中村善策の全貌展@市立小樽美術館2008

生涯風景画家として優れた作品を残した中村善策さんですが、
私にとっての印象深い作品は日展で出会った「張碓のカムイコタン」
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画面のほぼ中心に置かれたのはなんの変哲もない丘。
しかし、丘が海に接するところには断崖絶壁が急に現れ、
丘の持つ穏やかさは一変してしまい、絵全体を引き締めている。
そして、海岸線の先に続く遠くの山並みや、雲高い空という
遠景が奥行きを与える。
これらは、やや暗めの落ち着いた色彩で描かれているが、
画面手前の近景には集落や木々が明るい色彩を用いて描かれ、
見事な対比となっている。
今回の展覧会で解説を読んで知ったのですが、このような
「大胆な構図と明るい色彩」の画風を「善策張り」というらしく、
まさしく氏の画風がバランスよく作品に反映された一品。

今回、氏の作品を多く収蔵している市立小樽美術館で全貌展が
開催されているのを知って、またこの作品に会いたいと思い、
久しぶりに小樽へ出かけてきました。

会場では、全73点の作品が
第1章 小樽時代の善策
第2章 一水会・疎開時代
第3章 信州風景ほか
第4章 北海道風景
第5章 円熟の境地
に分けられて展示されています。

けれども、残念ながら本作品は展示されていませんでした。
代わって第4章で「カムイコタン夏日」と題する作品が2作並べて
展示されていました。制作年代は1970年、1973年。
構図は「張碓のカムイコタン」(1968年)と同じながら、
作者の視点はそれぞれ異なっているため、一見すると同じように
見えるのですが、うり二つではありません。
1970年作は全体に躍動感に溢れ、1973年作はもっと
クローズアップした構成ですが、夏を思わせる明るい陽射しのなかに
淡々と存在する集落の静けさを一瞬にして切り取ったかのような
1968年作の完成度には一歩及ばず、という感じです。

善策さんは何度もここで写生を試み、作品を残されていたことを
初めて知りましたが、やはりこの構図は魅力的だったんでしょうね。
一ファンとしてはこれだけでも、わざわざ足を運んだ甲斐がありました。
<蛇足>
市立小樽美術館のHPで誤って「張碓のカムイコタン」と
紹介されている作品は「カムタコタン夏日」(1973)です。
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by capricciosam | 2008-07-05 22:16 | 展覧会 | Comments(0)


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