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札幌交響楽団第597回定期演奏会@Kitara2017

【プログラム】

1 メンデルスゾーン 序曲「フィンガルの洞窟」
2 シューベルト 交響曲第5番変ロ長調
3 ブラームス 交響曲第1番ハ短調

1の重く暗い抒情は実演で聴いた中ではこれまでで最良のものだった。

2は第1楽章冒頭から愛らしい表情を感じるのが一般的な解釈とは思うのだが、
エリシュカさんは細かく振ってやや素っ気ないテンポでずんずん進む。
そのため叙情的雰囲気を感じるヒマもなく、この曲が纏っていた虚飾を
次々はぎ取っていくようだった。
クールな解釈、クールな演奏とでも言えばよいのか。
しかし、決してこの曲の持ち味を損なっているようにも思えない。
むしろ新鮮なのだ。これは新たな発見をした気分だった。

3は名曲だけに札響の演奏回数も多く、これまでも札響含め実演に接する
機会も多かった。そのためブラームス交響曲全曲演奏の完結にこの曲を
持ってきたエリシュカさんの意気込みは相当のものがあったはずではないか。
2で示された方向性がさらに徹底していたようだ。
大きな流れよりも細部が浮き上がるという印象が強い。
そのため委細かまわず一体となって頂点を目指すような解釈とは距離を置く、
随所を明晰にしたことで浮かび上がる作品それ自体に語らせる
という印象の強いものとなった。
手垢にまみれた名曲ブラ1の新たな一面を示されたような思いがした。

独墺系の定番曲ばかりのプログラムだが、エリシュカさんの手にかかる
と新鮮だ。「眼光紙背に徹する」という言葉がある。
指揮者にあてはめるなら、楽譜を読んで作曲家の意図をくみ取り、
どれだけのものを演奏者、聞く側に提示できるかで、
この言葉にふさわしいか否か、ということが言えるのかもしれない。
エリシュカさんが札響を振ると刮目させられることが多々あったが、
今日の演奏を聴いて先ほどの言葉にふさわしい一人ではないか、
という思いが一層深まった。

弦楽器や木管の艶やかな響きは一貫していたが、金管の響きには
やや違和感が残った。特にホルンには力強さは感じたが、固さも感じた。

昼公演。空席もそれ程目立たずほぼ満席。
鳴り止まぬ拍手とブラボーに客席の満足度が現れていたと思う。

次回は「英雄」で10月定期に登場するエリシュカさん。
新たにベートーヴェンの交響曲に取り組むようです。
すでに取り上げた「第九」「田園」4番も重複して取り上げるのかな?


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by capricciosam | 2017-03-11 20:01 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第596回定期演奏会@Kitara2017

【プログラム】
1 J.S.バッハ 管弦楽組曲第3番ニ長調
2 J.S.バッハ 管弦楽組曲第2番ロ短調
e J.S.バッハ 管弦楽組曲第2番ロ短調より第7楽章「パディヌリ」
3 J.S.バッハ 管弦楽組曲第1番ハ長調
4 J.S.バッハ 管弦楽組曲第4番ニ長調
e J.S.バッハ 管弦楽組曲第3番ニ長調より第2楽章「アリア」

管弦楽組曲はJ.S.バッハのオーケストラ曲の代表的作品で、第3番第2曲「エール」が
「G線上のアリア」として演奏会でも耳にすることが多い。
しかし、全曲演奏会となると話は別で、今回が初めてだった。

札響での演奏回数も組曲ごとにみると、第2番が13回と比較的多いものの、
1番、3番は一桁台、4番に至っては今回が札響初演。
つまり「札響とバッハ」は案外ありそうでなさそうな取り合わせだったという訳だ。
その上、出演は団員の半分程度でパートによっては出番なしの変則編成だけに、
定期演奏会より名曲がふさわしいのかも?なんてことも頭をよぎる。
今回は「バッハ・プロジェクト」の第1弾として企画されたようだが、
よくぞ踏ん切ったと企画そのものにあっぱれをあげたい気分だ。

