正倉院展@奈良国立博物館2015

奈良を訪れるのは修学旅行以来。何回か訪れている京都に比べると土地勘がなさすぎるので、
JR奈良駅からは市バスを利用した。開館10分前には到着したが、すでに長蛇の列。
昨日の京都国立博物館の待ち時間を思い出して一瞬覚悟したが、待ち時間もほとんどなく
入場が極めてスムーズだったのは幸いだった。

正倉院については東大寺にあり、校倉作りで、聖武天皇の宝物を中心に収納しているが、
特段美術品ばかりが集められている訳でもない程度の予備知識しかなかったので、
年に一回しか公開されない展覧会ではどんな品々に出会えるのだろう、と楽しみだった。
今回は63件(うち初出陳12件)の宝物が出陳されていた。会場の解説には一回公開されると
原則10年は公開されないとあり、今回で67回目だから、全体はすごい数なんだろうと
配布されている資料をみると、なんと約9000件。
これは生涯の趣味として毎年リピートされる方もいるだろうな、と思った。

まず、聖武天皇の遺愛の品々から展示されていたが、「平螺鈿背八角鏡」には目を奪われた。
きれいな貝や宝石の細工がなされており、唐から伝来したと推定される。当時の唐が愛でた美
なのだろうが、それにしても見事なものだ。しかし、残念なことに鎌倉時代に盗難にあい、
大きく破損し明治時代に修理を受けたことがわかっているらしい。
併せてこの鏡を納める漆の円形箱が展示されていたが、漆皮箱とある。獣の皮を成形して
漆を塗ったものらしいが、これも奈良時代に盛んだったが平安時代には木に漆へと移っていった
らしい。

次の天平の音楽と舞踊のコーナーにはポスターにも使われているぺルシャを起源とする
「紫檀木画槽琵琶」やいろいろな伎楽面が展示されていた。この琵琶の撥面に描かれた絵は
かすれて判別し難いものの、背面の小花模様のこまかな細工には目が釘付けとなった。
また、表面に模様の彫られた蛇紋岩で作られた横笛と縦笛も展示されていたが、戦後すぐに
録音されたこれらの笛の音が交互に流されて、音の天平体験をすることができた。
音自体は薄い響きの素朴な味わいだった。

その他にも当時の為政者と仏教がいかに密接だったかを示す仏具や袈裟が展示されていた。
そのひとつ、聖武天皇の遺愛品のリストである「国家珍宝帳」の筆頭に記載されている
「七条褐色紬袈裟」はインド出身の密教の僧が身にまとったものとのことであるが、
教科書では密教の伝来は空海や最澄によるとされているので、実はもっと早くに密教に触れて
いたのではないか、と想像力をかき立てられた。

また古文書(現代の戸籍に相当するものや依頼文書)が興味深かった。
戸籍に当たるものは楷書で書かれているので「男、女」という文字の他、「妻、妾、弟、妹、
孫、姪」という文字が確認でき、家族という概念が当時から形作られていることがわかった。
また、傑作だったのは、要するに「金を払うから代筆して」とか、「納期に間に合わないから
もう一回納期を延ばして」という内容の古文書で、「当時も今と大して変わらないなー」と
思わず苦笑してしまった。
その他、当時の度量衡の意識が垣間見える装飾の施された「紅牙撥褸尺」や動物の毛を使用した
敷物等興味はつきなかった。

「正倉院はシルクロードの終着点」とも言われるが、今回の展示品だけでも当時のアジアや
奈良時代の暮らしが想像され、とても興味深いものだった。思い切って来て正解だった。
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by capricciosam | 2015-11-08 11:48 | 展覧会 | Comments(0)


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