鴨居玲展-没後30年・踊り候え-@道立函館美術館2015

道立函館美術館の特別展示室は出口が自動ドアで喫茶売店スペースに
つながっている。展示を見終えたら、おくつろぎくださいとの趣向らしい。
そしてそこで図録や絵はがきが売られているのだが、覗いてみたら
絵はがきサイズの鴨居玲の写真まで数カット売られていた。
まるでプロマイドだが、実際彼は美男子なのだ。

今回は展示の所々に鴨居玲の生前のスナップ写真が飾られていて、
作品の生まれた状況を理解する手助けになっているが、
眉間にしわを寄せた苦み走った顔や屈託なく笑う顔の、なんと素敵なことか。
確かに手助けの側面もあるが、鑑賞者が対峙している作品は総じて重苦しく、
苦悩に満ちた印象が強いだけに、むしろ混乱を生み出す要素でもある。
「本当に、これら(作品)の生みの親なのか!?」
思わず作品とのギャップを感じずにはいられなかった。

彼の作品は決して多彩と呼べるものではないし、活きる活力を与えるなんて
要素とは無縁と言っても過言ではない。むしろ、繰り返し描かれた作品の
モチーフは「苦悩」と一言で極言できるのかもしれない。
従って、どの絵も似たような印象すら与えかねない。暗褐色の沈んだ背景に
人生に疲れ果てたような懊悩する人物が繰り返し描かれたような印象すら残る。
その人物は姿形を変えたとしても、画家そのものを投影したようだ。
人の生の営みを阻害しかねない強い力は何も画家だけが有するものではない。
誰もが有する側面なのだが、普段は直視することは少ないのかもしれないだけに
人生を賭けてそれを描いた生き様の凄まじさ、痛々しさに立ちすくむような思いを
抱かざるを得ないのだ。その点では強い共感を覚えるとも言える。
作品そのものは万人向けとは言い難いが、その強い磁場は観る者を引きつけて止まない。

今回の展示はⅠ初期~安井賞受賞まで、Ⅱスペイン・パリ時代、
Ⅲ神戸時代、Ⅳデッサンと4部構成で約100点が展示されている。
没後30年を記念して東京ステーションギャラリーを皮切りに全国を巡回中。
道立函館美術館では9月6日まで。以降石川県立美術館、伊丹市立美術館へ。
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<追記>
作品の中には、「踊り候え」「酔って候う」と題名のある作品が。
「酔って候う」は司馬遼太郎の作品からとのことだが、室町時代の「閑吟集」には

憂きも/ひととき/うれしきも/思い醒ませば/夢候よ/酔い候え/踊り候え

とあるらしい。
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by capricciosam | 2015-08-26 22:31 | 展覧会 | Comments(0)


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