茶碗の中の宇宙@東京国立近代美術館2017

東京国立博物館での「茶の湯」展とほぼ同時期に東京国立近代美術館で開催されて
いるのが、千利休が愛した楽茶碗を創始した楽家代々の作品が一堂に展示されて
いる本展。共通チケットを購入することで片道約30分の無料シャトルバスが利用
できたが、これは便利だった。ただし、1台でピストン運行しているようなので、
それぞれの館での発着時間が決まっている点には注意が必要。

「楽焼は、一般的に電動轆轤や足で蹴って回す蹴轆轤を使用せず
手とへらだけで成形する「手捏ね」と呼ばれる方法で成形した後、
750℃ - 1,100℃で焼成した軟質施釉陶器である。
また、楽茶碗などとも呼ばれる。狭義には樂家の歴代当主が作製した作品や
樂家の手法を得た金沢の大樋焼が含まれる。 広義には同様の手法を用いて作製した
陶磁器全体を指す。千利休らの嗜好を反映した、手捏ねによるわずかな歪みと厚みの
ある形状が特徴である。茶碗や花入、水指、香炉など茶道具として使用される。」
(Wikipediaより引用)

会場に入ると初代長次郎が制作した「二彩獅子」が出迎えてくれる。
まるで飛びかからんばかりの、威嚇するかのような動きに満ちた激しさに
圧倒される。楽茶碗の質素な静的な佇まいとの落差には唖然としたが、
初代のそもそもの素質の一端というか、変容ぶりを認識させる手段だったのか。

すぐに展示されていく初代からの楽家の代々の作品には、初代長次郎に代表される
質素な重厚感は代々引き継がれているものの、結構自由な造形を試みていたことが
わかり、これは意外だった。伝統と創意の間での葛藤とも言えよう。
三代道入の黒楽や赤楽に色や紋様で意匠性を打ち出した作品。
九代了入の荒々しく削ることで、まるで彫刻のような効果がある作品。
十四代覚入の色やデザインを自由にした意匠性の強い作品。

そして、現在の十五代吉左衛門へと至るのだが、初代からの一連の作品を展示する場
では感じなかった十五代のアヴァンギャルドな試みは別室の「吉左衛門の世界」で
感じることになる。十四代で拡張された表現をさらに一歩も、二歩も進めた試みが
茶碗にもたらす効果には目を見張るものがある。
しかし、一方で茶碗としての実用性からは離れ、単なる展示品に向かおうとしている
のではないか、との疑問も湧いた。
あのゆがんだ形で手になじむのだろうか。口をつけて飲めるのだろうか。
また、初代の創始した黒楽茶碗に代表される主張を抑えた静謐さとは対極にあるかの
ように作品の主張が強い分、茶の湯の道具としての一体感を喪失してしまいかねない
のではないか、とも感じられた。

琳派の本阿弥光悦や尾形乾山の茶碗や俵屋宗達、尾形光琳の絵も参考出品されていたが、
やはり本阿弥光悦にはただならぬ才能の輝きが感じられる。
古くて新しい、とはまさしく光悦のためにある言葉のようだ。


c0007388_09304073.jpg



[PR]
by capricciosam | 2017-05-11 23:30 | 展覧会 | Comments(0)


<< 「バベルの塔」展プレ・コンサー... 特別展「茶の湯」@東京国立博物... >>