一昨年の定期一覧を眺めていて、
「エリシュカ? Who?」 そんな感じでパスした演奏会が凄い出来だったらしく(ありゃりゃ)、 日も置かずに札響は同団初のポスト「首席客演指揮者」をエリシュカ氏に捧げた。 以来、氏は気になる存在だったが、ようやく就任記念公演が4月定期で行われる ことになり出かけてきた。 12日昼公演で、会場は8割の入り、といったところか。 1曲目ヤナーチェク狂詩曲「タラス・ブリーバ」 初めて聴く曲でしたが、物語が底流にあるためなのか、音色も多彩で、 演奏されるオケにとっては難曲の部類だったのではないか、と推定。 その分、へたすると構成が崩れてしまう恐れも大なのだろうか。 しかし、演奏はエリシュカ氏の棒のもとメリハリが効いて、 なにかしら音が浮き立つような立体感を感じた。 しかし、これだけで約30分。 腕慣らしにしてはヘビーですね。 2曲目モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番 ソリストの伊藤恵さんは、二十数年前「若い芽のコンサート」に出演されて 瑞々しい演奏を披露されていた記憶があり、一度チャンスがあれば実演に 接しておきたいお一人でした。 さて、演奏ですが、第一楽章のソロに入る前の伴奏だけの部分から、 上体を前後左右に揺らしながら曲に没入しようとする姿には驚きました。 それで、この方は少々エキセントリックに弾かれるのかな、と思っていたら、 決してそんなことはありません。 モーツァルトの傑作と呼ばれるこの作品を実に丁寧に弾かれていきます。 誠実な音作り、といったものを感じました。 会場の拍手も盛大でしたが、アンコールはなし。 3曲目ドヴォルザーク交響曲第6番 ドヴォルザークの交響曲の中では、なんともマイナーな選択。 聴いたこともなかったのでCDで予習しましたが、「新世界」などと 比べると、民族的、牧歌的な感じはするものの、どうも冗長な感じも 否めないなぁ、とこの段階では演奏への期待は高まらず。 でも、実際の演奏では、1曲目の「タラス・ブリーバ」でも感じられた 音が浮き立つような立体感がさらに明快になった感じで、 各パートの織りなす音のうねりが実に心地良い。 終わってみれば、「案外いい曲なんだなぁ~」と、見方はガラッと 変わっていたから、びっくりです。 エリシュカさんの見事な手腕に会場からも盛大な拍手が送られた ことは言うまでもありません。 何度も丁寧にお辞儀を繰り返していらっしゃった姿が印象的です。 チェコ・ドヴォルザーク協会会長でいらっしゃるエリシュカさんは、 先日誕生日を迎え、77歳になられたばかり。 しかし、指揮ぶりは実に若々しく、颯爽として年齢を感じさせません。 これからは、年に一回は札響を振られるとのことですが、 ぜひお元気で何度も来札していただきたいものです。 <蛇足> ドヴォルザークの第四楽章では、エリシュカさんが熱演のあまり 指揮棒を飛ばすハプニングが発生。一瞬どうなるのかと思いましたが、 チェロのお二人のリレーで無事エリシュカさんに戻りました。 その間数秒でしたが、もちろん音楽は止まりませんでした。
by capricciosam
| 2008-04-12 21:50
| 音楽
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