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北大路公子トークショー@恵庭市立図書館2015

一昨年千歳市立図書館で行われた作家宮下奈都さんとの対談「迷える読書」は
小生には謎の作家だった北大路公子さん(以下、本文では「センセー」という。)に
会えるという一点で出かけたが、終わってみると作品からは想像できない
読みの鋭さに脱帽だった。当時の感想はブログに記事として残しておらず、
下記のつぶやきしか残っていません。

「迷える読書@千歳市立図書館だん。北大路公子さんが披歴された読みの深さと、
それの表現の的確さには舌を巻いた。「自分の感情に名前があることを知る」
読後感想を書く意義の中でも基本だろうが、改めて認識させてもらう。
飲んだくれは世を忍ぶ姿だな。編集者からの公開催促には会場も大笑い。」
(以上、2013.11.2のつぶやきより引用)

これに味をしめて、整理券争奪戦をなんとか勝ち抜いて今回も出かけてきました。
市内外から大勢のファンが集まったようで、会場の研修室は満席状態。
ほとんど定刻にトークショー開会。
地元のコミュニティFMのパーソナリティの女性とともにステージに登壇したセンセーは
パーソナリティが聞き手を務め、それに応える形で前半を終えます。
話の大半はファンの方には周知の話だったのではないかと思うのですが、
センセーが寿郎社のこっぱげ氏とは一つ違いの姉さんだったとは初めて知りました。
(こっぱげ氏の風貌からは全然想像もつかなかったので、ホント驚きました。)
また、途中で登壇した毎日新聞社のM氏が、センセーがメジャーデビューになるきっかけ
となったサンデー毎日の連載のいきさつを話してくれました。
(これもファンの方には周知の話か)

当時、M氏が上司から女性エッセイの連載を企画したので探してこいと言われ、
東京丸善の書棚にたった1冊しかなかった「枕もとに靴」(寿郎社刊)を手に取ったのが
きっかけだったとのこと。M氏曰く「感謝していただきたいな」には会場から笑いが。
しかし、センセーも反撃。
「この人ひどいんですよ。(打ち合わせの時、飲んでたら)初対面なのに寝てる。
それで足を蹴ると、ムクッと起きて打ち合わせしようとする。」これも会場から笑いが。
(どっちもどっち、というか、類は友を呼ぶ、というか)

後半は寄せられた質問にセンセーが答える形で行われました。
問「昨年読んだ中で印象に残った本は?」
答「おぼえてない」(会場は笑)
ここでM氏が質問のアシストを「最近では?」
答「よけいなことをー」(会場は笑)

問「昨年もっとも衝撃的だったことは?」
答「夏に奥尻島へ友人と出かけた時に‥‥(以下略)」
その友人の身に起きたことが大変過ぎて、同情のあまり記事では書けません。
っていうか、センセーのネタのひとつになり得るだろうから省略。

問「日記を毎日続けるコツは?」
答「締め切りです。外圧がないと書かない。」
即答、かつキッパリおっしゃっていたのが印象的。
そこでM氏が補足。
「作家は締め切りがないと書かない。ほとんどの方が書けない。」
素人目には書くのが好きで作家になったんだろうからそういうものなのか、と。
そうなら意外な話だね。

締切りと言えば、集英社、実業之日本社、PHP研究所、寿郎社の各出版社
(の担当者)からメッセージが届いており、順に読み上げられました。
この中には千歳の時サプライズ登場した某社のY田さんも。

「公子先生、原稿、お待ちしております!」
「原稿をお待ちする日々です」
「〆切は「明後日」となっておりますがいかがでしょうか」
「うちの書き下ろしはどうした」

問「今後の執筆予定は?」
答「考えたことがない。目の前のことをやるので精一杯。」

締切りや新刊を巡る作家と担当編集者の攻防の激しさを物語る言葉の数々に
ただただ圧倒されるばかりです。プロの道は何れも厳しいものです、ハイ。

終わりにM氏が
「日本語が美しい、正しい、他人にひけをとらない才能。
それを活かして私たちを楽しませてほしい。」
とセンセーを評し、最後にセンセーが会場に挨拶して閉会となりました。
「わざわざありがとうございました。また、見てね。」(会場は笑)
(「また見てね」って、えっ?)