所有するCDでは番号順収録なので、順番に聴くのを常としていたが、
今回の演奏順はポンマーさんの指示によるものだそうだ。
華やかに始まり、協奏曲を経て華やかに終わるという構成は、
全体をひとつの作品としてとらえられ、なかなか新鮮だった。

札響も弦楽器を中心にオーボエ、ファゴット、トラペット、ティパニ、チェンバロが
緊密なアンサンブルを築き、素晴らしい響きが大ホールを満たす。
特に、トランペットとチェンバロは見事だった。
また、フルート協奏曲の趣のある第2番ではフルート首席がソロを務めたが、
堅実で安定感があり十分楽しめた。欲を言えば更なる華か。

ポンマーさんは、古楽器演奏で聴かれるようなゴツゴツした演奏ではなく、
音楽の自然な流れを重視した明るく、親しみに満ちた演奏を求めていたようだ。
昨年秋の特別レクチャー(未聴)でポンマーさんは

「本来の音楽がどんなに陽気な表情にあふれているか、お楽しみください」
 (会場配布資料より引用)

とおっしゃっていたようだが、まさしく本公演ではそれが体現されていたと思う。
もっとも、奏でられた音楽の表情の暖かさ、なじみやすさは温微的、表層的とも
とられかねない側面もあろうから、そういう点では好みは分かれるのかな。
しかし、

「長い間ドイツの民衆の間で発展してきた舞踏音楽と、華麗で洗練されたフランスの
宮廷音楽を合流させ、生活力あふれる素朴な民衆音楽を芸術的な高みに至らせたもの」
 (会場配布資料より引用)

という視点で見ても決して的外れなものだったとは思えない。
会場からはブラヴォー含め盛んな拍手が送られていた。
最後にポンマーさんが楽譜を高く掲げていたのが印象的。

昼公演。客入りは8~9割か。
CD化目指した録音が行われていたが、途中で大きなくしゃみがあったのは残念。

「バッハ・プロジェクト」第2弾は12月定期の「クリスマス・オラトリオ」(抜粋)です。

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by capricciosam | 2017-01-28 22:19 | 音楽 | Comments(0)

まなみーるDEクラシック@岩見沢市民会館2016

【プログラム】
1 レスピーギ:リュートのための古代舞曲とアリア第3組曲
2 ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1919年版)
3 コープランド:市民のためのファンファーレ
4 アンダーソン:ブルータンゴ,フィドル・ファドル,プリンク・プランク・プルンク
5 J.ウィリアムズ:「スターウォーズ」組曲より
         インペリアルマーチ,レイア姫のテーマ,メインタイトル
e エルガー:威風堂々第1番

今年の聞き納めは先月の札響定期演奏会の予定だったのですが、
垣内悠希さんが指揮される演奏会が岩見沢市であるとわかり、
急遽聞き納めを延期しました。
垣内さんは今年新たに札響指揮者になられましたが、
ブザンソン国際指揮者コンクール2011年の優勝者です。
これまで垣内さんが登場する演奏会に接する機会がなく、どのような指揮をされる
のだろうと興味がありました。しかも、今回は実演で聴くのは初めての1と3も
あるため楽しみでした。
また、まなみーるで札響を聴くのは2008年以来のことです。

ところで、「ブザンソン国際指揮者コンクール」は1959年小澤征爾さんが
優勝して有名ですが、その後も日本人指揮者の優勝者が続いています。

松尾葉子(1982)、佐渡裕(1989)、沼尻竜典(1990)、
曽我大介(1993)、阪哲朗(1995)、 下野竜也(2001)、
山田和樹(2009)、垣内悠希(2011)
創設以来1992年までは毎年行われていたが、その翌年からは隔年開催となった。
(以上、Wikipediaから引用)

何れもプロの指揮者として一線で活躍されている方ばかりですが、
その中で直近の覇者が垣内さんということですね。

今回は名曲コンサートで、1部ではクラシック、2部では「アメリカ」を
キーとした作品の2部構成になっていましたが、10月エリシュカさんが
取り上げた2もありますから、なかなか期待の持てるプログラムでした。

