ウェブ時代をゆく@ちくま新書

著者はあとがきで、前著「ウェブ進化論」と「ウェブ時代をゆく」の関係を
福澤諭吉の「西洋事情」と「学問のすすめ」の対になった関係に準える。
つまり、ウェブ時代の意味を説き明かしてみせたのが前著で、じゃぁ
そんな時代にどう生きていくのか、どんな生き方が可能なのか、を
今回の著書で書いたのだ、と。
確かに、重要な指針となる考えが示されている、と思う。

例えば、羽生名人の示唆した「学習の高速道路化とその先の大渋滞」
ということが前著で書かれたが、「じゃあ、我々はどうしたらいいの?」
という私のような凡人の疑問に対し、著者の回答はまだ抽象的であった。
これに対して、今回著者は数段踏み込んでその考えを明らかにする。
それが「高く険しい道」と「けものみち」という考えである(決して中間はない)。
「なるほどなぁ」と半ば共鳴しつつも、これって前途ある若い人には
いいかもしれないが、人生の大半を浪費したわしらには、ちょっとねぇ…
などと、ついつい思ってしまい、半ばあきらめかけたら、
著者はすかさず次章で「ロールモデル思考法」というのを提示する。

どの道を選ぶかという時の基準は「好き(志向性)」だと著書は言う。
では、その好きをどうやって見つけるのか、という方法がこれなのだ。
「ロールモデル」即ち「お手本」ということだ。お手本とはなんとも陳腐だなぁ、
という印象は読み進むうちに解消される。ひと味違うのだ。
ここだけなら前途短い者でも応用可能かもなぁ、という気にさせられた。

著者が一年間心血を注いだというだけあって、総じて読みやすく、
かつわかりやすい。前著は驚きが主となったが、今回はより有意義な
手応えとでもいうようなものを感じる。
どちらかと言えば前途有為な若者にこそ、得るモノはより大きいかもしれない
という印象を持つが、著者はこうも言ってくれる。少々長いが引用する。

「…リアル世界での日常に余裕の出たシニア層は、ネットで過ごす時間を
増やし、いずれ総表現社会の重要な担い手となると私は確信しているのだが、
(略)シニア層が自らの経験を語ることで、「若者にとってのロールモデル」
たる要素をネット上に溢れさせてほしいと思う。」(P.139)

シニア層全員が「ロールモデル」たり得るとは決して思わないが、シニア層が
これからますます進展するウェブ時代を生きる上での貴重な示唆だと思う。
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<蛇足>
本書の英語タイトルは「Web revolution for the rest of us」だったらしい。
the rest of us、即ち進展するウェブに対応している人たち以外の残りの人たち
に向けて書いた、というのだ。「ウェブというのはすべての人に影響を及ぼす。
そういう人たちがウェブ時代にどう生きていけばよいのか、ということを考えた。」
メイキングとしての興味深い話はこちらをご覧ください。
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by capricciosam | 2007-12-28 23:43 | 読書 | Comments(0)


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