そもそも今回の東京行きのきっかけはこの演奏会だった。
ラトル&ベルリンフィルは4年前になんとも魅力のないプログラムと 法外なチケット代で来札したが、これはムカッときてパスした。 しかし、案の定なかなか再来札はかなわずじまいで、ちょい未練。 また、マグダレナ・コジェナーも5年前に来札したっきり。 これは大いに迷って、結局パスしたが、後年ラトルと結婚したから、 もう絶望的だろうなと思い、これは大いに後悔した。 と言うわけで、私の中ではこれらの演奏会はあきらめていた… そんな夏のある日のこと。 まだ足を踏み入れたことのない「ミューザ川崎」で ラトルとコジェナーとベルリンフィルの演奏会がある、という情報が。 「生涯においてこのチャンスを逃すと後悔しないか?」 「でも川崎か…、遠いなぁ…」 「わざわざ出かけるだけの値は…」 「……私にはある!!」 結局、年甲斐もなく後先考えずに行動して、なんとかチケットは 入手できたものの、そりゃ当然家計にしわ寄せがいく話ですから、 カミサンとのタフな交渉が待っていました(汗) それで、なんとか拝み倒して実現した訳です。 「一生のお願い」この手形の乱発でしたね… ありがとう、カミサンなのです、ハイ。 一曲目ハイドン交響曲第92番「オックスフォード」 ハイドンの交響曲はごく有名なものしか聴いたことがないため、 初めて聴きましたが、ベルリンフィルのつややかな音色に うっとりして耳を傾けているうちに、25分程の曲は終わった。 実にモダンな響きで聴かせてもらいました。 二曲目マーラー/リュッケルトの詩による5つの歌 コジェナーが登場し、拍手も一段と盛大になる。 次の順番で歌われた。 ①美しさゆえに愛するのなら ②私の歌をのぞき見しないで ③真夜中に ④私はほのかな香りを吸い込んだ ⑤私はこの世に忘れられ マーラーが次の創作段階に進む時期でもあり、 妻となるアルマとの婚約した年に大半の曲が作られたという この一連の歌曲は、やはり「幸福感」に満ちている。 彼女は表情豊かに、かつ適度な動きも交えて、 歌の内実を伝えようとしていたが、 これはかなり成功していたように思う。 歌い終えたコジェナーの手にラトルが軽くキス。 なんとも、憎い光景ですなぁ… 第三曲ベートーヴェン交響曲第6番「田園」 私としてはマーラーで満足していて、やや肩の力の抜けた状態。 第一楽章から、ラトルの紡ぎ出す調べには、就任した当時に 耳にした妙な「個性」は感じられず、実にオーソドックスに曲が 展開されていきます。さすがベルリンフィルです、 演奏にまったくゆるみや破綻を感じさせません。実に快適。 ところが、曲が進むにつれ、ラトルの指揮にあおられたかのように 徐々に演奏がヒートアップしていき、続けて演奏された 第3楽章から第5楽章には、思わず手に汗握って聴き入って しまいました。見事なアンサンブル。完璧。 まさか、手垢のついたこの名曲の空前絶後の演奏が 待っているとは、望外の喜びでした。 ややフラング気味の拍手でしたが、ブラボーが盛んに飛び交い 会場の満足度の高さが表われていました。 アンコールはありませんでしたが、鳴りやまぬ拍手に応えて 楽員のいなくなったステージにラトルがひとり登場してくれました。 <蛇足> Kitaraのシンメトリーな座席配置に慣れている身には、 ミューザ川崎の、まるでりんごの皮を切らさないで剥いて いったような配置の座席はおもしろかったですね。 3階席でしたが、ステージもKitaraより近く感じられました。 また、音はKitaraよりやや残響が少ない感じでしたが、 クリアな感じがしました。 <1.24追記> 産経新聞の音楽欄に担当記者が「ホンネのベストテン」として 年間6位に当コンサートを選んでいます。 「横綱格のベルリン・フィルは来日初日にラトルの細君、 マグダレナ・コジェナーが絶妙無比のマーラーを披露。 ミューザ川崎の美しい響きも大きな力となった。」 首都圏の数多ある演奏会でも上位に選ばれるほどだったとは… ついてたなぁ~
by capricciosam
| 2008-12-03 20:15
| 音楽
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