センセーの飾らないトークに会場は終始和やかな笑いに包まれていました。
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<追記4.6>一部加筆修正しました。
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by capricciosam | 2015-03-29 11:55 | 講演会 | Comments(0)

金ではなく鉄として@岩波書店

散々な天気だった道内のGWですが、最終日は帯広で雪!?
当地は日中雨です。なんとも、印象的なGWになりました。
それでも、遅れていた桜前線もついに松前に到達したようですから、
明日以降は少しは「春」を感じることができるよう期待します。

さて、こんな訃報が目に入りました。

「社会派弁護士として知られ、「平成の鬼平」とも呼ばれた元日本弁護士連合会会長の
中坊公平さんが3日、心不全のため京都市内の病院で死去した。83歳だった。」
(以上5/5朝日より引用)

生前の中坊さんはTV等でしか知りませんが、人なつこい笑顔で
飾らないざっくばらんな語り口の庶民的な方だなぁ、という印象でした。
ただ、一回だけ一道産子としてありがたいな、と思ったことがあります。

ちょうど全国的に大型倒産が相次いだ1990年代後半。
不良債権回収を目的とした「整理回収機構」ができ、中坊さんが社長に就任されていました。
当時、北海道でも唯一の都市銀行だった北海道拓殖銀行(以下、「拓銀」と言う。)が破綻し、
道内資本の会社がいくつも連鎖倒産しました。
道民にとっては大きな不安を抱いた時でもありました。
そんな中、経営危機が噂されていたのが、「丸井さん」こと「丸井今井」デパートです。
地場資本のデパートとして本店の売り上げは道外資本の支店に伍してしたのですが、
創業家4代目の拡大路線による負債が重荷になり、倒産の瀬戸際にありました。

どんな地域にも「あるのが当たり前」的な地域を代表する企業があると思うのですが、
それが揺らぐというのは地域へ与える影響も大きく、
たとえ直接関係しなくても心理的には不安なものです。

「拓銀がつぶれ、これで丸井さんまでつぶれたら…」

まさしく、そんな不安にかられる道民も当時は少なからずいたはずです。

「1997年12月16日、丸井今井は緊急取締役会を開き、当時の今井春雄社長を解任した。
拓銀破たんから一カ月。後継のメーンバンクを見つけるには、拡大路線を推進した
創業家四代目と“絶縁”するしかないと判断したのだ。当時のグループ有利子負債は940億円。
歳末商戦用の決済が集中する翌年2月には、資金ショート寸前に追い込まれた。
結局、ここで30億円を新規融資した道銀が新たなメーンバンクになった。
また、拓銀の丸井今井向け債権354億円を引き継いだ整理回収機構(RCC)は
99年、「倒産すれば北海道経済に甚大な影響を与える」(中坊公平社長=当時)として、
178億円を債権放棄した。」
(以上、道新2007年7月27日より引用)

当時、この丸井今井の債権回収について中坊さんが、
「情けある回収をします」とTVで発言されていたのを聞いて、
一道民として感謝の念を抱きました。
「たいしたもんだな」と、改めて中坊さんを認識したのはこの時です。

機会があれば中坊さんの発言や著書に接したいと思っていたら
2002年立ち寄った書店で発売されたばかりのこの本を見つけたという訳です。
でも、いつものクセで「つん読」のまま年月が過ぎてしまいました。
そこで、今回の訃報に接しあわてて読んでみました。

本書は朝日新聞の家庭面に連載された(2000年7月~2001年12月)もので、
聞き書きの形をとっています。
中坊さんがどのような成長を経て、弁護士として活躍するようになったのかが
書かれている訳ですが、さぞかし小さい頃から優等生として成長されたのだろうな
という先入観はことごとく打ち砕かれます。
その辺は、奥様と見合いする場面での中坊さんの自己紹介を引用してみます。

「生まれつき強度の近眼で、ぎっちょで、どもってまして、16歳まで寝小便も垂れ、
学歴、肩書きはついてますけど小さい頃から優秀と言えず…」
(P.85より引用)

劣等感や弱者としての生き様が、同様にこまっている人たちへの共感となって
活動のエネルギーとなっていったのでしょう。
中でも、倒産しかかった町工場や新幹線高架橋工事で立ち退きを迫られた
京都の市場の事件は、中坊さんの現場主義の面目躍如たるものだと思います。
また、後者の事件での市場のリーダーだった上崎さんのように、
高度な倫理観によって自らを律し、リーダーとしての務めを担う依頼人に
邂逅していることで、より中坊さんの人格が陶冶されていくこともわかります。

