飢えちゃいけないという合意

二晩続けてNHKが「日本の農業」を考える特集を放送していた。
最近は何時間も見続ける根気も薄れているので、この手の特集番組は
めったに見ないのだが、一夜目が意外におもしろかったので、続けて観た。

一夜目「地域発!どうする日本」~食を未来につなぐには
二夜目「日本の、これから」~食料輸入大国ニッポンの未来は?

一夜目で印象に残ったのは、厳しいと言われる情勢でもやり方をくふうして
活路を開いている人たちが全国には色々いるんだなぁ、ということ。
群馬県で新規に就農する人たちが増えている地域。
高知県で特産品を活かしてコールセンターまで作ったJA。
これらに共通するのは「村」であること。
条件不利な地域でも、小さくてもやり方次第なんだなぁ、と感心しきりだった。

二夜目はスタジオでの討論であったが、大雑把には消費者VS.農業者。
テーマに沿ってこれもいろいろな事実が示される。
農業を支える生産現場の「農家」の数が減少し、かつ高齢化していること。
そのため、耕作されずに荒れている農地が東京都の2倍に達していること。
農家の生産が採算割れを起こして、農業で生活していくことが難しいこと。
主食の米の消費が毎年減ってきていること。
決定的なのは、食糧自給率が40%を割り、先進国では最低であること。
つまり、海外からの食料輸入が途絶えたら10人中6人は飢えるということ。

二夜目は途中から違和感を感じてしょうがなかった。
「消費者VS.農業者」という二項対立的価値観の主張がぶつかりあうことの
噛み合わせの悪さだった。
「何も無理して国内で高いコストをかけて農業を守らなくても、
海外と友好的な貿易協定を結んで、食料を調達したらいいんだ」
「国土を守ることにも繋がる、もうからない農業をがんばって続けているんだ」
ドライVS.ウェット、とでも言ったらいいのか、議論はいつまでも平行線。
前提となる何かが欠けているような気がしてしょうがない。

国民が飢えないことは国家としての最低限の具備すべき要件であろうし、
これは国民的合意になりうるものだ、と思う。
地球温暖化が進行する中では、今後も異常気象が頻発する可能性が高く、
現在の食料供給国がいつまでも安定的に供給できるという保証はないはず。
とすれば、先の要件を満たすためには、何よりも国内での自給率は高めておく
に越したことはないだろう。ただし、一方では世界の中の一員としての義務として
一定の輸入はやむを得ない。
そして、自給率の源となる農業、即ちそれを支える農家には
十分な所得が確保されるような支援をすべきである。
現在でも多額な税が投入されているが、一律の支援となっていて効果が
現れていない、という多くの指摘に続いて、考え方が正反対の立場にある
二人の大学教授が図らずも一致していたのが、
「やる気のある人たちへの、めりはりのある支援の必要性」だった。
国の何十年にもわたって投入してきた税が効果をあげてこなかったことを
暗に指しているが、それは食糧自給率の低下ひとつとっても明らかなのだろう。

農業には多様な問題があり、多様な解決策があるのだろうが、
「国民が飢えない」という国民的合意の上で、「そのためには」という論議の
進め方の中で方向性が確立されていかなければ、今後も消費者と農業者の
間で噛み合わない、平行線的議論が続くような気がしてしょうがなかった。
その間にも食糧自給率はまちがいなく低下し続けるのだろうが…
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by capricciosam | 2007-10-21 11:29 | 時の移ろい | Comments(2)
Commented by chankin1 at 2007-10-23 13:47
僕は討論部分を少し見て、腹が立ってきたのでチャンネルを変えました。(^_^;)
「売り買い」の行為って、本来お互いの信頼と感謝があって、上手くいくのだと思います。「金を出して買えばいいだろう」と言う考えは、デジタルな考えで、やり取りする行為の中にいろんな感情が入ってくる事を忘れているのでは無いかと危惧します。気候の問題で不作に陥った時ばかりでは無く、いくらお金を積まれても他に仲の良い買い手が困っていればそちらを優先して「売れないよ」と言われたり、他の外交上の理由で「売りたくない」と言われる事もあるわけで、それは外交上ものすごい努力とケアが必要な事だと思います。はっきり言って、今の日本の外交力では出来ないでしょう。
ものが溢れて「お前のところは気に入らないから、他所で買うよ」とか「あんたが買わなくても、他の人が買ってくれるから良い」といった思考方法になってしまった日本では、いろんな想像が出来なくなってしまったようで、腹立たしくも悲しい気持ちになりました。
Commented by capricciosam at 2007-10-24 07:31
>chankin1さん、コメントありがとうございます。
>やり取りする行為の中にいろんな感情が入ってくる
おっしやるとおりで、商取引自体はシンプルな外観ですが、それに至る様々な要因があるということを忘れてはいけないと思います。
>いろんな想像が出来なくなってしまった
確かに、シンプルさというのはわかりやすいようですが、社会はもっと重層的、かつ複雑でしょうから、シンプルすぎる思考で突っ走って、致命的にならなけりゃいいが、と心配。それが食糧となればなおさらです。
不足しているなら、どっかから金積んでもってこい的な発想が支配的になったら、いつか「飢え」が現実のものになりかねないのじゃないか、と。


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