「それでもボクはやってない」を観てから、裁判のことが気になります。
これから2年以内に開始される「裁判員制度」も、同じように気になります。 なにしろ抽選で裁判員を務めるはめになるかもしれない訳ですが、 一方で国民の3分の2は「参加したくない」という調査結果もあるくらいです。 そこで、タイミング良く開催された「これまでの裁判、これからの裁判」 という講演会に出かけてきました。 講師はTVでもおなじみの江川紹子さんです。 講演の前に最高裁判所が監修した「評議」という裁判員制度のPR映画を 鑑賞しました。ストーリーは三角関係による殺人未遂事件を裁判員が どう考えて判決に至るのか、という制度がスタートしたら直面するような内容です。 裁判員も主婦らしき人、中小企業の社長らしき人、失業者等と職業や立場も様々 との設定です。制度をわかりやすく伝え、噛み砕く意味もあるのか、 議論が伯仲するようなこともなく、各自の発言も落ち着いて、 裁判官も結論を急ぎません。最後は、有罪か無罪かを判断し、 次に実刑か執行猶予かを決めていきます。 裁判員が検討する場には裁判官も立会い、進行役を務める訳ですが、 なるほど、こんなイメージで考えられているんだな、とわかり参考になりました。 専門知識がなくとも、素直に証言、証拠、状況を判断していくことができれば 良さそうなので、そんなに構える必要はなさそうです。 ちょっと安心。とは言っても、実際はそう簡単ではないんでしょうね。 休憩をはさんで江川さんの講演です。 ☆注:以下の講演要旨はメモをもとに再構成しました。発言順番、ニュアンスが 必ずしも発言どおりではないことをご承知おきください。 導入は暖冬と、最近冤罪事件をテーマにした映画を4本観たことから。 この中には「それでもボクはやってない」も入っていました。なぜ映画を? その理由は「名張毒ぶどう酒事件」の昨年の名古屋高裁の判決にショックを 受けたことによるそうです。この事件は「冤罪である」として争われている 有名な事件らしいのですが、より多くの人に冤罪事件を知ってもらうためには どうしたらよいのか。どんなくふうがなされているのか。 それを知りたくて観たそうです。 私はまったく知らなかったのですが、江川さんはこの冤罪事件に関する 本までだしていたのですね。 冤罪への関心は、新聞記者時代にあった妻の突然死が夫の絞殺死と 判断された冤罪事件の「山下事件」がきっかけで、その後フリーになった時、 連載読み物を書く中で「名張毒ぶどう酒事件」にも出会ったそうです。 当初、裁判は真相を解明するためのもの、と考えていたそうですが、 そもそも「真相」とは何ぞや、という疑問にぶち当たったのが、 江川さんを一躍有名にした「オウム真理教事件」だそうです。 見る立ち位置によって真相は随分違うものだ、ということに気づき、 裁判はそれぞれが真相に近づくための材料を手に入れる場なのだ、 と思ったそうです。 また、松本智津夫被告が手続きに従わなかったことで、すぐ退廷させられた ことにも触れ、裁判官は廷内秩序を維持することには熱心ではあったが、 果たして事件の真相を知ろうという好奇心があるのだろうか、と疑問を呈します。 裁判員制度が始まっても、手続きが整っているから一丁上がりではなく、 「真相はどうなんだろうか」との好奇心を持つことが大事と指摘します。 この点は「12人の怒れる男」に通じるものがあります。 裁判員制度については次のような点を指摘されていました。 ◇裁判の争点が事前に整理されてから裁判員が判断するような動きが あるが、もしそうなれば、傍聴人もいない密室で行われることになり、 裁判のかなりの部分が密室化してしまう恐れがある。 ◇職業裁判官のみで行うか、または裁判員も入った形で行うか、 被告側が選択できることがあっても良いのではないか。 ◇裁判員は有罪か無罪かまでとし、量刑まで負担させなくてよい。 裁判員によりバラツキがでる恐れ、「死刑」などは裁判官というプロでも 重いのに、その負担を一般市民に与えても良いのか ◇裁判員制度は一審よりも再審裁判で行ったほうが良いのではないか。 裁判官が判決を逆転させるのは勇気がいること、裁判員のほうが冷静に、 よほどまっとうな判断ができるのではないか ◇裁判員をしやすい制度が必要ではないのか。 一般市民とてスケジュール調整しやすいように当該者には事前に予告する 守秘義務よりも、むしろしゃべってもらう、聴いた人が「裁判員っておもしろそう」 と広く関心を持ってもらうことが必要だろう、裁判員制度は国民の義務として 押し付けても広がりを持たない いずれの指摘も考えさせられます。 お陰で裁判員制度の理解もほんの少し深まったかな、と思われます。 最後に、裁判員制度が導入されるまでの今はとても貴重な時間なので、 ぜひ関心をもって意見を出してよいものにしていかなくてはならない、と おっしゃっていました。そのとおりだと思います。 テーマが良かったのか、講師に魅かれたのか、会場はほぼ満席でした。 講演終了後、江川さんの著書が販売されてサイン会が行われました。 私も買って、サインしていただき、図々しく握手もしていただきました(^^) ついでに江川さんのHPのことで、だめもとでリクエストも。 中身は秘密ですが、さてどうなりますか。
by capricciosam
| 2007-01-27 22:31
| 講演会
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by capricciosam
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