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鈍感力

今朝TVを観ていたら、「鈍感力」が取り上げられていました。
前首相が次のように発言したことを受けてのようです。

「目先のことに鈍感になれ。鈍感力が大事だ(略)」

現首相の支持率低下が依然止まらないことに対しての激励のつもりらしい
のですが、なんとも誤解を生みかねない発言だなぁ、と感じました。
どうも前首相は言葉を単純化して、ぐっとひきつけるのがうまいのですが、
反面、前提や条件等がすっぽりと抜け落ちる傾向も強いですね。
まあ、その辺を気にしないで突き進んできたのでしょうから、
まさしくご自身で「鈍感力」を実践された訳です。
この例でも、「首相たるもの枝葉末節にとらわれることなく、大道を踏み外すな」、
くらいの意味と捕らえるとよいとは思うのですが、それを実践する上では
敏感なくらい様々な事に耳目を集中し、ぎりぎりの判断をした上で、
というのが前提だと思うのです。
この前提なしのリーダーなど、考えたくもありません。
ですから、この意味が履き違えられると、思慮分別のない
単なる「暴走」に陥りかねないのでは、と心配です。
そもそも鈍感な人にはあてはまらない使い方で、敏感な、あるいは
過敏な人にこそ、この言葉が生きてくる、と思うのです。

ところで、この「鈍感力」という耳慣れない言葉は、先ごろ発売された
渡辺淳一氏の著作「鈍感力」のタイトルからのようです。

10数年前に氏の講演会でこの言葉に近いものを聞いたことがあります。
当時、近鉄にいた野茂英雄投手がメジャーで活躍していた頃のことですが、
氏が彼のことを話題にした時のことです。外国という慣れない環境の中で
きちんと成績を残していくためには、些細なことに動じずに実践していくことが
必要で、彼を見ているとそれができているように思う、というのです。
そして、野茂投手を一言つぎのように言い切りました。
「鈍い」
その言葉にびっくりするとともに、
「すごい見立てだなぁ、なるほどなぁ」
と感心したせいか、いまだに印象に残っています。

この「鈍感力」という著作は読んでいませんが、氏が社会を生き抜く上で
必要な力として常々この当たりを考えていたのだなぁ、と改めて思い出しました。
by capricciosam | 2007-02-25 14:25 | 時の移ろい


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