森永ヒ素ミルク中毒事件裁判の顛末が書かれて本書は終わりとなり、
その後の豊田通商事件や豊島の産廃廃棄問題などは描かれていません。
しかし、本書で語られる中坊さんの思いや考えだけでも、
生きることに悩んでいる人には熱いメッセージが届くのではないかと思いました。
読んだ後、前向き気分になれる、温かさに溢れる一冊です。

中坊さんのご冥福を心からお祈りいたします。合掌。
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<追記5.7>
記事中、丸井今井の経営危機に際して
中坊さんが「情けある回収をします」と発言したのは、
「血も涙もある回収をします」の誤りです。訂正いたします。
丸井今井民事再生法適用に際して記事を書いていました。こちらをご覧ください。

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by capricciosam | 2013-05-06 06:47 | 読書 | Comments(0)

東西ミステリーベスト100@文芸春秋編

更新が滞り気味ですが、日々冷蔵庫暮らしのような寒気の中、なんとか棲息しています。
今日は週末にかけて降った雪をまとめて除雪していましたが、
湿雪なので少々時間がかかってしまいました。
除雪を終えてみると、いくら正月をはさんだとは言え、身体が鈍っていることに
少々危機感を抱いてしまいました。
まだ、2月、3月があるというのに…、いかん!と、内心少々焦っています。

さて話は変わって、小生もミステリーは好きなのですが、流通、販売されているのは
古典や新刊も含めて半端な量ではありません。
若い頃から年間読む量なんてたかが知れている小生としては、
古今東西のミステリーの定番も未読のものが多く、
なんとか効率的に、いわゆる「名作」を読めないものか、とかねがね思っていました。
そんな当時に出会ったのが写真の本。1986年のことです。
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当時、こんなガイド本に出会ったことはなかっただけに、
手に取った時には内心欣喜雀躍状態。
実際、これ以降ミステリーについては優秀なガイド役を果たしてくれて、
今でも時々引っ張り出して参考にしているので、小生の中ではまだ現役です。

ところで、先日近所のスーパーの書籍売場で写真の本を発見しました。
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タイトルも発行元も同じながら、今度は文庫ではなく、ムックとして新発売されたようです。
しかも、27年ぶり。随分時間が経ったものです。
さっそく購入して、ざっと眺めてみたのですが、構成は一作品にネタバレなしのあらすじと
「うんちく」を載せるという体裁は同じながら、評論家の座談会や作家のインタビューを
追加しています。
しかし、なんと言っても大きな構成の変化としては国内と国外の扱い。
27年前は国外→国内だったのですが、今度のは国内→国外と配置が変化しています。
当時は編集者にもミステリーの盛んな国外への敬意が先に立っていたのかもしれませんが、
近年は国内のミステリーも遜色ないレベルと判断を変えた表われなのでしょうか。
どちらかというと国内モノに比重を置いて読む小生としては嬉しい変化です。

ベスト10は今度も国内、国外ともに意外や意外、古典がガンバッテいます。
四半世紀ぶりなんだから、もっと現代作家の新作が10位以内に多いのか
とも思ったのですが、これは驚きました。
また、前回は上位にあったものが、今回はランクが下がったり、
その逆もあったりで、眺めているだけでも楽しくなります。
表紙には次のように書いてあります。
「死ぬまで使えるブックガイド。」
前作のことを考えても、小生には十分当たっていそうです。
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by capricciosam | 2013-01-20 22:31 | 読書 | Comments(0)

除雪のシーズンイン

記事本文に入る前のどうでも良いこと。
夕方書き上げた記事は、もうすぐアップという寸前でブラウザの不調でおしゃか。
一息入れ直して、さっきの構成を思い出して書いています。
でも、さっきの表現と同じではないのが素人の良さ、って言うか、
書いた本人以外誰も目にしていないのだからわかる訳ない。これこそ蛇足ですね。
と、言うわけで、以下が本文です。

