内田光子withマーラー・チェンバー・オーケストラⅠ&Ⅱ@Kitara2016

10月28日【プログラムB】

1 モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番ト長調
2 バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント
3 モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番ハ長調
e シューマン作曲:謝肉祭「4つの音符による面白い情景」 作品9より 「告白」

10月30日【プログラムA】

1 モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番ヘ長調
2 武満徹:弦楽のためのレクイエム
3 モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 
e モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330より 第2楽章


モーツァルトのピアノ協奏曲を2晩で一挙に4曲。しかも、内田光子さんで。
近年海外オーケストラ公演が激減している札幌では願ってもない演奏会だ。

共演するマーラー・チェンバー・オーケストラ(以下「MCO」という。)は設立されて
19年目の若い室内管弦楽団であるため、歴史ある有名海外オケに比べると
一般的なネームバリューとしては期待できないだろう。しかし、クラウデオ・アバドが
設立に関わり、最近までダニエル・ハーディングが指導し、現在は内田さんや
イザベル・ファウストが友好的な関係を保っているオケとなれば、相当の水準なのだろう
と想像を巡らすことはそんなに難しいことではない。
今回のジャパンツアーでは札幌、東京、大阪、豊田の4都市だけで、室内楽含め3公演が
あるのは東京と札幌のみ。室内楽を除く2回のオーケストラ公演(10/28・10/30)に
足を運んだが、演奏会自体は期待以上で満足度は高い。

内田さんのモーツァルトは期待していた以上に絶品。所有するCDで漫然と聴いていた
各作品を、実はこうなのよ、とポンと見事に提示されたような納得感がある。
また、内田さんのモーツァルトを有名にしたテイト&ECO盤との違いには驚くばかりで
約30年経っても今なお内田さんは進化している証なのだろう。
例えば第20番のぐっとテンポを落とした冒頭からこの名作の緊迫感がひしひしと迫る。
曲を進めてもテンポを落としつつ、細部に抉りをきかせて表現の彫りを深めるかの様は
「進化」というより「深化」というのがふさわしいように感じた。
内田さんならではの説得力に溢れていた。

またMCOの高水準ぶりには驚いた。特に弦楽パートの表現力の高さには驚いた。
バルトークの作品は「ディヴェルティメント」という標題から連想される明るく、愉快な趣
とは無縁で、むしろ暗く陰のある響きが分奏や全奏で激しいリズムを伴って飛び交う。
指揮者なしでいささかの乱れもなく弾き通したが、ブラボーがあちこちから飛んだ。
恐らくこの作品については小生同様期待以上と感じた方が多かったのではないか。
1日目でバルトークを聴いた後なので、2日目の武満への期待も高まるのは当然だった。
浮かんでは消えていく響きの連なりを、案の定見事に演奏していた。
この若いオーケストラの演奏を他作品でも聴きたいものだという気持ちになったが、
今回が一期一会的な演奏会だったのかもしれない、という気持ちも浮かんだのだった。

本公演は《Kitaraワールドオーケストラシリーズ》の一環で開催されており、
チケットも国内オケより高めの設定。だからという訳ではないのだろうが、
10/28公演は空席がとても目立ち、極端な例えだが、一部の人しか入れないリハーサル見学に
近い状態だった。もちろん前売りが開始されてからのプログラムの入替という想定外の事態や
平日の夜公演、そして何よりも興行であるという点は割り引いたにせよ、それでもなお
主催者側には空席を少なくするようもっと手を尽くしてもらいたかったという思いは残る。
あれだけの秀演を展開した演奏者への主催者としてのリスペクトにもならなかったのではないか。
結果論だが、まあまあの入りだった2回目公演の空席状況と31日室内楽公演(未聴)の完売を
併せると、オーケストラ公演は1回公演ならそれほど空席は目立たなかったのかもしれない、
というあまり望ましくない方向性になるのかな、残念ながら。

海外オーケストラの2回公演で思い出すのはジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団
によるブラームス交響曲全曲演奏会
。これも《Kitaraワールドオーケストラシリーズ》の一環
だったが、空席が目立った。好企画だったと思うのだが、今回と併せて考えると札幌における
厳しい側面が浮き彫りにされたような思いも浮かぶ。
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by capricciosam | 2016-10-29 23:58 | 音楽 | Comments(0)


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