恰幅の良い垣内さんはまだ三十代。全身を駆使して躍動感のある指揮をされます。
客席からみていると腕を上下左右に自在に伸ばして振られるのが印象的です。
それでも1部ではやや慎重に指揮されているようでしたが、2部ではギアを上げた
感じでより大胆に。アンダーソンの「フィドル・ファドル」では自ら踊るような
指揮の場面も。強弱や緩急のメリハリも良く、札響から見事なアンサンブルを
引き出していきます。
これは楽しみな若手が札響指揮者陣に加わってくれました。

2はエリシュカさんの印象がまだ残っているのでつい比べてしまうのですが、
ややテンポが速かったものの、「火の鳥」の色彩感にも富んだ好演でした。
5は2年前の札響定期で下野竜也さんが取り上げられて改めて作品の魅力に
触れましたが、今回も札響サウンズ炸裂とばかりにクラシックの演奏会でも
組曲版は全然違和感ないですね。

ただ、客席の一曲ごとの拍手が途絶えがちだったのか少々寂しかったですね。
最後が盛大だったのはアンコール期待だとしても、札響がなかなか良い演奏を
していただけに、一曲終わるごとの拍手はもう少しあればなお良しでしたね。
普段演奏に親しむことの少ない方も多いという証なのでしょうが、
もっとクラシック音楽が身近になれば素敵なのに、と思わせられるシーンでした。


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by capricciosam | 2016-12-04 23:01 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第595回定期演奏会@Kitara2016

【プログラム】

1 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」
e ビゼー(ブゾーニ編) カルメン
e リスト グランド・ギャロップ・クロマティック
2 ワーグナー 「ニーベルングの指環」より
 ・ワルハラ城への入場
 ・ワルキューレの騎行
 ・魔の炎の音楽
 ・森のささやき
 ・ジークフリートの葬送行進曲
 ・ブリュンヒルデの自己犠牲

ワーグナーの代表的作品は歌劇(楽劇)のため、普段生の歌劇に縁遠い身としては
せいぜい演奏会の中で歌劇の序曲を聴くぐらいが生でワーグナー作品に親しむ機会になる。
もっと親しもうと思うと10数分か2~4時間か、という極端な選択をしなければ
ならなくなる。これが作品鑑賞としてのワーグナーのハードルを高くしている面もある
のかもしれない。しかし、個人的には序曲集のようなCD一枚でも聴いていて飽きる
ことはなく、ワーグナー作品の持つ不可思議な魅力にからめとられてしまうのだ。
それほどワーグナー作品自体の磁場は超強力だと常日頃から感じていた。

今回指揮される飯守泰次郎さんは我が国屈指のワーグナー指揮者で、近年札響を
数回指揮されているが、ワーグナー作品は序曲1~2曲程度だっただけに、
今回のようにワーグナー作品でも長大さでは群を抜く「ニーベルングの指環」の
抜粋版演奏は久しく待っていたものだ。

また、「ニーベルングの指環」の管弦楽用の編曲版としては、ヘンク・デ・ヴリーガーに
よる「オーケストラル・アドヴェンチャー」(1992年エド・デ・ワールト指揮、
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団で初演)があり、14曲を60分程度に抜粋、編曲
している。(以上、Wikipediaによる)
ちなみに、エド・デ・ワールトが2003年PMFに登場した時にこれを
とりあげている(未聴)。

ステージ一杯に大幅増員された100名からなる札響は壮観の一語に尽きる。
札響の繊細かつ強烈な音はまるで、飯守さんの指揮にあわせて呼吸するがごときで、
織りなす響きが大ホールを満たすのは痛快至極で、聴き飽きすることはなかった。
近年力をつけてきているだけにどのパートも大健闘だったが、
特に、トロンボーンはじめ金管楽器群が印象深かった。
やはりワーグナー作品には強烈なブラスの咆吼が似合う。
ただ、トッティではオケとしての余裕があまり感じられなかったのは少し残念。

