流星ワゴン@講談社文庫

ここでは3組の父子関係が時間や空間を自由に行き来
しながら、縦横に描かれていく。そこに著者はリストラ、
不倫、いじめ、ひきこもり、DVという現代的問題を
取り上げるのだが、ここまでだったらきっと類書が
あるに違いない、と考えてしまう。
ところが、著者は自分と同年齢の父や「幽霊」という
意外なキャラクターを与えて、読む者を幻惑させつつ、
術中にはめていく。頭の中で整理できた頃には
読むのを止められなくなっている、という訳だ。
そう、私もまんまと、はまってしまいました。
読後、妙にしんみりとしたのは、自分も親になった証
なのだろうか。それとも、変えることなどできない
「過去」に対して「未来」は変えられる可能性があるんだ、
という作者の示唆のなせる技なのだろうか。
重いテーマなのに妙に明るい希望を抱いてしまう、
という不思議な余韻が残るためなのだろうか。

この度文庫化されたのを契機に読んでみたが、
本文も読ませるが、解説(斎藤美奈子)も興味深かった。
母との描写を描くことで小説の厚みを得ることよりも、
むしろ父子関係に絞って物語を紡いだことで、逆に
この小説が輝いているのではないか、との指摘には
頷けるものがある。
過去にある雑誌の年間ベスト1に選出されたのは、
宜なるかな、と思う。
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by capricciosam | 2006-04-03 23:18 | 読書 | Comments(0)


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