庄司紗矢香無伴奏ヴァイオリン・リサイタル@北広島市花ホール2016

【プログラム】

1 J.S.バッハ 幻想曲とフーガ ト短調(J-F.ヌーブルジェ編)
2 バルトーク 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
3 細川俊夫 ヴァイオリン独奏のための「Exstasis」(脱自)2016  日本初演
4 J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調

庄司紗矢香さんの演奏を聴くのはパガニーニ国際コンクール優勝まもない2001年に
ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィル演奏会において
チャイコフスキーの協奏曲を聴いて以来。15年ぶりということになる。
あの時は少女の面影を感じさせるのに芯のある力強い演奏で、
さすがメジャーデビューしただけのことはあるな、と感心したものだ。
ようやく再び聴くチャンスが巡ってきたら、なんと無伴奏演奏会とは。
彼女の成長ぶりを実感できる絶好の機会となった。

「無伴奏」というのは演奏者の力量がステージ上ですべてさらけ出されるだけに
プロにとってはそうそう安易に取り組めるものではないだろうし、取り組む以上は、
演奏者の自信や意欲は並々ならぬものがあるのではないか、と勝手に解釈している。
例外的に多いピアノは別として、振り返ってみてもせいぜいチェロ、ギターぐらいか。
ヴァイオリンはピアノとのソナタは結構聴いたが、アンコールで演奏された場合を除けば
無伴奏作品だけの演奏会は今回が初めてだった。

2はJ.S.バッハ以来のヴァイオリン・ソナタの傑作と言われながら、
ヴァイオリンという楽器の特性を無視して作られた側面があるせいか難曲と言われている。
緊張感を貫きつつ千変万化する音を一心不乱に紡ぐ彼女の「ど迫力」に圧倒されて
身じろぎもせずに聴き入ってしまった。名手ならではの名演と言っても過言ではない。
もうこれだけでも今夜足を運んだ甲斐があったというものだが、休憩後も凄かった。

3は彼女のために作曲された作品。

「ヴァイオリンを独奏する庄司紗矢香の姿は、私にとって「巫女」である。
彼女はヴァイオリンという楽器を自らの内なる声(うた)の延長とし、彼女の
内と外に流れる壮大な宇宙のエネルギーと一体化しようとし、うたう。」
(以上、配布されたパンフレットに掲載された細川俊夫の言葉より引用)

イメージされたのが「巫女」という例えには驚いたが、一心不乱に演奏に打ち込む
彼女の姿からは、なるほどそんな風にもとれるなと思った。
作品自体も技巧を凝らした不思議な作品だった。イントロは尺八でも鳴っているのか、
と思ったくらいで、ヴァイオリンでこんな音まで出せるのか、と驚きの連続だった。
苦手な現代音楽ではあるが、飽きずに聴かせられたのは彼女の力量の賜だろう。
興味深い作品だった。

最後に4が演奏されたが、当夜はこの有名曲目当ての方も多かったのではなかろうか。
(正直に言いますが、小生はそのひとりです、ハイ。)
なにしろ名手の手による「シャコンヌ」である。期待するなというのが無理というもの。

3の後なのに、休憩もほとんど取らずにステージに登場すると、
なんと譜面台を横にどけて一見無造作に暗譜で弾き始めた。
しかもいささかの迷いや弛緩もなく曲は進む。
「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」
楽章間はほとんど間を置かずに次々と弾いていき、「ジーグ」から
さらに短い一瞬の間をとり、「シャコンヌ」へ。
作品の持つ精神的な深さと同時に「祈り」さえも感じられたが、
彼女の「巫女」としての機能が見事に開花していたからではないか。名演。

終曲まで客席からは不快な異音も目立たず、最後まで期待できるかなと思ったら、
やはりというか、無粋なフライング拍手があり、ぶちこわし(怒)。
あの時ほとんど音は消えかかっていたが、まだ弓がヴァイオリンに触れていたし、
彼女は腕を下ろしきっていなかった。ということは演奏は続いているということだ。
熱烈な拍手よりも自らの内に深い感動が満たされることを確認してからの拍手で
遅すぎることはない。演奏を終えた後の貴重な無音の時間が聴く者の仕上げに
欠かせなかったのに、あの暴力的なフライング拍手で台無しにされたのは残念だった。
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<追記6.2>一部加筆、修正しました。
<追記6.21>
今日は夏至。今年もまだ半ばを過ぎた訳ではないのに気が早い話だとは思うが、
今年を回顧した時に強い印象を与えた演奏会として思い返すことは間違いない。
それほど強烈な衝撃だった。全国でも同じ思いをしている人も少なからずいたのではないか
と想像するが、記憶が風化しないうちに備忘録として今回の全国公演の日程を記しておきたい。

5/26(木)北海道 美深町文化会館COM100
5/27(金)埼玉県 川口市総合文化センターりりあ
5/29(日)神奈川県 神奈川県立音楽堂
5/31(火)北海道 北広島市芸術文化ホール
6/1 (水)愛知県 名古屋電気文化会館
6/4 (土)広島県 広島市JMSアステールプラザ
6/5 (日)島根県 松江市総合文化センター
6/7 (火)東京都 紀尾井ホール



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by capricciosam | 2016-06-01 00:28 | 音楽 | Comments(0)


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