暗譜で通した飯守さんにも驚いたが、安心して聴くことができた。
待った甲斐があるというものだ。歌唱なしでも十分堪能させてもらった。
ただ、歌劇本来の鑑賞としては歌唱もあったほうが良いだろう、とは思う。
飯守さんと札響の組み合わせでワーグナーの歌劇を聴くとなれば、
やはり、2018年の札幌文化芸術劇場開場を待つことになろうか。
こけら落とし公演「アイーダ」以外は未発表だが、ワーグナーも上演されないかな、、

1のホジャノフはアンコール含め大ホールは大いに湧いた。
確かにピアノ小僧ぶりには驚いたし、きれいで迷いのない音は魅力的だとは思うものの、
オケとの一体感があまり感じられず、「皇帝」としては淡々と終わった印象。

昼公演。空席もあまり目立たず客入りは9割程度か。

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by capricciosam | 2016-11-26 23:58 | 音楽 | Comments(0)

札響名曲~チェコを離れて:エリシュカのお気に入り@Kitara2016

【プログラム】

1 モーツァルト:交響曲第40番ト短調
2 ドヴォルジャーク:アメリカ組曲
3 ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1919年版)

先週の定期演奏会に続きエリシュカさんによる名曲コンサート。
定期の時公表された来シーズンの札響演奏会の速報によると、来札は
10月の定期演奏会のみで、しかも定期演奏会と名曲を指揮するという形はありません。
ご高齢ですから、エリシュカさんのお身体の負担を避けるという意味なのでしょうが、
指揮ぶりは実に矍鑠(かくしゃく)としているので、長く続けてもらうという意味では
やむを得ないでしょうね。しかし、残念。

閑話休題。1は基本に忠実でありながら、立ち現れる音楽のなんと新鮮であることか。
基本的には「ジュピター」を含む2012年の名曲で抱いた感想と変わらない。
そういう意味ではエリシュカさんの姿勢には一貫したものを感じる。
ただ、深みや劇性を第一に求める向きには首肯しずらいものがあるのではないかとも思う。

2はドヴォルジャークが渡米後書き上げたピアノ組曲をオーケストラ用に編曲したものらしい。
初めて耳にしたが、何やら西部劇の荒野が目に浮かんだりして聴いていて楽しい。
肩肘張らない娯楽色が強い作品。各パートの首席がソロをとっていたが、
ホルンとオーボエが印象に残った。

今回のプログラムではもっとも期待していたのが3。長年エリシュカさんを聴いてきて
こういう躍動感あふれる色彩感に富む作品はうってつけなんだろうと思っていた。
ただ、この作品は外見的な効果を狙うと、とかく力業に頼りがちになる傾向もあるように
感じていたので、今回のような慎重かつ精緻な演奏指向は細部にこだわり過ぎて
迫力不足ととる向きもあるだろうなと思う。しかし、例えば「魔王カシチュイの踊り」でも
札響のダイナミクスを活かして迫力十分だったとおもうだけに、作品自体に語らせる
手法ととるなら必要十分な演奏だったのではないかと思う。

ほぼ満席の会場からの万雷の拍手に応えアンコールを一曲。

4 スメタナ 歌劇「売られた花嫁」より"道化師の踊り"

<蛇足>
今回はエリシュカさんにしては珍しいシーンが2回ありました。
1回目は一旦ステージ裏に引っ込んでから3のために再登場したエリシュカさんですが、
指揮台上で胸ポケットを探っていたが、なにやらないらしい。ステージ裏に助けを求めたら、
届けられたのは眼鏡。受け取ってすぐ顔にかけて胸に両手をあてて会場に「ごめんなさい」の
ボーズ(笑)これには会場からも笑いが起きて、一瞬緊張が緩む程和みました。
2回目はプログラム終了後、拍手に何回か応えていた時に発生。
オケはアンコールの準備をしていたのですが、そのまま袖に引っ込もうとするので、
コンミスの大平さんがエリシュカさんを止めて何やら話していたと思ったら、
「オッ」という表情でエリシュカさんが急いで指揮台に戻りアンコールになりました。
エリシュカさん、どうやらアンコールを忘れていたようですね(笑)
エリシュカさんの演奏会を長年追ってきて、年齢に似合わずしっかりしているな、と
思っていたのですが、やはり年齢相応の部分はあるなと妙に納得。ご高齢ですからね。