昨夜の降雪の影響で、今朝起きたら窓外には見事な冬景色。
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室蘭・登別地方に大停電をもたらした11月27日の大荒れの後も冬景色だったのですが、
降った雪の量も少なく、数日経つとみるみる溶けていきましたからまだ余裕。
しかし、晴れ渡る青空の下に見る今朝は、さすがに除雪を覚悟しました。
シーズンインとシーズンアウトに降る雪は、大抵「湿雪」。
という訳で、量はシーズン真っ盛りに比べれば、それほどでもないのですが、
重いんですよね、これが。
それで、意外と時間がかかって、ひと汗かいてしまいました。

週間予報では雪も降るようですが、最高気温はプラスの日がほとんどなので、
降っては溶け、の繰り返しになるんでしょう。
そして、いつかは根雪に。最近はホワイトクリスマスとならない年が続いている
ような印象があるのですが、今年はどうでしょうね。

それにしても、何回除雪を繰り返したら春なんでしょうか。
とりあえず、体調整えてこの冬を乗り切るぞー!!
と、気分は出陣式みたいです。

ところで、次のような大きな事故のニュースが目に止まりました。

「2日午前8時ごろ、山梨県大月市笹子町の中央自動車道・笹子トンネル
(全長4455メートル)内で、コンクリート製の天井板が50~60メートルにわたり崩落し、
車3台が巻き込まれた。東山梨消防本部によると、午後4時半ごろ、現場で焼死体3体を
確認した。他に少なくとも3台の4人が取り残されている可能性があり、県警や消防が
救出作業を急いでいる。管理する中日本高速道路は、天井板を支える器材の劣化により
事故が起きた可能性を認めている(略)
笹子トンネルは1977年開通で、大月市と山梨県甲州市にまたがる。
目撃者によると、天井板は突然崩れ、下敷きになった車付近から出火(略)」
(以上、毎日新聞12/2ツケより引用)

高速走行しているトンネル内では車輌事故を避けるのは難しいだろう、と常々思う訳で、
ましてや天井からコンクリートが落下するなんて想定外。最悪です。
まだ、消火・救出活動も本格化しておらず、事故の全容は把握されていないようですが、
崩落原因としては、天井板を支える器財の劣化のようで、
コンクリートそのものの問題はないのかもしれないのですが、
コンクリートと聴いて以前読んだ一冊の本を思い出しました。

「コンクリートが危ない」(小林一輔著 岩波新書)
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読んだのは、ノストラダムスの大予言で有名になった1999年でしたが、当時
恐怖の大魔王が空から降ってくるなんて予言より余程ゾッとした覚えがあります。

山陽新幹線高架橋の異変はじめ、耐久性抜群のはずのコンクリート構造物に
その耐久性に疑問のつく異変がいくつも発生していることが提示されます。
「アルカリ骨材反応」、鉄筋の接合および配筋不良や生コンへの不法加水と、
いわゆる手抜き工事が原因らしいのですが、
品質の分かれ目は東京オリンピック開催年(1964年)とのこと。
高度経済成長にともなう大量生産。
本来維持しなければならない品質を手抜き工事によってごまかしてきた、というのです。
そして、著者は高度経済成長時に建設されたコンクリート構造物が一斉崩壊する頃を
2005~2010頃と予測しています。
幸い2011年の東大日本震災を経ても、まだ一斉崩壊という最悪の事態は起きていませんが、
いつかはタイマーが働いたかのようにあちこちで起きないとも限らない訳です。
そこで、著者はつぎのように提言しています。

「1970年代に建設された大量のコンクリート構造物の一斉崩壊が近づいており、
これを軽減するための維持補修を早急に実施する段階にさしかかっている。
もはや猶予は許されないのである。不要不急な公共事業の費用は、
こちらに振り向けるべきである。」
(P203~204より引用)

先の大停電でも感じましたが、ライフラインを含む社会インフラが整備されている
という恩恵は、存在そのものが当たり前という感覚で、喪失した時にその価値を
痛感させられることになるのでしょう。
そのインフラを担う重要なパーツであるコンクリートに関しては、
欠陥や崩落は直接的な重大事故や人命にかかわることなのでより深刻です。
警鐘が弔鐘とならないうちに対策を取っておくことが必要でしょう。
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by capricciosam | 2012-12-02 20:56 | 時の移ろい | Comments(0)

