行きずりの街@新潮文庫

リンクさせていただいていた札幌在住8年の作家志水辰夫さんが
11月に京都に引っ越しされた。
(その辺りの事情はリンクの「志水辰夫めもらんだむ」をご覧下さい)
在札中は道民、市民にとって辛辣な提言もあったが、
うなづけるものも多く、短期間との限定付きのようではあったが、
ぜひ定住して健筆をふるっていただきたかったので残念。
最新作は武士モノだったことから、その指向性とも関係ありそうな
今回の古都への引っ越しとなったのだろうか、と勝手に推察している。
しかし、高齢になれば身も心も「安住の地」を求めるのが生理なのだろうが、
あえてその身と心にムチ打って「変化」を求める生き方には感銘を覚えた。

さて、今回取り上げた「行きずりの街」。
1994年文庫で発売された時に読んではいたが、今年帯の惹句を替えて
再度売り出したら、ベストセラーになってしまったという話題の本。
(この辺りの著者のとまどいや面はゆさが札幌の紀伊國屋書店を舞台に
上記HPに残されています)
誤解のないように最初におことわりしておきますが、今回取り上げたのは
「どうせ札幌は行きずりの街なんだ」との揶揄を込めた訳では決してない、
ということです。それどころか、私の中では志水作品の中でも
愛惜能わざる作品なのです。
一度は触れておきたかったので、著者が札幌を離れるという淋しい
機会ではあるが、取り上げてみました。

<ネタバレ的内容を含みますのでご注意ください>

読まれた方も多いでしょうから、キーワードでざっくりと見てみると、
私学、教師、教え子、結婚、スキャンダル、離婚というひとくくりが過去に存在し、
田舎、塾講師、教え子、失踪、上京、捜索、再会というひとくくりが現在進行形で
綴られていく。しかし、捜索=探偵活動となり、そこには過去の殺人が
暴力=血の匂いとともにつきまとう。
以前の作品にも恋愛の要素は多分にあったのだが、ハードボイルドな部分の
印象が強く出ていた。それが本作品では主軸を為すのが「恋愛」であり、
この作品でブレンドの割合が変化したことを知るとともに、
それが調和をとって心地良かった。まさしく「旨い」のだ。
私にはシミタツさんの執筆活動がひとつのピークを迎えつつあることを
知り得たような気分に襲われた忘れがたい作品である。

確かに時代背景はバブル期から崩壊後なので、携帯電話も発達していない。
電話が重要なアイテムとなっており、ケータイが主流となりつつある現代から
見れば、ちょいとズレを感じる部分もないわけではないが、物語の骨格が
しっかりしているから、いささかの揺るぎも感じさせることなく再読できた。
「再読?」
実はそうなんです。昨夜記事を書こうとして、パラパラと読み始めたら
止められなくなり今朝までかかって読んでいました。
やはり、良くできていますよ、この作品は。
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by capricciosam | 2007-11-10 23:31 | 読書 | Comments(0)


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