彼の目は

■ 見開かれ、決して笑っていなかった

   「みいってしまった」にあてる字はどれだろうか。
   「見入ってしまった」か、「魅入ってしまった」か。
   
   入浴前にぼんやりTVをながめていたら、白髪まじりのヒゲを
   はやした険しい顔をした男がなにか講演をしていた。
   なんだろう?
   最初は胡散臭いオヤジが何いってんの、てな感じしか
   抱かなかったが、ものの一分もたたないちに
   真剣にみている自分がいた。
   
   「夜回り先生」 彼はそう呼ばれていた。
   夜間高校の教師をつとめながら、夜の盛り場に居場所を
   求めるティーンエージャーを救おうと孤軍奮闘してきた
   活動を描いていた。
   彼の活動は想像を絶するくらいの「薬物」汚染との戦い。
   正直、自分でも十代の若者がこんなにも汚染されているとは、
   想像もできなかった。
   番組の最後の方で彼が涙を頬に伝わらせながら話していた
   薬物により死に至った少女のエピソードは悲惨すぎた。
   わずか15歳で薬物のために大脳皮質が溶けて80歳相当の
   脳になってしまい、性的感染症で死に至った。 
   画面の学生らしき聴衆も彼の話に涙を流していた。
   私も胸ぐらを捕まれてぐらぐら大きく揺さぶられたようだった。
   しかし、彼の目は見開かれていた。
   現実に涙しながらも、その現実を直視していた。
   
   夜の世界で僕は何万人かの彼らを支えるけれど、親は
   どうか彼らをその夜の世界に送らないようにしてもらいたい、
   という彼の言葉はとてつもない重みを持っていた。
   
   彼はリンパ腫に犯されていて教職を辞した。
   
   

  
   
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by capricciosam | 2005-01-22 00:24 | 時の移ろい | Comments(0)


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