アンネ・ソフィ・フォン・オッター&カミラ・ティリング@Kitara2015

【プログラム】

1 メンデルスゾーン 挨拶 作品63-3(D)
2 リンドブラード 夏の日(T)
3 リンドブラード 警告(O)
4 リンドブラード 少女の朝の瞑想(D)
5 グリーグ 6つの歌 作品48(T)
7 シューベルト ますD.550(O)
8 シューベルト 夕映えの中でD.799(O)
9 シューベルト シルヴィアにD.891(O)
10 シューベルト 若き修道女D.828(O)
11 メンデルスゾーン 渡り鳥の別れの歌 作品63-2(D)
12 メンデルスゾーン すずらんと花々 作品63-6(D)
13 マイアベーア シシリンエヌ(T)
14 マイアベーア 来たれ、愛する人よ(O)
15 マイアベーア 美しい漁師の娘(O)
16 マスネ 喜び!(D)
17 フォーレ 黄金の涙 作品72(D)

18 R.シュトラウス 憩え、わが魂よ 作品27-1(O)
19 R.シュトラウス たそがれの夢 作品29-1(T)
21 R.シュトラウス どうして秘密にしておけようか 作品194-1(O)
22 R.シュトラウス ひそやかな誘い 作品27-3(T)
23 R.シュトラウス 明日! 作品27-4(O)
24 R.シュトラウス ツェツィーリエ 作品27-2(T)
   
※D~デュエット T~ティリング O~オッター

アンネ・ソフィー・フォン・オッター(以下「オッター」という。)は
今年Kitaraに来演するビッグネームの一人であることは間違いない。
しかも東京と札幌だけの2公演のみという稀少さだけに、チケットは完売。
ただ、ソロリサイタルではなくソプラノのカミラ・ティリング(以下「ティリング」という。)
とのデュオリサイタルとなったのは、やはり加齢(60歳)による声の衰えなのか、
と少し心配だった。

予習を兼ねて所有するオッターのCDを聞いていたが、声量が抜群にある訳では
ないのに不思議に惹きつけるものがある人だな、と改めて感じた。
声に「演技力がある」、「表現力が巧みだ」、とでも言うのだろうか。
優れた俳優のようにその声で物語を語るかのような、本来の歌唱力にプラスされた
何かが滲んでくる不思議な魅力のある人だな、との感想を抱いた。
この感想がそうはずれたものではないかな、と思ったのは
当日のステージでオッターの歌声を直に聴いた時。

ティリングは歌手としては身振りも少な目に本来の歌唱で本番に臨んでいる
オーソドックスなスタイルなのだが、オッターは歌曲を歌うというよりは
視線の移動含めた顔の表情や身振り、仕草含めて演技的要素が豊かで、
まるでひとり芝居を見るかのようだった。
曲に込められた思いを具体的に表現する力が強い、とでも言うのだろうか。
オッターが長期にわたって一線にあり続けられ、多彩な活動を展開しているのは
実は声量というより、声質に付随するこの演技力、表現力が抜群だからではないのか、
天性のものがあるのではないか、そんな感想を抱いた。
それがため、加齢による声の衰えをカバーし、現役としての活動はもっと伸びる
のではないか、とも思った。

多彩なプログラムをデュエットしたり、交互にソロをとったりして聴かせてくれたが、
はじめに会場が沸き立ったのはティリングのソロによるグリーグだった。
豊かな才能を感じさせてくれ、ポテンシャルの高さが感じられた。
次にオッターのソロによるシューベルトでは4曲のうち2曲
「月に寄せるさすらい人の歌」「魔王」が「ます」「若き修道女」に変更になったが、
至福のひと時。時間の経つのが惜しまれ、もっと聴きたかった。
最後のR.シュトラウスではティリングとオッターが交互に歌う形をとったが、
歌い終わると、ステージ後方のイスに座り、互いのソロに聴き入るスタイルをとっていたが、
ティリングも身振り豊かになり、オッターも心持ちじりっと前に出たような力強い印象で
歌い上げた。二人が互いの持てる力を存分に解放していく様には圧倒された。
当夜の白眉。

ピアノのジュリアス・ドレイクの歌への寄り添い方も徹底していたが、
最後の一音が消え入るまで丁寧に伴奏していたことが印象的だった。
会場からのフライング拍手もなく、聴衆もすばらしい時間の共有に貢献していたと思う。

鳴り止まぬ拍手に応えてアンコールは3曲
1 オッフェンバッハ (「ホフマン物語」より)舟歌
2 ブラームス 姉妹
3 フンパーディンク (「ヘンゼルとグレーテル」より
             夜には私は眠りに行きたい 
2の前にはピアニストが英語で姉妹の関係を説明し、3ではオッターが
「もう眠い」とばかりに両目を両手でこするポーズをとっていた。

夕映えのような色鮮やかなロングドレスに白髪。
オッターは実に堂々と老いているようで、その自然な歌い方とともに
鮮烈な印象を残した。素晴らしいティリングの歌唱とともに、
なんと濃密で贅沢なひとときだったことか。
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by capricciosam | 2015-09-29 06:55 | 音楽 | Comments(0)


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