先日記した没後5年特別企画「夢窓」の命日当日に行われた
「武満徹の管弦楽-1980s」と題する演奏会は下記のような プログラムでした。 指揮:尾高忠明★ ヴィオラ:今井信子 フルート:エミリー・バイノン★ オーケストラ:新日本フィル 曲:弦楽オーケストラのための<死と再生> ウォーター・ドリーミング★ トィル・バイ・トワイライト★ ア・ストリング・アラウンド・オータム★ 波の盆~オーケストラのための★ この演奏会は聴くことはできなかったのですが、★印のついた 部分は今回の札響定期とまったく同じです。 その上、札響もオール武満プロは定期としては30年ぶりらしい、 となれば、今回を逃すとちょいと後悔するかもなぁ、と思い至り、 なんとか仕事をがんばって時間を作って出かけてきました。 二日目昼公演の当日券でしたが、入りは7割くらいかな。 「弦楽のためのレクイエム」以外は聴いたこともない曲ばかりです。 今回のプログラムも、大江氏の言葉にあったエラボレイトを 積み重ねていった武満の作品が「弦楽のためのレクイエム」から 年代順に演奏されていったように思います。 いずれの作品も武満らしい「響き」と「うねり」が作り出す「静謐さ」 「浮遊感」「無限性」を感じさせてくれます。 「ア・ストリング・アラウンド・オータム」は独奏ビオラの落ち着いた響き が秋にふさわしい。ただ聴いていた3階席では少々音量が不足気味 だったような感じもしました。これはビオラという楽器の特性のせい? 「ウォーター・ドリーミング」の無限に連環するがごとき様はフルートの 甘美な響きによって浮かんでは消えていく色彩や、時には「歌」も 感じさせてくれました。 誤解を恐れずに言えば武満徹の作り出した曲には「響き」やその 連なりとしての「うねり」はあれど、「歌」や「抒情」なんてある訳ない、 なんて勝手に誤解していたようです。 それを見事に証明してくれたのが最後に演奏された 「波の盆~オーケストラのための」です。 この作品には武満自身が内面に秘めていた見事なまでの 「歌」が奔流となって表出されくるのです。これには驚きました。 いただいたパンフの札響団員の方の話にも演奏しながら泣く奏者 がたくさんいる、との話を見つけ、首肯できる話だなぁ、と思いました。 この曲はもっと知られて良い曲だ、と思います。 アイブスの「宵闇のセントラルパーク」に似たところもチョイあります。 今回の体験で武満徹に抱いていた考え(先入観)が少し変わった ようです。先日のペレーニもそうでしたが、 「食わず嫌いはあきません」を実感しています。 札響もよく健闘して武満トーンを表現していた、と思いましたが、 音に集中するあまり、音量が不足気味だったのではないか、とも 感じました。あの集中力で、もう少しボリュームがあれば、きっと 鳥肌モノだったのではないか、と改めて思います。 しかし、曲ごとにステージ上での転換がめまぐるしかったので、 大変だったでしょうが、見ている分にはおもしろかったです。(^^) さすが定期らしく、フライング拍手、フライングブラボーもなく、 快適でした。でも、弱音やデミニュエンド気味に終わろう、という時に 咳が何回か飛び出したのは残念。録音して放送されるだけに、 せめて口をハンカチで押さえてくれればなぁ。
by capricciosam
| 2006-02-26 09:08
| 音楽
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