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ゲルギエフ&PMFオーケストラ@PMF2006

「 毎年異なったメンバーで、しかも短期間に音作りをしていかねば
 ならない、というハンディを背負いながら、その時時の指揮者の下、
醸し出す音に酔いしれることができたなら、これはこれで十分なる
醍醐味を味わえた、と言わねばならないだろう。」

実は、これは一年前にPMFオーケストラ(「PMFオケ」と略します)を
聴いたあとに書いた感想の一部です。今夜の演奏会を終えても、
PMFオケはやはりこれにつきるなぁ、という思いです。
一定の技術がある若者がプロフェッショナルの薫陶を得て、
ひとつのオーケストラとしてどのような響きを形成していくのかは、
まるで「酒の仕込み」のようだなぁと思います。
3人の異なる指揮者によるPMFオケ演奏会は、ちょうど熟成の過程を
味わうようなものなのでしょう。
そして、今夜、ついに仕上がった今年の新酒が味わえるというものです。
さて、新酒の出来や如何。

一曲目はモーツァルト/ファゴット協奏曲。
「えっ、ゲルギエフとモーツァルト」
ミスマッチを心配しましたが、さすがゲルギエフです。
編成を小さくしたPMFオケを無難にコントロールしていました。
それでも、オケの響きはやはり若々しく、ゲルギエフが
押さえ気味にしても、いきおいのよさが自然に露出してきます。
ソリストのD・マツカワは過去にPMF生として3年連続出場している
ようなのですが、残念ながら未聴。D・マツカワは、ファゴツト特有の
のどかな音色が曲の明るい雰囲気とおもしろい効果を発揮している
この曲を確かな技巧で表現していました。

二曲目はストラヴィンスキー/ペトルーシュカ(1947年版)。
公演パンフにはゲルギエフが「純ロシア的に、原色的効果を発揮
させて表現するのが自分の考えだ」と発言したことが紹介されています。
でも、実際聴いてみても、それほど原色的効果がある、というような
感じはしませんでした。やはり手勢のオケではないからなのでしょうか。
しかし、それを抜きにしても今夜の出来としては、管弦のバランスも良く、
この曲が一番完成度が高かったように思いました。
特に、ゲルギエフが演奏終了後直ちに起立させていた首席トランペット
の活躍は光っていました。何年か前の南米出身のホルン奏者の活躍
と重なりました。

休憩後の三曲目はチャイコフスキー交響曲第五番。
この曲では指揮者の譜面台を撤去してまさしく「完全暗譜」です。
さすが、「自家薬籠中の一曲」なだけあって、ゲルギエフは指揮する
スペース(今夜は指揮台なしでした。1月のマリンスキー歌劇場管と同じです)
を目一杯使い、PMFオケを自在にコントロールして、この曲の暗鬱な
気分から高揚した気分までの振幅のゆれを圧倒的なスケールで
描いていました。さすがです。
ただ、ひとつ付け加えれば、管弦のバランスの悪さが気になったことです。
分厚い弦(例えばコントラバスだけで10本!)に比べ、管のボリューム
自体がほぼ基本どおりなので、管弦の合奏では管が埋もれがちな
点でした。なにしろゲルギエフは強奏でも手加減しません。
まあ、PMF生をひとりでも多く演奏させようとすれば、これも
しかたがないのかな、とは思うのですが、ちょいと無理を感じました。

明日のピクニックコンサートを終えて、大阪、名古屋、東京と巡演する
ようですが、今夜の演奏を聴く限りでは、アクシデントがなければ、
回を重ねるごとに新酒の「熟成」も進み、より「旨口」になりそうです。
鳴り止まぬ盛大な拍手に何度もゲルギエフがステージに立ち、
最後はコンサートミストレスの手を引いてようやくお開きとなりました。

余談ですが、今日は会場にカメラ(NHKのハイビジョンやHTB)が
有人無人併せて8台と、これまで見た収録では過去最高の台数が
投入されていました。後日放送されるようです。
余談の余談です。今夜のゲルギエフは指揮棒なしでした。(笑)
ゲルギエフ&PMFオーケストラ@PMF2006_c0007388_154464.jpg

by capricciosam | 2006-07-29 23:43 | 音楽


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