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鑑真和上展@北海道立近代美術館2006

教科書というのは案外一生に渡る影響を及ぼすことがあるもので、
社会や歴史の教科書の口絵で紹介されていたようなものは
特に印象深く、心の奥深く刷り込まれているものです。
中でも唐招提寺開基の祖である「鑑真和上」坐像は、私にとっては
忘れがたきもののひとつで、チャンスがあるなら実物を見たいものだ、
と常々思っていました。
それが阪神淡路大震災の影響で唐招提寺金堂が平成大修理を行うのに
合わせて、ついに道内でもそのチャンスが巡ってきたのです。
実は、私は数年前に東京でこの展覧会を偶然鑑賞していたのですが、
再び混雑した会場に足を踏み入れる気は起きませんでした。
それで、チャンスがあればぜひ観るように母とカミサンに強く勧めて
いたのですが、どういう訳か、ナビゲーターとして一緒に行くハメに
なってしまいました。まあ、内心嬉しい誤算だったのかもしれません。

会場入りしてからは、他の出品物は差し置いて、みなを連れて
真っ先に和上像にかけつけました。照明を一段と落とした一画に、
ガラス張りのケースの中で像は鎮座していらっしゃいました。
和上年譜によると、この像は和上が亡くなる年の春に弟子の忍基が
講堂の棟梁が折れるのを夢に見て、和上遷化を悟って諸弟子を率いて
肖像を造ったというものだそうです。像は一見木彫りのようなのですが、
実は麻布を漆を用いて貼り合わせて骨格を形づくったもので、
日本最古の肖像彫刻として国宝になっています。

5度の失敗と12年に渡る歳月と失明という艱難辛苦の末に、ようやく渡航に
成功されたという和上に思いをはせると、その端正なお顔に感じられるのは
何よりも和上の内面の意志の強さなのですが、ただそれだけではありません。
不思議な穏やかさが、そして見ようによっては微笑みさえ漂わせているか
のごとき、その達観の表情にはただひたすら圧倒され、観ているこちらも
浄化されるがごとき思いが湧いてくるのです。
割と小さな像なのですが、圧倒的な存在感という他ありません。
一見の価値あり、です。

その他多数の国宝や重要文化財等の寺宝が数多く出品されていますが、
ちょっと興味を魅かれたのが、「鑑真和上袈裟入蒔絵箱」。
鑑真和上のものと伝えられている簡素な袈裟を折り畳んで納める
箱なのですが、黒漆地に金蒔絵で徳川家と桂昌院の出た本庄家
の紋があしらわれています。桂昌院とは徳川五代将軍徳川綱吉の
生母です。この蒔絵箱が桂昌院から寄進されたとのことのようです。
天平時代に江戸時代が突然出現して驚きましたが、つくづく歴史は
連綿と続いているものなのだなぁ、と改めて思いました。

最後にシニア世代にとっては勇気づけられる話を。
日本からの渡来僧による渡日依頼を受諾したのが
和上55歳の時で、成功したのが67歳というのです。
鑑真和上像の端正な印象から渡航は壮年期に行われたものと、
すっかり誤解していました。
実際は、今なら引退しても不思議ではない歳なのです。
なんというチャレンジ精神なのでしょう。
be encouraged!

鑑真和上展は北海道立近代美術館で8/20まで開催しています
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by capricciosam | 2006-07-30 22:49 | 展覧会 | Comments(2)