朝倉かすみ講演会@石狩市民図書館2008

「小説家になった-石狩から誕生した小説現代新人賞作家」
と題して石狩市民図書館で朝倉かすみさんの講演会が行われた。
出かけたのは昨春の佐々木譲さんに続き2回目である。
場所は同じ視聴覚ホール。
詰めかけた方も多く、あふれた方はホールでライブをご覧になった程。
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登場された朝倉さんは案外小柄な方だったが、
一言で言えば「パワフル」。休憩もとらずにしゃべりっぱなし。
さすが、道新文学賞や小説現代新人賞を連続受賞されて、
波に乗っている旬な方らしい。
(いつもどおり寡聞にして知らない私、トホッ)

最初に時間を割いたのが、詰めかけた聴衆の心に形成された
作家「像」の、いわば否定。
作家とは、いわゆる世間で想像するようなステレオタイプでは
ない、と何度も強調される。この部分の最後におっしゃった
「どんな(作家の)人でも名前にはこだわらないでいただきたい。
中味が大事なんです。」
推測するに、朝倉さんは作家として歩んだ自らの(苦い?)体験を
この言葉に照射されているようにも感じるし、等身大の御自分を
大事にしようとなさっているのかもしれない、あるいは自分に対して
正直であろうとしている方なのかも、などといろいろ考えてしまう。

読書歴はと言えば、バイト時代の一人暮らしの食事から本格化。
一週間バイトしては稼いだ金で古本屋の10円程度の文庫本を
買い込んで、食事の友とした。そして名作を読破。
現代物は某スーパー本部で事務員をやるようになってから。

そして30代初め頃から書き始たが、その動機が
「私は結婚できないかもしれない」と思ったかららしいが、
普通は「資格」に走るのだろうが、朝倉さんは
「小説を書くほうが現実的だった」と考えたらしい。
この辺りの発想が現在に繋がっていくと考えると興味深い。

次々に書けたが、(身近な関係の)誰にも読んではもらいたくない。
でも、ずーっと遠い無関係な人には読んでもらいたい、
という欲求があり、道新文化教室にて藤堂志津子さんを見出した
K氏に習うことになる。
K氏は誉めてくれたが、朝倉さんはなかなか言うことをきかなかった。
30代も終わり頃に結婚するが、その歳の夏にK氏死去。
それがきっかけとなったかのように、その年から書き始める。
でも、一字も通らない。
「わたしスゴイはずなのに~!?」
何一つかなわない年が2~3年続き、ごったになった状態で
書き上げたものが道新文学賞を受賞。
そして全国的な賞を3年以内に獲ると決心して書いていったら、
小説現代新人賞を受賞。

この後は、言わば作家「稼業」の話。
・「本にしてください」とお願いしに、わざわざ東京まで出かけたこと。
・プロモに書店員はあなどれないこと。
・「賞獲ったらまた来てね」(内心「賞獲ってやるよ」と反発したこと)
・サイン本の裏話。
・グラビア撮影の話。
・インタビューを受けていてわかった、某タレントの「別に」と言った気持ち。
・「書評が何本でるか」新聞、TVの他、最近はブログも。etc

どんな業界も、特に内部事情的話は興味深いものですね。
あと、次のようなこともおっしゃっていました。

「体験したから書けるんだろう」
じゃあ自分史は文学になるのか、と言えば文学にはならない。
なぜなら「体験」にとどまっているから。
例えば戦争体験として、戦争というものにアプローチしている、
というのが文学。
その例として挙げられたのが、ピカソのゲルニカ。
ゲルニカを見ることで戦争がわかる、
ピカソは戦争というものにアプローチしている、
戦争をわかろうとしている。

ここのところはスゴク納得した気持ちが湧きました。

高一の時の現国の時のエピソード。
担当教師が教科書の谷川俊太郎の詩を「この詩はよくない」
と言って、「世界へ!」というエッセー(詩?)を紹介したところ、
朝倉さんはなぜか感動して何日も繰り返した。
(実際、当日の会場でも朗々と諳んじられた)
そして、こう続けられた。
「あの時あの言葉を教えてくれなかったら…、と考えたら
学校の先生ってスゴイ!」

授業内容よりも、ちょっとした瑣末な事が意外に心に残る。
これって、その後の生き方への影響度では個人差が激しいとは
思うものの、多くの人にありそうな話ではないでしょうか。

その他にも興味つきない話は多かったですね。
朝倉さんはご自身のブログの前日の記事で、
「8割方、ヨタ話」なんて謙遜して書かれていましたが、
なかなかどうして興味深く、楽しい話でしたね。

<蛇足です>
講演会後のサインを待つ間に会場にいらっしゃった
朝倉さんのお母さん(こりゃまたハツラツとしていて素敵)とも
お話をしたりしたのですが、持っていた「田村はまだか」を
見つけられて、
「田村のお父さん、わかりました?」
と尋ねられたので
「第何話のあの方ですね」
と答えたところ、お顔一杯に笑みを拡げられて
「そうそう、わかりましたね」
つられて私もニコニコ(^^)
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by capricciosam | 2008-05-17 22:02 | 講演会 | Comments(0)


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