半落ち@文春文庫

記録的な暖かさがまだ続きそうですが、寒くなって慌てるよりは、
と思い立って、昨日冬タイヤへの交換を済ませました。
そのせいでもないのでしょうが、昨夜は早々と就寝したので
早朝更新です。

数年前、直木賞候補になりながら、小説の前提にクレームが
つけられて酷評されたことから、著者が直木賞決別宣言をして
話題になりました。それ以来気になる作品でしたが、映画も
観ていないので、この度文庫化されたことで読んでみました。

急性骨髄性白血病、アルツハイマー病、妻殺し、新宿歌舞伎町、
ドナー登録、幸若舞敦盛といったキーワードを散りばめながら、
殺人から自首するまでの2日間の犯人の行動の謎を解こう
とするものです。

犯人の口からはほとんど語らせずに、犯人が逮捕されてから
取り調べを受けて起訴、服役という一連の課程で関係する人間
の目を通じて、リレー式に話を紡いでいく構成は斬新でした。
これに「組織」対「人」、「組織」対「組織」の軋轢が加わって厚み
がつき、なかなか読ませます。最後に謎は解けたようにはなる
のですが、著者は犯人の口からはとうとう明確に語らせません。
限りなく強い推定で物語りは終わります。

犯人が警察という権力機構に「ホントにこんな善良な人がいられる
のか」と思わせるくらい現実味が薄いことと、「澄んだ目」としか
語られない造形の浅さからくる魅力のなさ、動機の解明がいまいち
隔靴掻痒気味な点は不満を覚えましたが、全体の構成力の確かさ
は著者の力量を感じさせるし、意外性もあり、推理小説、娯楽小説
としてもいい線を行っていると思いました。
それ故、ミステリーの設定そのものに難癖をつけられて、直木賞
受賞を逃したことも、委員の錯誤による疑いが強いため、なんとも
腑に落ちない話だなぁ、と改めて感じました。

余談ですが、

<人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻のごとくなり。
  一度生を受け、滅せぬもののあるべきか>

犯人が殺人後の2日間を強く黙秘する動機の象徴として使われる
「人間五十年」もシニア間近になると、それもあり得るなぁ、と共感を
覚えるものがあります。歳なんですねぇ。

★その難癖がどういうものか、はこちらをご覧ください。

★またこちらも参考になると思います。
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by capricciosam | 2005-11-04 07:13 | 読書 | Comments(4)
Commented by 周淳 at 2005-11-04 21:31 x
こんばんわ。TBありがとうございます!

この作品で、直木賞の騒動が話題だ話題だって話題になっていましたが、僕はその騒動を全く知らなかったんですね。
だから今回、この記事や、リンクの記事を見て詳しく知ることができました。

なんだか、誤認して酷評してって最低の評議委員ですね。
同じ小説家ともあろうものが、しかもネタまでばらしてしまうなんてひどいと思いましたよ。

僕はこの作品、capricciosamさんと同じく充分楽しめましたよ。
Commented by capricciosam at 2005-11-04 23:04
>周淳さん、コメントありがとうございます。
>なんだか、誤認して酷評してって最低の評議委員ですね
私も詳しい経過は知らなかったので、今回読んだついでに調べた程度
なのですが、受賞を逃したことが選考委員の事実誤認による不作為
としても、林某委員の態度は参考サイトを読む限り疑問ですね。

Commented by そら at 2005-11-07 08:31 x
TBありがとうございました。
この作品、私はとても感動しました。
この作品にはそういうことがあったんだ。。。横山さん、怒るの当然だな~と思いました。
人間としてどうあるべきか、一面だけを信じてむやみな批判をしていないか、考えさせられてしまいました。
また、寄らせていただきます。
Commented by capricciosam at 2005-11-07 19:11
>そら さん、コメントありがとうございます。
>一面だけを信じてむやみな批判をしていないか
おっしゃるとおりで、日々反省です。しかし、半落ちをめぐる直木賞選考のトラブルは、なんともお粗末な印象を受けました。結構注目している賞だけに残念な感じを受けました。


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