デフレの正体@角川oneテーマ21

本書に触れる前に、著者が本書で度々引用している「国立社会保障・人口問題研究所」
のHPに示されている図やグラフを観ていくことにしたい。

まず、日本社会を蝕む少子高齢化が進むと、2030年頃には全国の市町村で
人口がどの程度減っていくのだろうか。
平成15年段階での推計が下図である。
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紺色になるほど人口の減り方が激しいのだが、
まるで列島全体に夜の帳が降りたかのように暗い。
しかも、意外な感じがするが、首都圏はじめ大都市圏もほぼ例外ではないのだ。

では、我が国の人口は将来に向けてどう推移していくのだろうか。
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人口は2004年頃をピークに2050年には約2700万人減って、1億人程度に減少する。
内訳を見ると、いわゆる「働き手」の生産年齢人口は13%減少するのに対して、
65歳以上の老年人口は16%増大する。
死に近い人口は増えれど、生を謳歌していく人口は減っていく訳だ。

当然、老人が増えると増大するのが社会保障給付費。
さて、実際どうなっているのだろうか。
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医療や福祉も上昇していることは明らかなのだが、
それにしても年金の上がりっぷりは見事の一言だ。
経済成長はさっぱり右肩上がりにはならないのに、こちらは赤丸急上昇。

「オイラの頃、ほんとにもらえるんだろうか‥」

引用はこのくらいにするが、広く基礎的データとして活用されている数字が
示す恐ろしい現実には、改めて愕然とする思いがする。

さて、話は変わって今年の元旦の夜に、TVのある番組を途中から観たら、
大きな人口の波が日本社会を襲っている、という指摘をしている人が
いて興味を引いた。
それが本書の著者の藻谷浩介氏である。
それで、昨年発売されていたらしい本書を遅まきながら読んでみた。

氏の講演をベースにしたものなので、やや繰り返し的部分はあるが、
それでも快刀乱麻を断つごとく現代日本社会の問題を抉り出していく。
その問題とは「人口の波」なのだ、と。
生産年齢人口の減少と高齢人口の激増が同時に進行していることが
国内の内需不振の原因なのだ、と喝破している。
つまり、最も消費が活発化する層が減って、ほとんど消費せずに
ため込むだけの層が増大することで、世間にお金がまわらないという
現象を生じさせている。
そのため景気が一向に上向かず、地方都市ではシャッター街が増え、
「戦後最長の好景気」だなんて言われても、さっぱり実感できなかった
ことに合点がいく思いがした。

特に、団塊の世代が最大の波であったことは間違いなかった訳で、
生産年齢世代であった頃は消費も膨らみ、社会のインフラ整備にも
強い影響を与える存在だった訳ですが、とうとう60歳を超え始めて
消費も停滞していくことに。
下の世代はどんどん人口は減っていくので消費が量的に拡大しない。
しかも、賃金は上がらない訳だから、益々不景気になる悪循環。
ところが、肝心の景気刺激策や経済政策が、この世代が現役だった頃の
過去の踏襲にすぎず、この新たな事態に適合できないため
効果が上げられないでいる。
このままじゃ、年金がとても不安。
政治、しっかりしろ! なんて気合いかけたくなってくる。

「やれ、やれ。なんとか良い手はないのかい!?」

そこで著者は「ではどうすればいいのか」という章を起こして、
考えられる手(=対策)を提示しています。
なるほど、と思うものもありますが、流れとしてはそうかもしれないが、
全面的に賛同しかねるというものもありました。
いずれにせよ、これは実際に手にとって確認していただくことが
良いと思います。
賛否はあれど、現代日本を覆う閉塞感、停滞感、不安感に関心がある方なら、
一読して得るところは多々ある好著であると思います。

ところで、先日菅首相が八重洲で何冊も本を買われた際に、
この本も含まれていたそうですが、もう読まれたのでしょうか?
えっ、何ですって。
国会も始まったので、その本は疎い、ですって。
お言葉ですが、「疎い」ってのはどのような意味でお使いになったんでしょうか。
えっ、なになに、
その本を買ったという情報はあるが、読んだという情報はない。
なんかわかりづらい説明ですね。
小生、そういう国会答弁のような説明には、とんと疎いんですよ。
お後がよろしいようで。
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<追記>
国立社会保障・人口問題研究所のHPから引用した図が探しにくいと思います。
トップ>研究所の概要>研究所の紹介>将来推計、社会保障給付費
で、見つかります。
一般人が見ることはあまり想定していないのかもしれないのですが、
改善の余地あり、と思われますね。
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by capricciosam | 2011-01-29 22:01 | 読書 | Comments(0)