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by capricciosam | 2016-10-22 23:18 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第594回定期演奏会@Kitara2016

【プログラム】

1 スメタナ:交響詩「ワレンシュタインの陣営」
2 ドヴォルジャーク:スケルツォ・カプリチオーソ
3 チャイコフスキー:チャイコフスキー交響曲第5番ホ短調

エリシュカさんが三年がかりで札幌交響楽団(以下「札響」という。)と進めてきた
チャイコフスキー後期三大交響曲演奏会も今回の第5番で完成する。
これまで取り上げた第6番第4番の演奏での衝撃的な出来からみて最後となる
第5番への期待はとりわけ大きかった。
ちなみに札響の演奏回数は第6番が76回(2014年当時)、第4番が66回(2016年当時)
に比べ、第5番が95回と多いのは、この曲がいかに愛されているかを反映している
のだろう。運命の主題による循環形式を採り、ほの暗さと愛らしさと輝かしさを
併せ持つ作品としての魅力はチャイコフスキーの想像を越えていたのかもしれない。

演奏終了後に感想として「一点一画をも疎(おろそ)かにするまい」とツイートした。
これはエリシュカさんの流儀だろうから今さらなのだが、それが今回はさらに徹底
していたようだ。第1楽章では音楽が止まるのではと思われるぎりぎりまでテンポを
落としつつ音を明瞭に響かせるが、無機的で何の感情もこもらない演奏でもなく、
音楽として停滞している訳でもない。逆に情感豊かでカンタビーレが溢れているように
聞こえたのだが、これは全楽章を聴き終えても同様。
名曲についた手垢をきれいにぬぐい去ったかのごとく新鮮。
例えば、第3楽章から第4楽章へほぼアタッカで演奏することで一気に流れを形づくろう
とする場合もあるが、エリシュカさんはここでも休憩をとる。実際の演奏は途絶えるが、
さりとて最後の雄渾なフィナーレが割り引かれる訳でもない。
むしろ、楽章ごとに気迫溢れた指揮により札響から引き出される音楽の素晴らしさが
脳内で流れを途絶えさせずにいたようだ。
何度も第5番の実演に接してきたが、これまで聴いた過去のどの第5番の演奏とも異なる
まさにエリシュカさんならではの第5番だった。これは想像を越えていた。
札響の演奏史においてもメモリアルな演奏会として記憶されるのではないか。

終演後の万雷の拍手と数々のブラボーは会場の満足度の高さを示すものだった。
昼公演。エリシュカさんの演奏会としてはいつもより空席が目立ったが、同日同時間帯で
行われた札幌ドームでのCSファイナル(ファイターズVSホークス戦)に若干流れたのかな
と想像していた。
CD化を目指した録音もされていたが、前日の夜公演分はNHK-FMで放送されるようだ。
今回はツィッターでフォローさせていただいている道外の方も会場に足を運んでいたが、
クラシック音楽ファンの中で聴きに行きたいと思う演奏会なら遠方でも出かける方は、
結構いらっしゃるものだと改めて思った。(自分もその端くれではあるが、、、)
ありがたいことだ。そんな全国的に注目を浴びるエリシュカ&札響&Kitaraを
地元として享受できることは改めて幸いなことと思う。

<追記10.23>
プログラムを記載し忘れたので追記しました。
1は札響初演。活気あふれる作品だと思うが、それ以上でも以下でもないか。
2は札響の演奏としては2012年4月定期以来3回目とのこと。ドヴォルジャークらしい
素敵なメロディが溢れるが、札響はよく表現していたと思う。
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by capricciosam | 2016-10-15 20:12 | 音楽 | Comments(0)

