100分。
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この物語はキリストの後世に伝わる晩年を忠実に取り入れつつ、
そこに「神の子」としてではなく、人間としての苦悩や葛藤を浮き彫りにさせると同時に、
ユダの苦悩と葛藤をも光と影のごとく対比させて描いていく。
視点を変えて行われた大胆な解釈により宗教から離れたドラマを獲得した。
それ故、キリスト教徒以外の他宗教の者にも訴える普遍的な力を持ったとも言える。
ティム・ライスとアンドリュー・ロイド=ウェバーが着想し、オリジナルを発表したのは
1960年代末。ミュージカル化されたのが1970年代初頭。
劇団四季の初上演は1973年。以来劇団四季でも再演が繰り返されてきたが、
時の篩いにかけられても本作品の持つ原初的エネルギーと輝きは色あせることはない。
今回久しぶりに観てなお一層この思いは強まった。

ティム・ライスとアンドリュー・ロイド=ウェバーの骨格は活かしつつも、
さらにエルサレム版としてブラッシュアップさせている
演出:浅利慶太
訳詞:岩谷時子
美術:金森馨
振付:山田卓
照明:沢田祐二
の力が大きいことは言うまでもない。

実は、劇団四季ミュージカルとの最初の出会いがこの作品だった。
出会ったのが、30年前の千歳市民文化センター。
「キリンミュージカルシアター'84」(26公演・5月~7月)の全国巡演の一環。
主要な役は次のとおり。

・ジーザス・クライスト:山口祐一郎
・イスカリオテのユダ:沢木 順
・マグダラのマリア:野村 玲子
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今振り返っても良い配役だった。もう一度同一キャスティングで観たいものだが、
山口さん、沢木さんはすでに退団され、野村さんは今では幹部俳優。
時の経つのは是非もないこと。
ベテランの沢木さんに対して、当時の山口さん、野村さんは売り出し中の若手。
今回の配役も似ている。ユダ役の芝清道さんの「彼らの心は天国に」の熱唱に
始まる数々のソロの安定感はまさしくベテランの味。安心してユダ役に共鳴できる。
ジーザス・クライスト役の神永東吾さんは、瞬間的に山口さんを彷彿させるところがあり、
懐かしく観た。決して大仰な演技ではなかったが、苦悩するジーザスを的確に演じていた。
マリア役は目立つ場面は少ないがこの苦悩に満ちた作品のオアシスとして重要。
観月さらさんの「私はイエスがわからない」のソロは収穫だった。
若い神永さん、観月さんのお二人のさらなる精進に期待したい。
ベテランのお二人、ピラト役の村俊英さん、ヘロデ王の下村尊則さんは「うまい」の一語。
特にヘロデ王の場面は内心の怯えと焦りを隠しつついかに能天気に演じられるか。
かつて観た市村正親さん同様、下村さんはハマリ役で見事だった。
この作品はソロだけでなく、アンサンブルもとても重要。
いかに意味ある動き、演技ができるか。高める余地はあるのだろうが、十分な出来だった。

全国巡演(8/29~12/2)のため道内公演は4カ所のみ。
9/30千歳 10/1旭川 10/3帯広 10/5七飯
千歳では客電がついても立ち上がった客からの拍手が鳴りやまず
アンコールが繰り返された。
いかに客席を巻き込んだかの証明として至極当然な反応だったと思う。
久しぶりにエネルギーを注入された思いで会場を後にした。
<追記10.5>
七飯町の公演は日本初演から1500回目だそうです。

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by capricciosam | 2014-09-30 23:33 | 舞台 | Comments(0)


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