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フィルハーモニア台湾@PMF2007

PMFは「教育音楽祭」であるが、その「教育」の場を終えたPMF生は
どのような活躍をしているのであろうか。
もちろん有名オーケストラの主要ポストを得、あまつさえ指導陣の一員と
なって戻ってきている人もいるが、それ以外の大多数の修了生は?
意外に知られていないことに気づく。
かつてPMF発足10周年を記念して修了生でPMF10オケが編成され、
MTTの棒のもとで演奏されたマーラー「巨人」は忘れがたい。
確かに「音」の成果として聴くことができた。
札幌の地を旅立った彼らが世界のどこかで活躍している、
そして、それは間違いないという厳かな事実に、心からの喜びを感じた。
しかし、それ以降はまとまって紹介される機会は意外にもなかったようで、
今夜の演奏会はその後の検証的役割を果たしたと言えるのかもしれない。

さて、当夜のフィルハーモニア台湾にはPMF参加経験者が17名おり、
指揮者のチェン・ウェンピンさんはPMFオケの指揮者を長らく務めたことからも
わかるとおり、PMF10に次ぐ「その後の修了生たち」を再認識する絶好の機会
となったが、この点に関しては実に満足すべきものであったように思う。
PMFで播かれた種は確実にあちこちで芽吹き、花を咲かせてくれているようだ。
今後もPMFでは彼らのような修了生の演奏する機会を設けてもらいたい、
と強く希望したい。

1曲目チャン「フェスティーヴ・セレブレーション」
元来打楽器のために作曲されたことから、打楽器の活躍する印象が強く
残ったが、お国もののせいかアンサンブルも上々。
まずは、ご挨拶代わりのこの曲でこのオケの水準の高さを知ることとなる。

2曲目ブラームスのヴァイオリン協奏曲
これはオケを語る前に、独奏したジョセフ・リンを語らねばならぬだろう。
上着が白い中国服といういでたちで現れた彼は、第一楽章でのオケが
形成した緊張感のピークに一見無造作に、かつ情熱的に弾き始めると、
最後まで緊張の糸を切らせることなく弾ききって、会場を圧倒した。
特に聴かせどころの第一楽章のカデンツァでは、会場から不用意な物音が
するというアクシデントがあり、一瞬ヒヤリとしたが、彼は動じることはなかった。
万雷の拍手に応えて、アンコールを一曲。上手な日本語で挨拶と曲紹介。
J・S・バッハ無伴奏パルティータ第3番よりプレリュード。
弾き終わると再び万雷の拍手を浴びたのは言うまでもない。
「いや~、うまい」
ところで、オケであるが、木管が不安定でたびたび興を削いだのは残念だった。
それ以外のパートはよく健闘していたように思う。

3曲目ラフマニノフ交響曲第2番
これは2年前の札響定期以来の実演であったが、決して引けをとるようなことは
なかったように思う。彼らの織りなす音はパワーがあり、この曲の持つ憧憬や
メランコリーな思いをたっぷりと余裕を持って描いていたように思う。
ブラームスでは不安定さが目立った木管も傷は目立たず、
さすが、楽員自身が「このオケの看板曲」に選んだだけのことはある。
ただ、ぶっきらぼうな音が時々混じったように感じたことからも、
音に込めたニュアンスを聴かせるのは札響に一日の長があったように思う。
チェンさんもオケをよくコントロールして、聴かせてくれた。
蛇足だが、彼が黒い上着を着て指揮する後ろ姿の右手(指揮棒なし)の動きは
まるでゲルギエフを彷彿とさせた。これもPMF効果なのかな?

鳴りやまぬ拍手に応えてアンコールを一曲
「台湾民謡を基にしたラプソディー」
メロディが日本人にも通じるような親しみやすいもの。
台湾版「管弦楽のためのラプソディー」と言えばわかりやすいだろうか。

終演は9時30分過ぎ。
久しぶりの長時間演奏会でした。
客席の入りは7~8割程度と少々淋しい、というか、もったいなかった。
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写真は明日の釧路公演のもの。
なんでも、道新釧路印刷工場落成記念だそうですが、
驚くべき事に入場料は全席自由で一般1000円!大学生以下500円!
今夜の充実度からいって超お得、聞き逃すのはもったいない。
釧路方面のみなさん、ぜひ足を運びましょう。
<追記7.26>
今夜の演奏会はどうだったんでしょうか?
釧路方面で聴きに行かれた方はいないでしょうか。

<追記8.1>
釧路の演奏会も盛況だったようです(^^)
情報をお寄せいただいたままあさん、琳琳さんありがとうございます。
今年のPMFも今夜の大阪公演で最後ですが、私は土日出かけていた
ので、このフィルハーモニア台湾公演がラストとなりました。
今年のPMF生の充実ぶりは最初のムーティ指揮の公演ではやくも
感じられたところですが、期間中の成長ぶりは一段と頼もしかったようです。
この辺りは聴講生となられた代々木よもやまさんのリポートをご覧ください。

by capricciosam | 2007-07-25 23:48 | 音楽


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