007カジノ・ロワイヤル@映画リメイク

好調なシリーズものが、途中で誕生時のエピソードに戻るのは、最近では
「スター・ウォーズ・エピソードⅠ」「バットマン・ビキンズ」にもみられる。
007シリーズも21作目にあって「原点回帰」らしい。
と、いうのも原作者のイアン・フレミングがジェームズ・ボンドをはじめて
登場させたのが「カジノ・ロワイヤル」。
これはシリーズ番外編のパロディ版としてとうの昔に映画化されていた
のは有名な話。版権の関係らしいが、結局全てソニー傘下に収まった
ことで今回のリメイク(と言ってもよいのかな)が実現したようだ。
まあ、その分vaioはじめソニー製品もよく出てくるのだが…。

今回再映画化されたものを観るに当たっては一度原作に
当たっておくのも悪くはないな、と思い読んでみた。
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基本的な構造の核になるル・シッフルとの対決は活かしては
あるものの、冷戦構造でのフランス共産党員の使い込みが
現代のテロリト支援組織の使い込みに置き換えられており、
その辺はうまく時代に合致させて違和感なく観ることができる。
ストーリーもほぼ活かされていた。

<以下はネタバレ的内容です、ご注意ください>

今作は「若きジェームズ・ボンドが007になるまでの物語」と
宣伝されているが、冒頭からダブル・オー資格を満たしている
ことがわかる。しかし、宣伝で言いたかったのは、真の意味
でのダブル・オーらしさを獲得するに至る、という意味なのだろう。
だからなのか、ボンドの洗練されたクールな面よりも、むしろ
直線的で、荒削りな面を強調していく。なにしろ、ボンドには欠かせない
マティーニさえもシェイクかステーかに、こだわっていない。
これ故に、起用に否定的意見のあった精悍なダニエル・クレイグの
風貌は逆にふさわしいのかもしれない。
また年齢と鍛え上げられた肉体故かアクションシーンもOKだが、
カジノの場面やヴェスパー・リンドとの感情のやりとり等の静的演技も
なかなかなものだった。特に、殺人に立ち会ったリンドがショックのあまり
着衣のまましゃがみこんでシャワーを浴びているのを見て、そばに行き、
自分も同じようにしゃがみこんで抱き寄せながら、リンドの血のついた指を
口に含んで血をとってやるシーン等は、シリーズでは異色な場面では
あったが、印象深いものだった。
男としての色気や艶にはやや欠けるものの、ラストまでボンド役としての
違和感を特に感じなかったのは彼の演技力のせいか。

それから、ヴェスパー・リンドのいわゆる「ボンド・ガール」。
ちょっと暴論かもしれないが、これまでのシリーズではほとんどが
ボンドとは「色恋」の関係にはなるのだが、決して「恋愛」には至らない
立場だったと思う。「愛」の不在、といってもよいかもしれない。
唯一「恋愛」する立場で描いてみせたのが「女王陛下の007」だった。
しかし、今回はダブルオーの立場を捨ててまで一緒になろうとしながら、
結局は、スパイものらしく一種の「裏切り」に由来する悲劇的結末に
終わるのだから、なんとも切ない。
それ故、この悲劇を乗り越えたからこそダブルオーとしての
クールさに凄みが増し、決して本気で恋愛に踏み込もうとしない
のだろう、とひとりで合点していた。
ただし、リンドの死に至る原因と方法は原作とは異なる。

またシリーズものなのに、マニー・ペニーやQは出演しない。
これは、ダブルオーとしてのプレ段階という設定だからなのだろうか。
でも、懐かしい1964年製(これはノーマル仕様)や仕掛けのある
最新型のアストン・マーチンは登場する。
しかも、その仕掛けが秘密兵器ではなく、AED(振動除細動機)。
また、原作では使い込みの原因が売春宿への投資失敗だったのが、
今作では株の暴落前の空売りの失敗。
現代への置き換えが実にうまいなぁ、と感心。

ところで、拷問のシーンはほぼ原作に忠実。たたく道具が違うだけ。
男には耐えられない「急所攻め」ということはすぐにわかる。
男が出産の痛みを共有できないのと同様、あの痛みは女性には
想像できないモノでしょう…。

また、蝶ネクタイ姿のボンドが現れ、お決まりのセリフ
「My name is BOND,JAMES BOND」を言うと、すかさず
ボンドのテーマが流れるシーンは、なんとラスト。
ここでダブルオーとしての真の意味でのボンド誕生を観る者に
強く印象づけて終わる。
まさしく「エピソードⅠ」「ビギンズ」の完成であり、シリーズにつながった訳だ。
今回の監督は私の中では評価の低い「ゴールデン・アイ」と同じだったので、
正直期待していなかった。しかし、今作は比べものにならないくらいの
上出来なのは嬉しい誤算だった。これは脚本が良いからなのかな。

次回作は2008年には公開予定らしく、引き続きD・クレイグで
撮るようだが、シリーズの特徴として段々ハデになっていって、
人間ドラマが希薄化しがちな傾向では、この人間ドラマを描いた
今作でいい味をだした彼がどのように演じていくのか、興味のあるところ。
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by capricciosam | 2006-12-04 02:24 | 映画 | Comments(3)
Commented by たいむ at 2006-12-04 18:03 x
TBどうもです
>次回作は2008年には公開予定
ほんとですか~、ロジャー・ムーア以降全然見ていませんでしたが、ダニエルなら次回作を楽しみにしたいですね。
Commented by capricciosam at 2006-12-04 20:58
>たいむ さん、コメントありがとうございます。
>ほんとですか~、
どのHPなのか覚えていないのですが、ネットで次回作については2008年5月に米国公開との情報を見ました。ガセならごめんなさい、です。
Commented at 2006-12-26 06:08 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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