今日は武満徹が亡くなって10年目にあたりますが、
ちょっと変わった体験をしたことを思い出しています。 亡くなって5年目の2月22日のことです。 この時東京に出張していて、偶然変わった演奏会に出会いました。 東京オペラシティコンサートホールを使った没後5年企画の一環で、 ちょうどその日は講演と演奏が組み合わされていました。 題して「音と言葉」 最初の講演は大江健三郎によるもので、1960年代に数年間 お互い近所で暮らしていた時があり、大雪のエピソードをイントロに、 武満の初演にほぼ立ち会いながら、演奏会後はすぐに帰宅して、 さきほどの作品をひとり振り返っていたこと、これを「独座観念」と 称していたこと、それは桜田門外の変で死亡した井伊直弼に 由来すること等が話されていきました。 話の展開はなかなかおもしろかったように記憶しているのですが、 次第に観念的、抽象的である部分が多くなるにつれ、頭がついて いけなくなり、詳細まで記憶に残った訳ではありませんでした。 でも、その中で取り上げていた<elaboration>は心に残りました。 elaboration ①骨を折って作る、(完成への)苦心、丹精 ②苦心の大作 つまり、武満徹ほど、その作品、思想、人間そのものを徹底して エラボレイトして生きた人はいなかったし、その結果として 広く愛されながら決して通俗化せずに、社会的には独立している 生き方を貫けた、と大江氏は結論づけているのでした。 後日、本講演がまとまって雑誌「すばる」に掲載されているのを偶然見つけ、 さっそく買って読みましたが、印象としてはおおむね間違って いなかったようで安心しました。 後半、演奏されたのは「蝕(エクリプス)」「海へⅢ」「スタンザⅡ」 「そして、それが風であることを知った」の4曲でした。 「弦楽のためのレクイエム」のように、一聴してすぐに心が曲に シンクロするがごときことはなく、実に淡々と終わってしまった、 という印象しかありません。 結局、後々「言葉」が記憶に残った不思議な「演奏会」でした。 ■当時命日に尾高忠明/新日本フィルがコンサートを開いていました。 フルートにエミリー・バイノンが加わっていましたが、指揮者、 ソリスト、演奏曲もよく見れば、2/24、25の札響 定期演奏会 とほぼ同じ。当時聞けなかったので、チャンスかも。
by capricciosam
| 2006-02-20 23:27
| 音楽
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