007スペクター@2015

ロビーには007シリーズの歴代のボンド俳優が紹介されているパネルが
展示されていた。数えてみると現在のダニエル・クレイグ(以下、「ダニエル」
という。)で6代目となる。(時には5代目と勘違いされることもあるようですが)

ダニエルが主演した前3作「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」「スカイフォール」
では、それ以前のボンド俳優が主演した作品とテイストを異にする。
ダニエル作品ではボンドの再構築を行い、「シリーズinシリーズ」の趣があり、
一話読み切りの形をとりながらも、次作への連続性を強く意識した作りとなっているからだ。

主演1作目の「カジノ・ロワイヤル」ではダブルオー部門に属するエージェントで
ありながら、正式に007誕生となるまでを描く。おまけに、唯一「女王陛下の007」
で取り上げたボンドの恋愛をも描く。それも「女王陛下の007」同様、悲劇として。
そして、悲劇の背後には謎の組織があることも示唆される。
また、シリーズおなじみのテーマ曲も流れるのはエンディング間近という念の入りよう。
これでようやくボンドの誕生という訳だ。またM(前作同様ジュディ・ディンチ)は
登場するが、Qやマニー・ペニーは登場しない、というシリーズとしては異例の設定。

2作目の「慰めの報酬」ではボンドの個人的復讐譚の趣きから始まり、その中で
巨悪組織の存在が示唆されるが、その正体は明らかにされないまま巨悪組織の
一員グリーンと対決して作品は終わる。謎は残った。

3作目の「スカイフォール」ではボンドが味方の女性に撃たれるシーンがあるが、
この女性が後にマニー・ペニーとして登場するが、これも意外な設定。
またMI6ビルも爆破されるが、並行してMI6の組織としての存立自体が
脅かされていることも描かれる。MI6とて時代の流れの中では盤石ではない訳だ。
ダニエル作品以前では諜報機関の組織自体が描かれることがなかったと記憶している。
犯人はMの元部下で、Mに見捨てられた個人的恨み(本作でも似た背景を007に用意する)
を復讐しようと執拗にMを追いかけるため、犯人をおびき出すためボンドはMを道連れに
スコットランドにある自身が育った家スカイフォールに向かう。
しかも、懐かしいアストン・マーチンで。
(懐かしさもあるが、正直唐突感あり。かえって目立つだろうに、、、)
スカイフォールでは犯人を倒すものの、結局Mは死亡することに。
そして、新たなMにはMI6を追求していた側の人間がなるという皮肉が描かれる。
組織としても個人としても時代が変わりつつあることを示唆する。

余談だが、本作品は50周年記念作品としてヒットし、シリーズの中では上位に
評価されることもある作品だ。評価されるのは、これまでの作品では描かれること
のなかったボンドの個人的側面を描きつつ、Mとボンドとの交流的側面も初めて描き、
しかもMの死まで描いくといったシリーズには希薄がちな人間ドラマに比重を置いた、
新たな試みがいわば「新味」として受け止められたためだろうか。
しかしながら、個人的にはその新味に疑問を感じた作品。
最大のものは結局は個人の復讐譚的スケールで終わる「しょぼさ」。
シリーズ作品の魅力である荒唐無稽的スケール感のあるティストはさっぱり感じられず、
スカイフォールでの対決シーンも他作品で見たような既視感に満ちたもので、
かつ他作品でもみられるようなドラマが付加されたような印象では、「つまらなさ」が
先に立った。個人的には新たな試みとして受容するより前に違和感があった。
シリーズで形成されてきたフォーマットへのこだわりが強すぎるのかもしれないが、
「これからこのシリーズはどこに行くのか」的な戸惑いが残り、
ブログに記事としてまとめる気力も起きなかった。
閑話休題。ボンドの出自は謎だったが、本作でスコットランド生まれであることがわかる。
とはいうものの、何故今空き家なのかの説明はないまま作品は終わる。
謎が引き継がれた訳だ。

そして第4作「スペクター」では、メキシコでハデにやらかし過ぎて職務停止と
なったボンドだが、その理由は死んだMからのビデオメッセージだったという種がある。
その遺言の謎を追っていくうちに、「カジノ・ロワイヤル」でのヴェスパー・リンド
の死にからんだホワイトに行き着き、さらにはホワイトの娘とともにたどり着くのが
巨悪組織スペクターという訳だ。
シリーズの最初から背景に描かれるスペクターがここで登場することになるが、
本作ではその親玉ブロフェルドがどういう人物なのかが「スカイフォール」と
からめて描かれ、「そう繋がるのか!?」的驚きが待っているという訳だ。
(ぎりぎりネタバレしていないはず)

一方で、情報監視社会の到来にともなうMI6の廃止という組織的な危機も描かれ、
ダブルオー部門はオールドファッションとして切り捨てられていく、という
時代の流れも描かれる。見事に繋がる訳だが、鑑賞後の後味としては悪くない。
また、M、Q、マニー・ペニーもよりアクティブな形で描かれていくのもおもしろい。
脇役もアクティブ化することで、「ミッション・インポッシブル」のような
チームアクションの方向性も匂わせる。

ダニエル=ボンドの各作品は「実は4部作だったのかー」的驚きがあったくらいで、
原作や過去の作品で省略されていた部分の解釈を新たに提示してうまく作り直した感がある。
こういう新味は受け入れたいと思う。
(それでも、3作目のありかたはスンナリとは受け入れがたい。どれだけ辛目か!?)

また、次作に続く謎ではなく余韻を残したと思うのは、ボンドの恋愛が本作品では
悲劇で終わらずに、次作まで続きそうな気配と宿敵ブロフェルドが生き残った点だ。
この点は次作で引き継がれる予感(期待?)があるが、さてどうなることか。
ダニエルが主役を降板するかもしれない噂とも関連するが、次回作で続きを描くのなら
ダニエル=ボンドで引き続き第5作を期待したいところだ。
ボンドガールが2作品に連続して登場するいうのも過去には例がないが、
ダニエル作品では違うティストを付加してくるので再登板もあり?なのかな。
でも可能性としては限りなく低いだろう。
いち007シリーズのファンとしては、エンドクレジットの
「JAMES BOND WILL RETURN」
を楽しみに待ちたい。

それから、ダニエル作品の中では、過去作品へのオマージュと思われるものでは、
第2作の美女の死体がベッドの上にあるシーンを真っ先に思い出す。「ゴールドフィンガー」だ。
本作品には初代ボンドからシリーズを楽しまれた方なら、過去作品の「あのシーンにそっくり」と
思われる仕掛けが結構ある。ヒントは「ロシアより愛をこめて」です。
お楽しみください。
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<追記12.12>記事の一部を追加・修正しました。




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by capricciosam | 2015-12-06 21:27 | 映画 | Comments(0)


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