札響名曲~ウィーン:華麗なるヴァイオリンと運命@Kitara2016

【プログラム】

1 モーツァルト セレナード第13番ト長調《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》
2 モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調
3 ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」

オーケストラの演奏会に指揮者は欠かせないと考えるのは、指揮者が
演奏の善し悪しを左右する要因と考えることによるのだろう。事実、
同じオーケストラでも指揮者により演奏がガラッと変わる鑑賞体験を
してきたことから、個人的にはやはり妥当なことと思う。
では指揮者なしではオーケストラは機能しないのか、と言えば必ずしも
そうではないようだ。

指揮者なしの場合は、ソリストやコンサートマスターが指揮振りをする
ような感じでオケを牽引していくが、札幌交響楽団(以下「札響」という。)を
指揮者無しで聴いて感銘深かったのは、昨年9月定期のハインツ・ホリガーさん
以外では、安永徹さんによる2009年の演奏会が印象深い。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で長年コンサートマスターを努められていた
安永さんが引退後札響と初めて協演したものだが、あの時も札響のアンサンブル
が引き締まり、札響のサウンドが活き活きしたような印象を受けた。
きっと指揮者に依存しない分、演奏者の自主性が高まり、お互いの音に
より敏感になっていくため、結果としてアンサンブルの精度が高まるため
ではないか、と推定している。
著名な指揮者の中にはオーケストラに積極的に室内楽を奨励する場合もある
ように聴いたことがあるが、アンサンブルの精度向上に指揮者なしの効果は
確かにあるのではないかと思う。
そんな視点で有名オケを眺めると結構オーケストラ内の室内楽が盛んな
ようにも思えてくる。逆に、室内楽活動が盛んな場合はオーケストラとしての
演奏も充実してくるということなのか。

閑話休題。今回登場したフォルクハルト・シュトイデさんは
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の現役コンサートマスター。
今回も安永さんの時感じた「活き活き感」がより一層強まった感じで、
1の出たしから明らかに札響の音が変わっている。
弦楽器の一体感が素晴らしく、見事なアンサンブルなのだ。
併せてスポーツカーにでも乗っているような疾走感が感じられる。
事実、テンポはやや速かったのかもしれない。
3はパンフレットでは約35分となっていたが、実際は31分程度だった。
じゃ、演奏はせこせこしたつまらないものだったのか、というとまるで逆。
札響のアンサンブルが緊密なまま最後まで乱れないので、
一瞬たりとも飽きないのだ。
そのため、全力で走りきった後のような充実感と爽快さが味わえたのかもしれない。
普段聴き慣れた名曲をリフレッシュさせたような強い印象が残った。
鳴りやまぬ拍手に応えてアンコールを一曲。

モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」序曲

ほぼ満席の大ホールからはさらなる大拍手が起きた。
今回シュトイデさんは6/4~6/18の日程で来日されて、リサイタル6カ所、
オケとの協演2カ所となっています。リサイタルには6/15六花亭札幌本店
も含まれています。
確か昨年はシュトイデ弦楽四重奏団としても来札してくれていたようですから、
今後も来道して札響と協演していただきたいものです。
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<追記6.21>
記事の一部を加筆修正しました。
また、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の現役コンサートマスターによる弾き振りは
昨年PMF-GALAで、ライナー・キュッヒルさんによるモーツァルトを体験していました。
あの時も見事なものだと感心しました。その時の記事はこちらです。
また、安永徹さんが演奏活動をしばらく休止されていますが、体調は回復されたのかな。
またステージに元気な姿を見せていただきたいものです。



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by capricciosam | 2016-06-18 20:37 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第588回定期演奏会@Kitara2016

【プログラム】

1 プロコフィエフ 交響曲第1番ニ長調「古典」
2 チャイコフスキー ロココの主題による変奏曲(原典版)
3 ラフマニノフ 交響曲第2番ホ短調

ドミトリー・キタエンコ(以下「キタエンコ」という。)は2006年、2013年の定期演奏会に
登場しているが、あいにく聴いていないので今回初めて聴くことになった。

1は小気味よい切れのある音楽にまとめられており、キタエンコさんの手腕の確かさを感じさせる。

2ではルツェルン祝祭管弦楽団のソロチェリストのイェンス=ペーター・マインツが登場。
普段耳にするフィッツェンハーゲン版ではなく、原典版が演奏される。
確かに耳慣れぬ部分はあったが、さほど違和感なく、達者なソロに聴き入っていた。
ブラボーと盛んな拍手に応えアンコールを。

