牧野植物図鑑の謎@平凡社新書

見知らぬ草花も名がわからないばかりに「雑草」扱い。

ところが、それらも知られていないだけでほとんどに名がある。
そんな名をつける作業に地道に取り組んだ人たちがいる訳で、
代表的人物としては牧野富太郎(1862-1957)が挙げられる。
彼の為した「牧野日本植物図鑑」は死後も増補改訂されて、
現在も店頭に並んで植物図鑑の定番となっている。

植物図鑑は明治から牧野氏以外の多くの人も取り組んで出版されたが、
そんな黎明期に活躍した一人に村越三千男(1872-1948)がいる。
むしろ一時期は村越の出版した植物図鑑が優勢だったこともあるらしいが、
今ではすっかり歴史の中に埋もれてしまい、彼の図鑑も販売されておらず、
あまつさえ、どんな人であったのかすら杳として知られていない。

著者は、別々の古本屋で偶然手に入れた二人の図鑑の奥付に着目して
両者には苛烈な出版競争があったらしいことを掴むことから、興味を抱いて
コツコツと丁寧に事実関係を探ろうとする。
そして、次の4つの「謎」を骨格として本書を成した。

第一の謎 牧野富太郎と村越三千男の間に何があったのか
第二の謎 植物図鑑は牧野富太郎の発明品か
第三の謎 なぜ明治40年頃に多くの植物図鑑が現れたのか
第四の謎 牧野が「牧野日本植物図鑑」で警告した相手はだれか

歴史上の人物にまつわるミステリーはよくあるが、本書は
①牧野富太郎という天才植物学者の人物像自体、②この4つの謎、
そして③著者のまじめに取り組む姿勢、の三点が相乗効果をもたらし、
軽い知的好奇心と俗物的好奇心の両面を満たすことに成功している。
特に、第三の謎は日本の理科教育の成り立ち的側面の一端を
明らかにしている面もあり、意外な事実に正直驚いた。
また、著者の努力にもかかわらず、村越氏側の親族に接触できず、
情報が圧倒的に不足しがちの中で推論を補強することがかなわなかった
ことは惜しまれるが、ちょっとしたミステリーでおもしろい本でした。
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この本はときどきお邪魔するむぎさんの記事で知りました。
むぎさん、ありがとうございます。
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by capricciosam | 2007-08-05 18:40 | 読書 | Comments(2)
Commented by むぎ at 2007-08-23 10:10 x
「牧野植物図鑑の謎」、読まれたのですね。

サムディさんのおっしゃるとおり、
>村越氏側の親族に接触できず、情報が圧倒的に不足しがちの中で推論を補強することがかなわなかったことは惜しまれ
ますが、それでも最後まで飽きずに読める、面白い本でしたね。

留守の間、TBを止めておりましたが、
帰ってまいりましたので、改めてTBさせていただきます。

それと、もしよろしければ
こちらのブログ、リンクさせていただいてもよろしいでしょうか。
Commented by capricciosam at 2007-08-23 21:38
>むぎさん、TB&コメントありがとうございます。
>最後まで飽きずに読める、面白い本
おっしゃるとおりで、楽しんで読むことができました。ご紹介いただいたことに感謝しております。改めてTBさせていただきます。
>リンクさせていただいてもよろしいでしょうか
こちらこそ、よろしくお願いいたします。


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