星を継ぐもの@創元SF文庫

SF小説は、苦手という訳ではないのですが、中々手を出しません。
当然のごとく、読んだ作品の数も極めて少ないのですが、
読み終えて30年経っても、未だにワクワクしながら読み進んだという
強烈な印象を残した作品もあります。
J・P・ホーガンの「星を継ぐもの」です。

「月面で発見された深紅の宇宙服をまとった死体。
だが、綿密な調査の結果、驚くべき史実が判明する。
死体はどの月面基地の所属でもなければ、
ましてやこの世界の住人でもなかった。
彼は5万年前に死亡していたのだ!
一方、木星の衛星ガニメデで、地球のものではない
宇宙船の残骸が発見される。関連は?」
(文庫裏カバーより引用)

月面の謎、それに木星。
一見、A・C・クラークの「2001年宇宙の旅」と似ていますが、展開はオリジナルです。
クラークはどんどん地球から離れる展開の中で、謎は謎のまま、
哲学的示唆をして物語りを終えます。
一方、本書は謎が謎を呼ぶ展開の中で、どういうおちが待っているのかと思ったら、
最後はアフリカの大地での考古学調査の場面で終わります。
そこで読者は「う~ん、そう来たか」と唸ることに。

当時とてもおもしろかったので、「ぜひ読んでみなよ」と友人に貸し、
「おもしろかった」という感想を聞いて満足したまでは良かったのですが、
ついに返してもらえなかったため、後年再読したくなって買い直した作品です。
そんな事情もより印象深くさせているのかも知れません。

先日、作者のJ・P・ホーガン氏が69歳で亡くなられました。
ご冥福をお祈りいたします。
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by capricciosam | 2010-07-18 23:50 | 読書 | Comments(2)

さようなら井上ひさしさん

休日の朝だから、少し時間をかけてネットでも眺めようとしたら、
目に飛び込んできたのが井上ひさしさんの訃報でした。

「とうとう逝っちゃったんだなぁ」

肺ガンを公表されていたのですから、ついに来たということなのでしょうが、
あの飄々として、人なつこい笑顔がもう見られないというのは
にわかには信じがたい気分です。
熱心な読者ではなかったのですが、振り返ってみれば井上さんの
多面的な作家活動に少しずつではあるのですが、触れているようです。

井上さんとの最初の出会い(もちろん作品を通じてです)は
放送作家としてでしょうね。
やはり、「ひょっこりひょうたん島」です。

なぁ~みを チャプチャプチャプチャプ 乗り越えて
くぅ~もを スイスイスイスイ 追い抜いて
ひょうたん島はどこへ行く‥

(節をつけて歌うと、こんな感じでしょうか)

幼い頃、サンデー先生と子供たちの冒険を、へんなキャラクターに笑いながら
テレビにかじりついて観ていたものです。

次の出会いは作家としてです。
「手鎖心中」で直木賞を受賞された後に、
あの「ひょっこりひょうたん島」の作者と同じとわかって興味が湧き、
手にしたのが「モッキンポット師の後始末」です。
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井上さんの青春と重なる悪童たちと関西弁をあやつる神父さんとの
絶妙なやりとりが醸し出す雰囲気がたまらない抱腹絶倒物語です。
「ひょっこりひょうたん島」以上のユーモアが満載だったのですが、
「宗教的許し」という少々重いテーマもちゃんと配置されています。
それ以上に「ハッ」としたのが、緻密な文章で書き込んで笑わせるという、
その手練れぶりでした。
井上さんの代表作としては挙げられない可能性大なのですが、
井上さんの職業作家としての腕前を感じさせてくれた一冊です。

最後の出会いは劇作家としてです。
晩年は「こまつ座」の座付き作者として劇作家に重点を置いていたように
感じていたので、一昨年の東京鑑賞三昧旅行の折に、
「太鼓たたいて笛吹いて」を鑑賞する機会を得たのは、
今となっては良い思い出です。
日常に流されている身には重い内容でしたが、達者な役者とともに、
程よいユーモアが散りばめられていて決して退屈はさせません。