J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番より「サラバンド」

余談だが、ソリストがアンコールをせずに引き上げようとすると、ステージに立っていた
キタエンコさんがジェスチァーで弾くまねをして、気がついて戻ってアンコールとなった。
これには会場から笑いも。

3は滔々と流れる大きなうねりの中に身を任せているかのような思いに捕らわれるのだが、
その豊かな抒情に浸る至福感は例えようがない。

「息の長い旋律が展開され、大きな感情のうねりをもちながら、循環主題の手法で全体の統一が
はかられている。周到で執拗な主題の扱いは彼の真骨頂。」
(以上、会場配布資料より引用)

チラシによれば3はキタエンコさんの強い希望であったらしい。3について札響は過去18回演奏し
うち13回は尾高名誉音楽監督が指揮したとのことだが、札響ではこの曲は尾高さんとともにあった
と言ってもよいのだろう。小生は2005年定期、2010年定期、2015年名曲と3回聴いている。
(録音が残されているとは思うのだが、CDとしては発売されていないのが少々残念なところ。)
きめ細やかにかつしっとりと曲を仕上げた印象の残る尾高さんに比べ、キタエンコさんは各パート
を明瞭にさせ、もっとオーケストラのダイナミクスを積極的に引きだそうとしたような感じがした。
それはオーケストラの自発性を刺激しているのだろうが、クラリネットはじめ各パート首席が
交互にソロをとる第3楽章を圧倒的に聴かせたことが証左になるのではなかろうか。
楽章を追うごとにオケは一体感を増していき、圧倒的なフィナーレにブラボーがあちこちから
飛んだ。

昼公演。空席がやや目立ち、客入は8~9割程度か。
オーボエ新首席関美矢子さんが定期演奏会にデビューしました。
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by capricciosam | 2016-04-09 22:33 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第587回定期演奏会@Kitara2016

【プログラム】

1 スメタナ シャールカ~連作交響詩「我が祖国」より
2 ドヴォルジャーク 弦楽セレナード ホ長調
3 チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調

今シーズンの掉尾を飾る今回はエリシュカさんによるオールスラブプロ。
注目していたプロです。

1は首席客演指揮者に就任して2年目の2009年名曲Vol.2で取り上げた「我が祖国」の
一部だけに悪かろうはずがない。(当日も「シャールカ」から札響の演奏も乗ってきた
感があった。当時の感想はこちらです。)事実、物語の内容はさておき、序曲的役割を
果たしたこの選曲は良かった。もう一度「我が祖国」全曲を聴きたくなりました。

2は2013年の名曲Vol.3のアンコールで第一楽章だけが演奏されて以来、ぜひ全曲を
聴きたいものだと熱望していたので、短期間で実現したのは望外の喜び。
近年充実している札響の弦楽パートが透明感のある音色で一貫してこの名曲を演奏。
途中第3楽章を終えたところで拍手がパラパラと起きたがエリシュカさんが制止。

3はエリシュカ&札響のチャイコフスキー後期交響曲シリーズの第2弾で、2014年4月
定期演奏会以来となる。第一弾の「悲愴」も良かったので期待は高かったが、
期待以上の演奏に終演後はしばらく座席を立てなかった。
第一楽章の冒頭の金管の音の強さは、これまでKitaraで聴いたオケの中でも最強の類で、
札響の金管からここまで力を引き出すエリシュカさんに驚きっぱなし。
(帰宅してから所有するCDで比較してみたくなり、「爆演」として名高い
スヴェトラーノフ&USSRの東京ライブ盤も聴いたのですが、この部分だけは
スヴェトラーノフ盤の方が余程マイルドに聞えました。)
しかし、強奏一本槍ではなく、きちんとした骨格を作りつつ、カンタービレを横溢
させる手腕の見事なのがエリシュカさん。第二楽章(オーボエ首席金子さんのラストソロ)
の物憂さ、第三楽章のピチカートによる軽快さ、第四楽章の喧噪の中迎えるフィナーレ。
札響も全パート一体となって燃え上がる高い燃焼度を示していました。
いやはや、まいりました。このコンビによる演奏でも特筆すべきものです。名演。

