人気ブログランキング | 話題のタグを見る

収穫

秋の澄み渡る青空を見ると、夏の暑さから逃れて安堵した
ためか、その空気の爽やかさのせいなのかは不明だが、
思わず内面の緊張が緩み、一息ついてしまう。
まるで、登山をして途中の何合目かで休憩をとって、遠くの
山々や麓を見渡すがごとく、一息ついて周囲やこれまでの
登ってきた道を振り返ってしまうのだ。
人生を四季で例えると、シニア世代は秋から冬にさしかかろう、
とするようなものか。来し方を思い、行く末にも思いをめぐらす。
そんなわけでもあるまいが、秋は一層メランコリックな気分に
陥りやすくなるような気もする。

そんな時に聴くラフマニノフはこの気分にピッタリどころか、
それを増幅してくれるのかもしれない。
その憧憬を含んだ甘美な抒情の大きな大きなうねりに身を
まかせていれば、忘我に陥り、現のあらゆることが見事に
消え去っていく。
甘美なときの訪れ。

昨夜の札響第481回定期演奏会でのラフマニノフ交響曲第2番
はまさにそんなひとときだった。
暗譜で通した尾高忠明音楽監督の棒は確信を持って、第一楽章
からオケを強力にひっぱるが、強引というのではなく、全身を使って
各パートを曲の流れにのせていく、とでも言えば良いのだろうか。
まさしく指揮者とオケが一体となってこの大曲の情感にあふれた
奔流を成していた、と言っても良いだろう。
低弦を中心に増強した弦も健闘していたが、いつもは少々
危なっかしい管も適度なバランスを保ってこの曲の情感の表出に
貢献していた。特に、第三楽章の出来はクラリネットの出来に期待
大なのだが、昨夜は他の楽章も含めてよく健闘していたと思う。
ますます脂がのってきた尾高・札響。
このコンビの好調ぶりが端的に聴き取れたこの一曲でも十分なのに、
アンコールは同じくラフマニノフのヴォカリーズ。
もう、メロメロです。とどめを刺されました。まいったなぁ~。
演奏会終了後、会場を去る雑踏でラフマニノフのメロディを
ハミングしている人が少なからずいたのですが、皆さん、
やはりお好きのようですね。

今夜のもう一曲はエルガーのチェロ協奏曲。
イッサーリスの超絶技巧には感嘆したものの、少々足早に行って
しまった感じ。もう少したっぷりと歌ってほしかった気も。
アンコールの鳥の歌のしみじみとした味わいが印象深い。
ところで、エルガーのこの曲は以前尾高・札響のコンビで
聴いているが、その時はR・コーエン。これもうまかった。
いくらお国ものとは言え、英国には凄いのがいるなぁ。

秋は収穫の季節でもある。
昨夜は稔り多き収穫、と言っても過言ではない一夜だった。

写真はラフマニノフ2番のノーカット演奏の先駆けプレヴィンのCD
収穫_c0007388_13372547.jpg

by capricciosam | 2005-09-24 13:52 | 音楽


<< ドライブ日和 まねてみる >>