ところで、かなり前に出版された妹尾河童さんとの写真対談集の中で、
井上さんの仕事場が紹介されていました。
机の前に自筆の自戒の言葉が貼ってあり、次のように書かれていました。

「むづかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに」

こうして、私的思い出を振り返っても、井上さんの姿勢は一貫していたんだなぁ、
と頷けるものがあります。

井上ひさしさんのご冥福をお祈りいたします。

<追記4.14>
自戒の言葉は次のように改められていたようです。

「むづかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに」

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by capricciosam | 2010-04-11 23:38 | 時の移ろい | Comments(2)

初秋@ハヤカワ・ミステリ文庫

かなり旧聞に属しますが、ロバート・B・パーカーさんの訃報が報じられました。
ご存じ私立探偵スペンサーもので有名な方です。
最初に断っておきますが、小生はシリーズ第7作として刊行された
「初秋」しか読んでいません。しかも、20年以上前に。
しかし、当時の私にはこの一冊でインパクトは十分でしたね。
それで、訃報をきっかけに本棚の奥にある本書を久しぶりに手に取ってみました。

離婚したがっている両親の、お互いへの「いやがらせの道具」的扱いにされている
無気力な子供ポールの成長に、スペンサーがかかわっていくという物語で、
ハードボイルドものとしては異色の作品です。

両親に生きるということに関して何一つまともな示唆を与えられなかったポールが
たまたま関わったスペンサーから、両親からの自立を説かれる。

「自立心だ。自分自身を頼りにする気持ちだ。
自分以外の物事に必要以上に影響されないことだ。
おまえはまだそれだけの歳になっていない。
おまえのような子供に自主独立を説くのは早すぎる。
しかし、おまえにはそれ以外に救いはないのだ。
両親は頼りにならない。両親がなにかやるとすれば、
おまえを傷つけることくらいのものだ。
おまえは両親に頼ることはできない。
おまえが今のようになったのは彼らのせいだ。
両親が人間的に向上することはありえない。
おまえが自分を向上させるしかないのだ。」
ポールの両肩が震えはじめた。
「それ以外に途はないんだよ」
泣いていた。
(p.156より引用)

このシーンはポールの頑なな心をついに溶かす場面なのですが、
再読していてもジーンときてしまいました。
幼くしてかくも過酷な運命に立ち向かっていかざるを得ないなんて。
その上、現実に親にネグレクトされている子供たちがいるだろうことを
想像すると胸ふさがれる思いになるのです。

「男とは」、「人生とは」なんて決まり文句で収まるだけじゃない
味わい深い一編に仕上がっていることが感じられる佳品です。
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by capricciosam | 2010-02-06 21:18 | 読書 | Comments(0)

エトロフ発緊急電@新潮文庫

沖縄普天間基地移設を巡り、日米関係がぎくしゃくし始めているようだ。
そんなタイミングの今日、12月8日は「今日は何の日」的に言えば、
太平洋開戦の日である。

68年前の昭和16年12月8日、日本海軍機動部隊は米国
ハワイ真珠湾を奇襲し、日米が全面衝突する太平洋戦争が勃発した。
日米にとってもお互いの歴史を語る時、欠かせない「何の日」なのだ。

この時、日本海軍は機動部隊を一旦エトロフ島の単冠湾に
秘密裏に集結させ、洋上数千キロ離れたハワイに向けて進攻した訳だが、
本書ではその動きを事前に察知しようとする米国が送り込んだスパイの動きに
焦点があてられて、開戦前夜の緊迫した重苦しい気分を活写している。
しかも、配された登場人物がそれぞれ陰影深い性格を与えられて、
絡み合う中で物語は次第に緊迫の度を高めていく構成のうまさ。
終盤のクライマックスに向かう様は、まさに極上のエンターテインメント
としても成功している、と言っても過言ではないと思う。
発表当時、数々の賞に輝いたのも頷ける話で、
時代を越えて読み継がれる作品だろう。
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<追記>
後年の情報開示により、作品に登場する「グーフーボーイ」「フォックス」
が実在したことがわかっている。
果たしてどんな人が担い、実際はどうだったのか、興味深いところだ。
<追記2010.2.26>
19日に直木賞受賞式があったのですが、24日は地元中標津町でお祝いの会。