指揮ぶりも相変わらずメリハリのついたもので高齢による弛緩なんて無縁。
来月には85歳を迎えるとは到底思えないエリシュカさんだけに、10月、来年3月の
一連のチャイコフスキーとブラームスの演奏完結に期待は高まるばかりだ。

また、エリシュカさんは腕を横に上げた状態で演奏を終えると数秒ホールドしてから
腕をさっと下げて弛緩する。その間の無音の余韻を楽しみたいところですが、
相変わらずホールド状態で拍手が起きてしまい、ちょいと残念。
拍手をするタイミングとしては指揮者が腕を下ろしきってからにしたいところです。

昼公演。
当日券も発売されたのですが、ほとんど空席が目立たず9~9.5割の入か。
CD用だと思うのですが、録音されていました。
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by capricciosam | 2016-03-06 10:48 | 音楽 | Comments(0)

札幌交響楽団第585回定期演奏会@Kitara2016

【プログラム】
1 ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
2 メンデスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調
3 ムソルグスキー 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編).

指揮者のマティアス・バーメルト(以下「バーメルト」という。)は2014年1月定期に
登場(残念ながら未聴)し、再演の要望が強かったとのことで、今回2度目の登場と
なったらしい。1曲目からメリハリはつけながらも、総じて淡々と指揮しているように
見える様はまるで「職人の親方」のようで、確信に満ちてオケをドライブしている。

1曲目は子供のためのピアノ連弾曲の管弦楽版なので、おとぎ話的な不思議な音世界が
出現するのだが、バーメルトの手にかかると札響から実に繊細にしてきらびやかな
響きを紡ぎ出していく。そのため大ホールの空間に音が浮遊しているような錯覚に
襲われた。より色彩感の増す3曲目でもバーメルトの指揮ぶりに変化は見られない。
淡々とではあるが、手綱を緩めることなく着実にオケを高みに引き連れていき、
見事なクライマックスを形成するいぶし銀の手腕には感心した。
こういう力み返った音の感じられない、洒脱な音を引き出す指揮者は初めてだった。
また、以前の記事にも書いたように記憶しているのだが、
現在の札響はフランス作品に優れた適性を有するように感じる。

2曲目のイザベル・ファウストは2015-16シーズンの大注目ソリスト。
これだけの大物をよく呼んでくれたと、札響にアッパレをあげたい気分(笑)
とは言え、選曲がロマンティックな曲故、頭の中は疑問符だらけだった。
しかし、曲が始まってみるとソロがオケを制圧する訳でもなく、かといって
ソロがオケの音に埋没する訳でもなく、繊細にして精緻な音色の連続で、
極めて上質な織物でも織り上げていくような気分に襲われた。
こういう模範的でありながら感動させるメンコンは聴いた記憶がない。
聴衆のみならずオケからも盛大な拍手が送られ、アンコールを一曲。

J・S・バッハ 無伴奏パルティータ第2番よりサラバンド

絶品。お目当て的にはこちらだっただけに大満足。

昼公演。空席はチラホラ見られたものの9割以上の客入か。
姉妹都市オーケストラ交流の一環で韓国テジョン・フィルの
ピル・キュン・ポール・キムさんがゲストコンマス。
コンマス横に大平さん、後ろに田島さんと豪華布陣。
併せて、佐藤俊太郎さん、垣内悠希さんが今年4月から指揮者就任と発表される。
これも楽しみな情報です。
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by capricciosam | 2016-01-23 23:46 | 音楽 | Comments(0)