PMF開催中に集う音楽家が奏でる演奏に耳を傾ける醍醐味こそが教育音楽祭としての
本来の味わい方とは思う。原則異議なしである。 とは言うものの、そんな期間中でも何十年にも渡って練り上げられたアンサンブルの魅力も 味わいたいという欲求も一方では存在する。実に勝手なものだと思う。 それが、かつてのレジデントオーケストラやPMFウィーンという形で存在したことで、 この身勝手な願いも満たされたことがあったものの、レジデント制を廃止してからは、 現在では東京クワルテットぐらいしか見あたらない。 指導陣の奏でる音楽を観て聴いて味わうことでPMF生も一段と成長の度合いが高まるだろう。 もちろん一流故に臨時編成のアンサンブルでも得るモノは大きいだろうが、 何十年にも渡って磨き上げられたアンサンブルの相対的な優位さは揺るがないだろう。 それだけに教育効果的側面からも、PMFの中でも東京クワルテットの存在は 大きいのではないかと思う。 さて、そんなことを思い浮かべながら会場に足を運んだ。 1曲目ハイドン弦楽四重奏曲第81番「ロプコヴィッツ」 2曲目ドヴォルザーク弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」 3曲目モーツァルト弦楽五重奏曲第4番 アンコール/モーツァルト弦楽五重奏曲第5番より第三楽章「メヌエット」 ハイドンの曲は晩年の作らしいが、いわゆる「老境」的枯淡さ等は微塵も感じられない。 第一ヴァイオリンの奏でる主題が親しみやすく、メンバーの奏でる調べの実に艶やかなこと。 この段階で十分満足だったが、次のドヴォルザークはさらに完成度が高く、 こんな極上な「アメリカ」は聴いたことがない。特に第二楽章は絶品だった。 これは望外の喜びだったが、会場のあちこちからブラボーが飛んだことからも、 同じ思いの方は多かったようだ。 モーツァルトは今夜のお目当て。 加わるヴィオラがベルリン・フィル首席の清水直子さん。 アンコールの際、池田さんがおっしゃっていたが、 清水さんとはヨーロッパで何度も共演されていて、モーツァルト弦楽五重奏曲では ハ長調(第三番)とニ長調(第五番)を演奏されているらしい。 ト短調で始まる起伏の激しいこの有名曲においても、清水さんはまるでメンバーの一員 であるかの如く溶け込まれていて、一糸乱れぬ演奏を繰り広げられていた。 さすがという他はない。 こんな満足度が高い演奏会は久しぶりだった。 PMFに弦楽四重奏コースは設置されなくなったものの、東京クワルテットには これからもPMFに継続して参加してくれることを期待したい。
by capricciosam
| 2011-07-11 23:55
| 音楽
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