「祝う会は佐々木さんと親しい町民有志が企画した。
友人による直撃インタビューで「一番気に入っている作品は?」の問いに、
佐々木さんは「思い入れがあるのは『エトロフ発緊急電』。
それに『武揚伝』。これは中標津に仕事場を移して最初の作品です。
それと『警官の血』」と、3作品をあげた。」
(以上、朝日新聞より引用)

どれも愛着がある、と言っても許されるのかもしれませんが、
3作品を挙げたのは、常々のココロの準備が出来ていたせい!?
それとも、佐々木さんの律儀さ故!?
でも、哀惜能わざる本作品を筆者自ら挙げていたのは
私としては嬉しい限り。

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by capricciosam | 2009-12-08 23:05 | 読書 | Comments(0)

笑う警官@映画2009

リンクさせていただいている佐々木譲さんの原作の映画化だけに
本日の初日は、昨年から楽しみにしておりました。

<珍しく、ネタバレはありません。安心してお読みください。>
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主人公佐伯たちの裏捜査本部がおかれる
「JAZZ&BAR  BLACK BIRD」
は映画ではすすき野にあることになっているが、原作では
狸小路8丁目にある3階建ての古いビルの一階にある。
道警を訳あり退職したマスターの経営するその店は
奥行き六間ほどで、床は硬い板張りで、フロアには
丸テーブルが7つ並んでいる。

「確かに、アーケードのない狸小路のはずれあたりならありそうだな…」

映画で気になったのは、この店の天井の高さ。
まるで倉庫並なのだが、札幌中心部ではちょいと無理だろう。

そして、映画でも女性巡査殺しの真犯人が判明するまでは
司令塔となる佐伯と小島百合がこの店に陣取ることで印象深い。
全編通じて挿入されるメローなジャズが耳から演出する
ジャージーな雰囲気を、視覚的に決定づける役割を果たす。
これだけで観ている方としてはストーリーを追うという緊張感の割には
くつろいでいる訳だが、さらに画面が長まわしをすることで役者の語りが
多くなり、どうしてもメリハリに乏しく、流れ気味となる。
その分、タイムリミットものの原作の「緊迫感」、「切迫感」を
薄めているのは弱点かもしれない。
また、派手なシーンも少ないため、単調さを感じる向きもあるやもしれぬ。

しかし、事前に原作を読んでいた者としては、その分丁寧に
作り込んだ制作者側の一種のきまじめさも好感される訳でもある。
じゃあ、ただくそ真面目で翻案のひとつもないのか、となると、
いやいや、やはり映画化です。
原作と異なる伏線のはり方、つながり、そして結果が随所に見られ、
「う~ん、こう来たか…」
と、原作とは異なるテイストも堪能できて、仕上がりがりとしては
そんなに不満はない。
ただし、割と地味な仕上がりなので少々損かもなぁ…。
また、ラスト数分の場面の評価は分かれるか。
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<追記>
札幌ロケの場面がかなりあるのかと思っていたのですが、
残念ながら、車のナンバーと道路標識と大通り以外は
多分本州なんだろうということが露骨にわかり、
地元人としては少々がっかり。
例えば、植えられている植物が露骨に道外なのですから、
「う~ん、勘弁して!?」

<追記2>
道警シリーズとしては第2作が写真の「警察庁から来た男」
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この時も道警組織に巣食う巨悪と戦うことになるのですが、
この2作目を読まれた方なら、これを原作とした映画化があるとしたら、
その巨悪は見事に置き換えられて、この映画1作目とつながるんだろうな、
という予感が終盤でピンとくるのでは!?

<追記3>
これは、追記というより蛇足かな。
原作の「うたう警官」が文庫化されるにあたり改題されたというのは
文庫版の佐々木さん自身の後書きをご覧ください。
私の中では「笑う警官」と言えば、やはりマルティン・ベックシリーズなんですね。
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こちらは無差別殺人事件に潜む謎ときで、佐々木さんの原作のタイムリミットもの
とは異なるテイストなんですが、これはこれで当時の一世を風靡したものです。
私も当時は背伸びしてセッセッと読んだものでした…

<追記4>
アジトとなるのが「BLACK BIRD」ときたので、
「ひょっとしたら…」と思ったら、
案の定「bye-bye Black Bird」が挿入されていた。
エンドロールで確認したら、JULIE LONDONでした。
「いいなぁ~」
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by capricciosam | 2009-11-14 23:27 | 映画 | Comments(2)